アメリカも日本と同様、新型コロナ感染拡大に歯止めがかからない。
アメリカの感染者数は、日本と比べるとかなり多い。国民性の違いがあるが、共通しているのはロックダウン解除(日本の場合緊急事態宣言)が早すぎ、感染者が拡大した点、感染者に若者が多い点などである。
そして、そのアメリカでは、このコロナ禍において急速なECへのチャネルシフトが起こっている。つまり、実店舗の売り上げが大きく減少する危機的状況下で、いくつかの企業はEコマースに活路を見出している。
今回は、日本と深い関係にあるアメリカのEC市場について、7月に経済産業省が公表した「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)」の内容から、2019年のアメリカEC市場の動向とトレンドなどをまとめた。
経済産業省の報告書によると、2019年のアメリカのEC市場規模は前年比14.9%増の6,016.5億USドル(約63兆5,030億円)となっている。
この数値は、日本の3.2倍の市場規模であり、成長率においても、日本の7.65%を上回っている。
アメリカのEC化率においても2019年は11%と高く、2020年もこの数値は上昇すると予測されている。
2020年は新型コロナの影響で、前年比18.0%増の7,097.8億USドル(約75兆円)、EC化率も14.5%に達する見込みだ。
2019年のアメリカECでの売上げで高かった商材は、コンピュータ・家電製品で1,330億6,900万USドル(約14兆800億円)、アパレル・アクセサリーが1,230億3,300万USドル(約13兆円)と他の商材を大きく引き離している。
また、成長率(前年比)の順位を見ると、トップは食料・飲料が24.1%増、次に化粧品・健康食品が17.3%増、次に家具・生活雑貨が16.1%増と、どれも高い増加率だったようだ。
さらにEC化率を見ると、書籍・音楽・ビデオが50%超で、コンピュータ・家電製品が39.4%、玩具・趣味が32.9%となっており、これらの商材ではEコマースの浸透が進んでいる。
下の図表は2019年のアメリカEC市場における事業者シェアトップ10を示している。
依然、Amazon.USが4割近くのシェアを保持し、トップを誇っている。
Amazonに続く企業としては、eBay、Walmart、Apple、Home Depot、Wayfair、Best Buy等が続いているが、いずれの企業のシェアも一桁代に留まり、Amazonの一人勝ちの状況には変わりがない。
ただ、最近の「2020年 eMarketerによる調査レポート」によると、「クリック・アンド・コレクト」(オンラインで購入し、店舗で受け取る)の浸透が影響してか、現在のシェア2位はWalmartであり、3位がeBayと順位に変動があった。
前年に書いたブログ記事「押さえておきたい! アメリカEC市場の新たな潮流」では2018年のアメリカECのトレンドとして、「DtoCビジネス」、「クリック・アンド・コレクト」などについて解説した。
2019年も2018年から引き続き、「DtoC」、「クリック・アンド・コレクト」は拡大しているようである。
「DtoC」においては2019年の売上高は142.8億USドル(約1兆5,000億円)の前年比33.1%増と大幅な増加となっている。今後も「DtoC」は15%を上回る成長が予測されており、2022年には 245.2億USドル(約2兆6,000億円)に達する予想である。
また、アメリカ消費者の5人に2人の割合で「DtoC企業」より製品を購入しているとのデータもあり、プライベートブランドの本格的なECショップ化が2018年以上に進行しているようだ。
「クリック・アンド・コレクト」についても同様である。下の図表は「クリック・アンド・コレクト」による売上高とその伸び率の予測を示している。
2019年は前年比54.93%増の356.4億USドル(約3兆7,660億円)あり、2020年も大きく売上高を伸ばすと予想され、2022年には2019年の2倍を超える730.9億USドル(約7兆7,224億)に達するとされている。
「クリック・アンド・コレクト」とは、日本ではあまり浸透していないが、「オンラインで注文購入し、店舗で商品を受け取る」販売方法である。
Eコマースにおいては配送時間の短縮というのが重要で、Amazonなどは配送スピードを3何前の平均時間4.2日から、2019年においては2.5日まで短縮した。
そして、アメリカの多くの消費者は配送料がかからず、商品を早く確実に店舗で受け取ることができる「クリック・アンド・コレクト」を望んでいるようだ。
ECと実店舗を連携させる仕組みとして、アメリカの「クリック・アンド・コレクト」は今後も注目すべき内容だろう。
下の図は2019年のアメリカにおけるソーシャルコマース(SNS経由のインターネット注文)市場規模を示したものだ。
2019年は194.2億USドル(約2兆524億円)、前年比25.2%増、2020年は252.6億USドル(約2兆6,724億円)、前年比30.1%増、その後も20%を超える成長率で拡大し、2022年には383.4億US(約4兆558億円)ドルまで達する予測となっている。
また、ソーシャルコマースばなりではなく、SNSからECサイトへの流入も大きな存在感を示している。
下の図はその内容の推移を図にしたのものだが、2016年3月の3.1%から右肩上がりで伸長し、2019年3月時点で9.1%まで増加している。
つまり、SNSを閲覧し、SNSからECサイトへアクセスする率がアメリカでは約1割に達しているのである。
さらに、驚くべきはSNSはECへの誘導手段として、他の広告媒体(有料検索や無料検索、ディスプレイ広告等)と比較しても、アクセス成長率が110%と大きく伸びており、SNSはECサイト誘導としての有望なチャネルであることを示している。
2019年、ソーシャルコマースとして用いられる最も多くのシェアを持っているSNSは、Facebook (86.8%)である。
次にInstagram (73.2%)、Twitter (66.5%)と続いている。
そして、2020年5月、FacebookとInstagramはSNS上でEコマースを開設できる機能を提供し始めた。
SNSでのEコマースの大きな強みは、チャットによる企業と消費者がコミュニケーションをとれる点である。商品の質問や配達状況など、コロナ禍において対面での接客が難しいとさせる中、このオンライン接客は大きな強みとなるだろう。
FacebookなどはSNSにEC機能を追加することで、中国のWechatなどと同様にユーザー数の拡大が見込め、EC事業者においてはSNSは新たなECチャネルとして、さらに新規顧客の獲得など、有用な存在となるだろう。
今回は「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)」から、2019年のアメリカEC市場状況やトレンドなどをまとめた。
アメリカは現在も、コロナ感染拡大が続いており、Eコマースの利用は増加している。
そして、このコロナ禍において、Facebook、InstagramのEC機能の追加し、SNS上で無料でオンラインショップを開設できるようになった。
SNSのEコマースチャネルがどこまで発展し、普及するか、今後の動向に注目したい。
今回、掲載した図や記事に関しては経済産業省の「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)」より作成した。