データフィード広告という新しい広告概念 2018年の予測


2000年10月に米国から始まったGoogle AdWords ですが、既に開始から17年もの月日が経過し、検索エンジンの検索キーワードに基づく広告から、商品データに基づく「データフィード」という概念が近年大きくEコマースの広告に変化をもたらしています。

データフィードとは、複雑なウェブサイトのデータ(画像、テキスト、動画、価格や項番などのデータベースに格納されるようなデータ全てを含む)を、他のユーザーでもそのデータをそのまま使えるように提供することです。例えば2005年ごろから世界的に普及したブログではRSSという形式のフィードがあります。RSSフィードがあるおかげでユーザーは複数の情報元から生データを収集し、RSSリーダーなるソフトウェアによって参照できるようになりました。

Facebookにはニュースフィードがあります。一般公開向けにユーザーが投稿した情報がニュースフィードを取得することによってFacebookサイトに行かなくてもパーソナライズされたウェブサイト上でFacebookが提供するニュースフィードなどのガジェットを経由して閲覧できます。Facebookフィードには次のリンクやページ先へのリンクも含まれています。

データフィードにはウェブサイトのコンテンツ全て含まれます。例えば天気、スポーツの結果、Twitterのタイムラインを含めて全てがデータフィードです。現在、データフィードはその配信の多くが現在はXML形式が利用されています。XML以外にもCSV形式やTSV形式もあります。生のデータを配信する考え方なので、その配信方法はXMLに限定されません。

キーワード広告からデータフィード型広告へ

ここでデータフィード広告という概念と従来からあるキーワード広告の違いを説明しておきます。

現在も一般的に利用されているオンライン広告と言えばGoogleが提供する Google AdWords です。
Google AdWords はキーワードの組み合わせによってのみ広告が配信されます。キーワードの組み合わせ方法には完全一致部分一致などの種類があり、AdWords担当者はこうしたキーワードAとキーワードNの無限の組み合わせをツールなどによって考え運用しているというのが現状です。

ここでキーワードAとキーワードNの語呂を組み合わせると言う行為には、人間が考えられる限界があるため、Googleでは様々なキーワード候補ツールを提供し、検索キーワードに漏れがないように支援をしています。

一方で、キーワードAとキーワードNの組み合わせであっても検索して欲しくない、全く自社のビジネスとは関係のないキーワードも入ってくることも十分あり得るので、そうした間違ったキーワードが入ってこないように、除外キーワードの設定が不可欠です。

以下の検索クエリーに対して、Googleサジェストでは複数のキーワードから連想されるキーワードをさらに提示することによってユーザーが目的の検索結果を得られるようにしていますが、オンライン広告も全く同様の原理でキーワードの組み合わせ数を最大限作っておくことで、ユーザーの検索結果に対して完全一致する広告を露出することが可能になるため、高いコンバージョンが期待できます。

ロングテールの原則に従うとコンバージョン率は高くなる

ロングテールの原則に従うとコンバージョン率は高くなる

 

SEO対策にしてもロングテールキーワードが最もコンバージョンする可能性が高い

SEO対策にしてもロングテールキーワードが最もコンバージョンする可能性が高い

このようなキーワードの組み合わせが大変よく機能しているのが役務や体験型サービスではないかと思います。体験型サービスの場合はユーザーがウェブサイトに投稿した記事やユーザーレビューのスコアがやはり1つの商品に対する価値になるので、Googleはそのコンテンツ価値を判断し、ランクづけをし検索結果に反映するので理にかなっていると思います。

一方で、物的な商品となると、在庫数や店舗によって価格が異なったり、配送日数がことなったり、決済方法が異なったり、また購入後に付加価値として受けられるポイント還元率やTポイントの有無など、全く違います。

同じ商品を売っているにもかかわらず、このようにネットショップがこの20年で増え続けた結果、ユーザーとしては信頼できるショップを探す新たなストレスが生まれたと言えます。
それを解決するサイトとしては価格.comです。

同じ商品を複数のネットショップが販売している

同じ商品を複数のネットショップが販売している

価格.comに掲載されているショップでは、ショップのレビューなども一通りわかるため、ユーザーは安心して購入をすることができますが、価格.comにないショップは無いのと同じくらいのインパクトを価格.comでは与えていると言えます。

Google Shopping で変わる広告の価値!?

