越境ECに関する経済産業省がまとめた平成29年度の資料では、昨年、2016年の日本の中国消費者向け電子商取引(BtoC-EC)は前年比30.3%増の1兆366 億円、アメリカ消費者向け電子商取引(BtoC-EC)は、前年比14.4%増の6,156 億円と中国向け越境EC市場が大きな伸びを見せた年でもあった。
今年、2017年はさらに取引額は増加しているであろう。 2020年には中国向け越境EC市場は1兆9,053億円、アメリカ向け越境EC市場は1兆618億円まで成長すると予想されている。
越境ECとは、海外の消費者を相手にネットショップを開設し、日本の商品を販売することである。インターネット技術の発達により、世界の消費者に向け、日本の商品を安価で気軽に販売することが可能になった。
日本は少子高齢化の影響を受け国内消費は縮小傾向が予想されるが、海外の消費者や企業を対象とした越境ECは、販路拡大のチャンスでもある。しかし、海外消費者に向けてのネットショップの構築は、国内向けECサイトをつくるのとは事情が違ってくる。
今回は、越境ECを立ち上げる前に知っておきたいポイントや注意点を説明する。
海外に商品を販売する場合は、商品は梱包される大きさ、重量の商品が基本となる。大型商品の重量も30kgが最大であり、重要が増えればそれだけ配送コストがかかる。また、配送国や地域によって、通関できない商品がある。例えば、アメリカへはオリーブオイルや毛皮など禁止品目となっている。
「どんな商品が売れるのか?」かは、もちろん考えるべきところであるが、海外では意外な商品が売れることもある。意識すべきは、日本ブランドを考慮した商品を厳選するということである。
次にその商品をどんな海外消費者に対して売るか、ターゲットを絞ることである。
例えば、エリアはニューヨーク、アメリカ消費者を対象に、50代女性、または50代男性、中流階級で趣味にお金をかけている人。そして、都市部でブームになっている抹茶や日本茶に関心が高く、茶道クラブの会員などと、できるだけ明確にターゲットとなるペルソナをイメージすることで、どんな商品が良いか、どんな越境ECサイトを作成すべきか、どう売るべきかが見えてくる。
まずは、海外販売できる商品かどうかをチェックし、さらに商品のターゲットを明確に設定することである。ペルソナを明確にすることで、越境ECの展開方法が大きく違ってくる。
海外では、それぞれの国、地域でどのような商品が売れる可能性があるのだろうか?2016年の日本の電子商取引(BtoC-EC)に関する市場調査資料(下図参照)によると、アメリカ消費者の売れ筋商品は「アパレル/靴/アクセサリー」「おもちゃ、ホビー商品」「書籍/CD・DVD/教育商品」「宝石/腕時計」「電子書籍/音楽/ソフト・ゲーム」「化粧品」「旅行」「PC関連」「生活家電」「スポーツ/アウトドア用品」となっている。
中国消費者の売れ筋商品は「アパレル/靴/アクセサリー」「化粧品」「食品、飲料、アルコール」「PC関連」「旅行」「スポーツ/アウトドア用品」「生活家電」「ベビー用品、子供向け商品」「おもちゃ、ホビー商品」「宝石/腕時計」「健康関連商品」となっている。
傾向として、アメリカでは書籍、CD、ゲームといったソフトウェアに人気が高く、中国では化粧品や食品が売れ筋のようである。
これはあくまで、統計的な内容なので、同様のジャンル商品を扱うから、海外でも売れるかというと一概にはそうとも言えない。売るための戦略が必要である。その商品は誰に向けた商品なのか、どうしたら、自社商品が海外のターゲットとするユーザーに選んでいただけるか、常に突き詰めて考えることが重要である。
今年の5月10日投稿のブログでも説明しているが、越境ECを展開するには大きくは、モールで出店するか、独自ドメインで出店するかに分けられる。 以下にそれぞれのメリット、デメリットをまとめた。
越境EC出店に関する詳細は以前のブログ「越境ECを展開するための5つの方法」でも確認できる。
越境ECにおいて、はじめに思いつく準備は多言語対応である。
そもそも翻訳されているページが少なければ、海外消費者は商品購入には至らないだろう。現地語での正しい翻訳がなければ、購買意欲を刺激することはできない。 すでに認知されている商品ならば、自動翻訳でも十分であるが、ブランドが確立さていない商品の場合は、人的翻訳を行うべきである。
翻訳スタッフがいない場合は、翻訳会社で行ってもらう方法もある。以前のブログ「越境EC “言語”のハードルを超えるには」 において、翻訳サービスについて紹介しているので、そちらも参考にしていただきたい。
また、越境ECでは顧客のサポート、クレーム、消費者トラブルについても言語での対応が必要になる。通常はメールでの対応となるが、言語対応には人的対応が必要になるだろう。
越境ECで抑えるべき言語は英語である。英語対応できれば、アメリカ以外の英語圏の国もターゲットにできる、次に越境ECの巨大市場の中国語である。当面は抑えるべきはこの2つの言語である。
