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なぜAmazonと提携しない?「DtoC」というビジネスモデル

   投稿者 : 2020年4月3日 By Comments (0)

タイトルイメージ写真

アメリカでは、新型コロナウイルス感染症数、21万6000人(4月1日現在)という急激な拡大により、入国制限、移動規制、外出禁止などあらゆる手段で、コロナ封じ込めが実施されている。
アメリカ消費者は外出禁止、自粛を余儀なくされ、アメリカのおいてもネットショッピングによる消費が高騰している。
また、ネット通販チャネルにおいては、ネットショップ販売の在庫切れ、納品の遅延などにより、小売からではなく、直接メーカーから購入する直販サービスを利用するという現象も起きている。
アメリカでは以前のブログ「アメリカのEコマース 「DtoC」事情」でも取り上げたように、「DtoC」という直販ビジネスモデルが、今、まさに需要を高め、注目を集めている。
今回は、このメーカーが直接自社製品を販売する「D2C」というビジネスモデルの特徴など整理した。

「DtoC」とはどんなビジネスモデルか

「DtoC」とは、「Direct to Consumer」の略語で、自社で商品を企画・製造する企業がオンラインストアなどの自社チャネル経由で直接ユーザーに商品を販売するモデルである。
特徴を一言で言ってしまえば、高品質な商品を中間業者を通さずリーズナブルな価格で提供している直販メーカーということになる。
「DtoC」を行う企業製品は、若者をターゲットにし、商材を絞ったものも多く、大量生産では利益化が難しいものやパーソナライズオーダーするシャツやスニーカーなども含まれている。

DtoCビジネスモデル

アメリカでは、数年前より「DtoCブランド」が活況で、マットレス販売のCasper(キャスパー)やメガネ販売のWarby Parker(ワービーパーカー)が有名なところだ。
次に「DtoCブランド」の特徴を整理した。

「DtoCブランド」ここがポイント

「DtoC」はオンライン専業であり、かつ直販の事業形態を取っている。分野は、ファッション、衛生用品、食品、雑貨、スポーツ用品等多岐に渡っている。
アメリカが中心で、多くのユニコーン企業も出ており、既存大手企業やプラットフォーマにも影響を与えるなど、米小売業界に様々な変革をもたらしている。
アメリカでは、マットレスの「Casper」、メガネの「Warby Parker」、メンズウェアの「BONOBOS」、メイキャップの「Glossier」、エアバイクの「PELOTON」、電動歯ブラシの「Quip」、カミソリの「Harry’s」など、ひとつの商品を特化販売し、軌道に乗ると周辺ラインナップにも徐々に拡大し、ある特定の分野を網羅するというのが基本戦略である。
これまでの伝統的なブランドと「DtoCブランド」の違うところは、自社WEBサイトからの直接販売を行い、インターネットテクノロジーに精通しているところである。
ターゲットとなる消費者への訴求方法は、ブランドの価値観やブランドストーリーを動画やSNSを活用し伝え 『共感』を創り出すのが上手い。
さらに、店舗や仲介業者が無いため低価格である。また、店舗や仲介業者にかかる予算を製品開発に転化させている。
「DtoCブランド」はモノではなく、コトを提供している。つまり、クオリティが高い商品により、満足感のあるライフスタイル体験を提供することに主眼をおいている。
ターゲットは、「ミレニアム世代以下」である。ミレニアム世代とは1980年代から1990年代後半までに生まれ、2000年代に成人または、社会人になる世代を指す。この世代はデジタルの発達とともに育ち、新しい消費の価値観を持っている。低価格で高品質な製品に非常に敏感な世代である。
「DtoCブランド」の顧客は顧客でありコミュニティ、”ブランドを育てていく仲間”としている。
DtoCブランドの「Casper(マットレス)」には15,000人の顧客が、睡眠データをトラックしてくれ、新商品の試用データに活かしている。そのデータを活かし、新製品の開発に反映している。
さらに、新製品を販売すると、積極的にSNSで広めるなど彼らの存在は顧客というより「DtoCブランドの仲間」といったイメージである。

DtoCビジネスの特徴

アメリカでの成功した代表的「DtoCブランド」2社

●マットレスの「Casper」

Casper」は2014年、ニューヨークで立ち上がったEコマースベンチャーで、創業から2年で100億円というから驚異的な売上げである。昨年、2019年には「DtoCブランド」ではじめて上場した。
寝具であるマットレスの販売から始まり、今では商品ラインも拡大し、枕、照明、犬用ベッド等も扱う。
広告やSNSによるマーケティングと、マットレスは寝具ではなく「眠りを売る」という同社の戦略にある。
配送では「Casper」のおしゃれなBOXに梱包・配送され、自宅に商品が届いた様子が、SNS投稿でブームになった。
100日間のトライアルや10年保証の高品質マットレスを低価格(595ドル〜)での販売が魅力的だ。
今や「Casper」はマットレス専門ブランドではなく「睡眠ブランド」として、ベッド、マットレスだけでなく、パジャマ、枕、ライト、睡眠カウンセリング、サプリ、デバイス、ペットまで事業を拡大し、アメリカの睡眠市場に革命を起こしている。

casperのおしゃれなボックス

 

