3月13日、WHO事務局長は新型コロナウイルスの感染症について「欧州が今パンデミックの震源地となった。」と宣言した。
3月28日時点でイタリアでの感染者数は9万人超、スペインで7万人超、ドイツ、フランスでも3万人を超え、歯止めがかかっていない。ヨーロッパは地続きで国境間の行き来は激しい、ヨーロッパでは、今、感染拡大が続いている。
外出禁止令が出る中、EUのECの現況などはどうなのだろうか?
今回はヨーロッパのEC市場、越境EC市場、また、新型コロナウイルスのEコマースへの影響など調べてみた。
ヨーロッパのEコマースは、2019年には6,210億ユーロ(約75.3兆円)まで成長するとされている。これは2018年の5,470億ユーロと比較して、13.6%の増加である。
ヨーロッパの人口は約7億4,310万人、ネットユーザー比率は85%である。
EC市場規模を国別にランキングすると、トップはイギリス、2位にドイツ、3位、フランス、4位にスペイン、5位にイタリアの順である。皆、新型コロナの被害が大きい国々である。
コマース市場においては、西ヨーロッパ諸国が取引額の多くのシェアを占めており、消費者一人あたりのオンラインショッピングにおける年間支出額は2,046ユーロ(約245,000円)と高額である。
インターネット普及率はヨーロッパ全体では平均85%であるが、ウクライナでは64%、北欧、西欧では93.3%と92.3%と東欧と北欧、西欧では差があるようだ。
また、ヨーロッパのほとんどの消費者はEコマースで買い物をすることを好んでいる。
オンラインショッピングより実店舗での買い物を好む割合は、デンマークで11%、オランダで11%、イギリスで10%、ポーランドで2%となっている。
2018年のヨーロッパの越境EC市場は、950億ユーロ(約12兆円)となっている。
この越境EC、950億ユーロ(約12兆円)という数字は、ヨーロッパ全体のEコマースに占める割合の22.8%に相当となり、これは、Eコマースをよく利用するヨーロッパ消費者は、越境ECもよく利用していることを意味している。
そして、ヨーロッパの4人に1人の消費者は、越境ECの利便性を高く評価し、税制や国際間取引の規則をさらに簡素化されることを望んでいる。
ここでは、越境ECで利用されるマーケットプレイスの「トップ20ランキング」を見ていこう。
ヨーロッパで最も利用されているECマーケットプレイスはAmazonであるが、ヨーロッパ企業所有のECに限定すると、トップは、ドイツのZalando(ファッション)。2位はイギリスのFruugo(量販店)、3位、4位も同じくイギリスの、Asos(ファッション)、Farfetch(ファッション)、5位はフランスのマルチチャネル小売業者Carrefourとなっている。
下記の画像は「トップ20ランキング」と「トップ10ランキング拡大」である。
Zalando(ザランド)は2008年にドイツのベルリンを拠点にオープンしたオンラインセレクトショップである。ヨーロッパのEコマース業界で大きな成功をおさめた企業1つとしてよく知られている。
2008年創業で、比較的新しい企業だが、ドイツ以外にオーストリア、スイス、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、スペイン、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、イギリスとヨーロッパ諸国14か国で衣料品などのオンライン販売を行っている。Zalandoは2012年3月には最初の実店舗もオープンしている。
Zalandoはオンラインファッション系プラットフォームであり、ハイストリートファッションから一流ブランドまで国内外のブランド1,500もの商品を扱っており、品ぞろえは申し分ない。日本のZOZOTOWNの規模を大きくしたオンラインショップである。
だが、その売り上げは物凄い。2014年の売上高は2,745億円で、スタートトゥデイの約7倍となっている。
成功の要因は、色々あるが、Amazon同様、商品1点から送料無料サービスや商品購入から100日以内であれば、返品可能サービスなど顧客ニーズに柔軟に対応しているところだろう。
最近では、クリック&コレクトサービスも開始している。
イギリスの場合、宅配の指定は午前または、午後しかない。そのような場合クリック&コレクトを利用すれば、取り扱い店舗まで時間指定で受け取りに行けるため利便性が高い。
さらに、Webサイトから集荷センターまでの商品販売に関する工程に関わるソフトウェアやロジスティックシステムなども自社で開発しており、集荷センターも、敷地面積約12万平方メートル(東京ドーム約3個分)の大きさのセンターをドイツに3箇所も保有している。商品の注文〜集荷〜配送まで、独自のロジスティックシステムにより迅速な対応が可能となっている。
それでは、ヨーロッパの消費者はどのような国から越境ECを利用して商品・サービスを購入しているのだろうか?