Live Commerceでは、Google翻訳(有料)とMicrosoftAzure Translator(月200万文字まで無料)による機械翻訳が可能となっている。
モール出店ではなく独自ドメインで、越境ECを構築した場合必要なのは、WEBマーケティング戦略である。海外では日本商品の認知度は圧倒的に低いと思って良い。越境ECを構築するだけでは、商品はいっこうに売れることはないだろう。
まず、集客として取り組むべきは、Google、Facebookなどの広告を出稿するのが良いだろう。GoogleではGoogleショッピング広告を利用し、Facebook広告は、SNS利用者から大きな集客と期待できる。
中国では百度、Google、Tencent(QQ)をメインとした広告を展開する。SNSではWeChat、微博(ウェイボー)などの利用を検討するのが良い。
Googleショピング広告については以前のブログ「Googleショピング広告で新規ユーザーを獲得しよう」で紹介している。さらに、海外の集客攻略には、PPC広告などでその動向を見ながら、キーワードを選定し、海外SEOに本格的に取り組むのが良いだろう。
越境ECの場合の決済サービスは、国内消費者向けの決済サービスとは異なる。 決済機能はそれぞれの国により、違ってくるのでターゲット国の消費者が使う決済方法に合わせてカートシステムを導入する必要がある。
アメリカの消費者の決済手段は「PayPal」が9割のシェアを占めている。 その次にクレジットカード決済は8%、アリペイ1%、銀聯1%の割合である。 PayPal(ペイパル)は海外では人気の決済方法である。
eBayでも一番利用されており、圧倒的に海外では人気のクレジットカード決済方法である。 Paypalについての詳しい内容は「越境EC決済にはPayPal(ペイパル)がおすすめ!」で紹介している。
中国消費者の場合、ネットショップのオンライン決済ではアリペイ(Alipay)、銀聯(China UnionPay)の決済で80%以上を占めている。クレジットカード決済の普及率は5%未満と低い数字だ。 アリペイ(Alipay)については「中国最大のオンライン決済サービスAlipayとは」で紹介している。
また、海外販売の場合、決済サービスで利用できないのは、銀行振込での支払いと代金引換支払いの方法だ。銀行振込の場合は、手数料が多額になるため。代金引換は海外の物流サービスが対応していないためだ。
越境ECで商品を販売した際には、クレジットカード決済会社が指定するその時の為替に応じて、自動的に計算され、売り上げ代金は日本円で送金される。 海外の決済サービスは、PayPa決済、クレジット決済、さらに中国向けでは、アリペイ(Alipay)、銀聯(China UnionPay)決済など設定ができるカートシステムを選ぶ必要がある。
越境ECではどんな商品も配送できるわけではない。国や地域によっては、通関できる品目とそうではない品目がある。例えば中国へはワインは送れないし、アメリカではたばこや牛肉、毛皮などを禁止品目に指定されている。
国や地域によっては禁止品目があるので、商品が通関できるものかどうかを確認した上で、販売する必要がある。
商品配送では、大きくは3つのパターンがある。
である。
まず、1から行い、物量が多くなってくるば徐々に2へ移行するという方法だろう。
また、各事業者から、海外消費者に直接配送する1の方法では日本郵便のEMSがよく利用されている。次にヤマト運輸の国際宅急便、佐川急便の飛脚国際宅急便などがある。
各社配送サービスの料金については、「越境ECにかかせない海外配送 大手3社を比較してみた」で紹介している。
1のメリットは、初期コストが不要であること、デメリットは、梱包サイズと、重量で配送料が決まり、海外配送のための梱包など手間がかかるという点だ。 また、このような手間をできるだけ省きたい場合は、海外配送を専門に代行してくれる「転送業者」に依頼する方法もある。
越境EC市場は近年急速に成長しており、国際間取引ビジネスにおいて注目されている。越境EC取り組みにあたっては、取り扱う商品が海外のニーズに合うかを調査し、ターゲートユーザーを明確に意識し、自社による独自ECサイトを立ち上げるか、Web上のモールサイトに出店するかを検討する必要がある。
自社越境ECサイトを構築する際は、自社ブランドの魅力をいかに伝えるかをコンテンツ制作業者と綿密に打ち合わせを行い、製作すべきである。
そして、越境EC開設後は、どのようにプロモーションを行い、集客するかを試策する必要がある。Google広告、SNSの活用、バナー広告、アフェリエイト展開など積極的に展開すべきである。
日本政府も日本企業の成長を促す施策として、海外販売・越境ECの後押しを始めている。 また、海外販売未経験の企業をサポートする当社では、サービス内容も日々進化しており、これまで、海外販売・越境ECを踏みとどまっていた企業でも、その参入ハードルは低くなっているのも事実だ。
来年は、海外展開・海外販売に積極的に検討してみてはいかがだろう。