●メガネの「Warby Parker」

werbyparkerのホームページ

WarbyParker」は2010年、ニューヨークの名門ペンシルベニア大学に在籍の4人の学生が創業したメガネ専門店である。販売はオンラインのみで2015年には実店舗もオープンしている。
アメリカのメガネと言えば、「Ray-Ban(レイバン)」、「Oakley(オークリー)」等、有名高級メガネブランドがあるなか、メガネのイメージを根本から変えた「WarbyParker」は、2015年「世界で最もイノベーティブな50社」で、AppleやGoogleを抑えトップ評価となった。
その特長は、メガネを自社でで一貫して、デザイン・製造を行い、オンライン販売でコストを削減し、おしゃれで高品質、低価格なメガネを販売したところである。
アメリカにはこれまで、メガネは高級商品だったが、「WarbyParker」の登場で、消費者は安価(95$〜)で高品質でおしゃれなアイウェアを手に入れることができるようになった。
販売方法も実店舗はあるが、実店舗ではメガネを販売しておらず、ショールームとして機能している。
商品は実店舗でネット注文して、で購入、自宅へ後日配送されるというものだ。
ネットでの注文も自宅で思う存分試着出来る、「HOME TRY-ON」サービス。
つまり、好きなメガネアイテムを最大5つまで無料で5日間借りることができ、ユーザーはその中から気に入ったものを選び購入出来るのだ。
2017年の売上げは推定だが、3.2億から3.4億ドル(約367億円)となっている。
「WarbyParker」は最大のプロモーションは口コミであるとして、新規顧客の半分は口コミによって呼びこまれている。
顧客のメガネ試着の様子がSNSにアップされ、多くの人がそれを視聴している。40歳未満の顧客のうち60%がSNSを参考に購入しており、インスタグラムのフォロワーは現在55.9万人である。

WarbyParkerから送られるcase

「DtoCブランド」がAmazonと提携しないその理由とは

「DtoC」はモノよりコトを重視し、マスプロダクトな販売ではなく、特定少数にしぼった商品作り、そしてマス広告ではなく、SNSによる口コミ、動画配信など、趣味嗜好が多様化した現代にマッチしたビジネスモデルであるといえる。
そして、もうひとつ「DtoCブランド」に共通するのは、Eコマースよるビジネスにも関わらず、Amazonとの提携には否定的なところである。
アメリカAmazonは「DtoC領域」を取り込み、事業を拡大したいが、多くの「DtoCブランド」はこれを避けている。
Amazonでは下記のような条件をD2Cブランドへ提示している。

  • 50万ドル〜100万ドル(約1億800万円)の資金投資
  • 100万ドル分の広告の無料利用
  • Amazonフルフィルメントによる無料在庫管理
  • Amazonの箱ではなくブランドの箱での配送

など、「DtoCブランド」に対し、考えられない好待遇を提案しているが、それでも、Amazonとの提携には否定的なのである。
DtoC水着ブランドのメラニー・トラビス氏はAmazonでの販売に対し、「Amazon上で商品を販売するのは、顧客志向のブランドにとっては効果的とはいえない。Amazonは顧客を非常に気にかけていると声を大にして自信を持って言いながら、本質的には我々から顧客を奪っていこうとするのは偽善ではないか」さらに、「要するに、ブランドを商品に格下げしようと考えているようだ。悪い人たちではないが、モンスタープラットフォームだ」とも語っている。
反Amazonとも取れるこの発言は、つまりは、Amazonなしでも成長戦略出来る「DtoCブランド」の強さと言えるだろう。
Amazon否定される最大のポイントは、顧客情報を得ることができないことだろう。
「DtoCブランド」の命であるエンドエンドのカスタマーエクスペリエンスや、ブランド価値観やストーリーを顧客と共有することを「DtoCブランド」は最重視しているが、これらをAmazonから得るのは、困難なのである。
Amazon上で販売したくない理由は

  • Amazonが有意義な顧客データを共有することを拒んでいること
  • Amazonが高価なファッションなどの領域における差異の理解、専門知識を欠いていること
  • Amazonの検索プラットフォーム上で自社ブランドが発見されにくいこと
  • Amazonのプラットフォームからはアトリビューションや一般的なユーザーエクスペリエンスを追跡できないこと
  • Amazonのカスタマーサービスには特色がないこと

などが挙げられている。
世界で最大の小売店「Walmart(ウォルマート)」は、Bonobos(ボノボス)やジェットコム(Jet.com)、Modcloth(モッドクローズ)などのDtoCブランドの買収にすでに成功しており、Amazonは独自のDtoC戦略を考える必要があるだろう。

「DtoCブランド」の今後など、まとめ

「DtoCブランド」は今後、オンライン上の顧客エンゲージメントの強化ともに、オフライン(実店舗)の拡大させ、大手百貨店との提携など顧客とのリアルなタッチポイント(顧客体験の場)の拡充していくことが重要である。
そして、Amazonに対しては、何らかの戦略を取りつつ、一定の距離感で共存を図る必要があると考える。

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