下の図をみても分かるように、ヨーロッパのほとんどの国において、中国のオンラインショッピングから購入していることが分かる。
中国から購入したと回答したヨーロッパ消費者は、アイスランド(31%)、ノルウェー(37%)、スウェーデン(32%)、フィンランド(35%)、イギリス(50%)、デンマーク(31%)、フランス(43%)、ポルトガル(45%)、スペイン(43%)、イタリア(35%)、ギリシャ(39%)、ラトビア(56%)、ドイツ(43%)、ハンガリー(61%)、スロベニア(43%)という結果となっている。
ヨーロッパでは越境ECで最も利用されるECモール型プラットフォームは、Amazon(23%)である。次いで中国最大のECサイト・TMallのAlibaba(16%)、世界最大のネットオークションサービスeBay(14%)、格安ショッピングアプリWish(10%)となっている。
ヨーロッパの越境EC市場は、今後も拡大傾向にあり、「Top 20 marketplaces cross-border Europe」の調査レポートによると、ヨーロッパ企業が所有する越境ECマーケットプレイスは、今年2020年には、50%以上の成長を遂げ、総売上高は150億ユーロ(約1兆7,955億円)に達すると予想している。
ヨーロッパでは新型コロナウイルスの感染者の急激な拡大が続いている。
ヨーロッパ市民は自主隔離などが開始され、何百万人もの労働者は在宅勤務を強いられる中、ヨーロッパは今、デジタルの活用が加速している。
移動の制限により、まず、Eコマースの利用が加速しているのだ。
南ヨーロッパ、イタリア、スペイン、フランスの消費者はロックダウンが機能しているため、多くの小売業者がオンラインプラットフォームで商品を販売し、消費者は食料品や生活必需品を購入するため、オンライン注文が殺到している。
例えば、フランスのオンラインプラットフォーム「Ollca」では、地元の肉や魚、生鮮野菜、果物などの販売に活用され、過去3日間の売上げは、クリスマス期間の売り上げ以上となっているらしい。
ロックダウンによる外出禁止により、多くの消費者がオンラインへの移行し、Eコマース事業者は注文がさばききれず、注文を制限するまでになっている。
ただし、すべてのカテゴリが緊急事態の恩恵を受けるわけではなく、全体的にはEコマースの利用が活況はしているが、カテゴリーにより異なっている。
前年同月と比べてみると、大きく伸びているのは、206%増の食品や健康関連商品、119%増の建築材料商品、103%増の子供用品などである。大幅な減少は、衣料品、ファッション関連、オフィス用品などである。
新型コロナはオンラインショップの利用を加速させているが、Amazonのような巨大ECプラットフォームでは、在庫不足や配送遅延など、事業を圧迫しているようだ。
Amazonでは、ほとんどの越境貨物は一時的に停止し、さらにフランスとイタリアでは非必需品と思われる商品の出荷を停止するとしている。
つまり、医薬品などの必需品アイテムを優先的に配送することとした。
医薬品以外の優先度の高いカテゴリとしては、赤ちゃん用品、健康、家庭用品、美容、ペット、食料品に関連した商品の配送については継続するとしている。
また、Amazon配送センターでの労働者勤務でも自主隔離における問題が起こっている。
フランスのサランにあるAmazonの配送センターに勤務する250人の労働者は、国内の隔離政策に従うため休暇を希望し、政府はAmazonに対し労働者の休暇を要請しているのだ。Amazon配送センターの機能が低下すると、商品注文も制限され、物流面で革命を起こしてきた、配送面の大きな打撃となる。
日本でもイベントの中止やスケジュールの延期といった新型コロナによる大きな影響が出ているが、ヨーロッパのEコマースイベントにおいても例外ではない。
多くは延期となるケースだが、5月15日開催を予定していた、「2020年Eコマースディ(ドイツ)」は中止となった。
5月中旬以降のイベントは延期や中止といったアナウンスは今のところない。
以下が延期や中止となったイベントである。
ヨーロッパにおける新型コロナの感染拡大は国境封鎖、外出禁止、営業禁止など、ヨーロッパ経済への大きな打撃となっているが、図らずも、WEBテクノロジーがヨーロッパ市民にとって、利用可能な代替えの手段となっている。
その中でも、Eコマースの拡大、需要の増大は、日常あまりネットショップを利用していない消費者の利用増大を促し、それにより、これまで以上に、小売企業のEC化は加速することだろう。
そして、Eコマースでは、これまで敬遠されていた生鮮食品のEコマース利用が大きく増大し、近い将来、食品小売店はEコマースによるサービスの変革がなされるだろう。