目的の商品にたどり着くためにユーザーレビューや、価格比較サイトのような存在が、消費者の購入意思決定に大きな影響力を持つことが既に始まっています。Google Shopping はまさに次世代の価格.comを着々と進めており、商品フィードが提供できないとそもそもオンラインで商品を販売すること自体がとても難しくなってきているのではないかと感じます。

Google検索結果でも既に価格.comと全く同じ仕組みが動いています。

湯たんぽと検索すれば、その商品を取り扱っているショップがリストされる

湯たんぽと検索すれば、その商品を取り扱っているショップがリストされ、比較検討ができる。

これはGoogle Shopping というサービスです。
広告主は商品データをフィードという概念に基づきGoogleに提供します。Googleはそのフィードデータから同じ商品のユニークIDとなるGTINコードにより分離を行い、商品に対する広告(販売)主をさらに絞り込みし価格.comと同じような形式でユーザーに提供しています。(ここで初めてフィードという概念がEコマースに入ってきたというのが理解できると思います。)

この全てがフィードという概念で動作しており、従来のキーワードの語呂の組み合わせといった、いわゆるマーケターのテクニック的な手法とは全く異なる概念であり、まだ参入数は少ない状態です。

私が冒頭に伝えた従来のGoogle AdWordsでは、マーケーター自身がキーワードAとキーワードNの組み合わせを考える必要がありました。Google Shopping ではこのキーワードの組み合わせをGoogleの複雑なアルゴリズムによっておこなってくれるので、キーワード広告に比べて自分でキーワードを考える必要がそもそもありません。

ただ、1つ違う点としては商品情報のフィードを提供しなければならないという点です。
冒頭に書きましたフィードという概念がECサイトの商品データを整理するという目的でも使われるようになってきたということです。
以下に3つの事例を提示します。

Google Shoppingに提供された広告主の商品フィードを元に商品広告を自動生成し掲載している。掲載結果は価格比較表の形でも閲覧可能になっている

Google Shoppingに提供された広告主の商品フィードを元に商品広告を自動生成し掲載している。掲載結果は価格比較表の形でも閲覧可能になっている

 

同じくYahooの検索結果、価格比較はまだできないがyahooショッピングと連動させリッチな検索体験を提供している。

同じくYahooの検索結果、価格比較はまだできないがyahooショッピングと連動させリッチな検索体験を提供している。

 

bingでは米国など限定された国のみだが、既にフィードから商品広告を始めている、日本では2017年時点では未発表

 

 

そこで、実態としてどんな企業がこのGoogle Shopping に参加しているいるのかをよく見てみると、Amazon、ビックカメラ、ケンコーコムなどの大手サイトしか存在していません

 

中小企業がやっているような独自型ドメインのサイト名たるサイトがまだほとんど掲載されていません。ゼロではりませんが、実態としては中小企業のサイトはYahooショッピングや楽天に出店しているショップを楽天やYahooショッピング名義でGoogle Shopping に掲載しているということです。

なぜ中小企業サイトはGoogle Shopping に少ないのか?

Google Shopping に掲載するには商品データをフィードという概念に基づきCSV、TSV、XMLなどのデータ形式に変換し、Googleが定義する仕様に合致している必要があります。
データフィードを作成するには、商品データベースから条件に沿ったデータを取り出し、完全データを作成するためのシステム開発が必要不可欠です。そしてエラーが発生すれば、システムを改修し継続的にメンテナンスしていく必要もあります。つまり、自社サイトでまだこうしたシステムを保持・管理している企業が少ないのが、Google Shoppingに掲載企業が少ない理由の1つと言えると思います。そのため、手軽に行えるキーワード広告の方が、簡単に素早く広告を出航できるのも事実のため、多くの中小企業ではYahooショッピングや楽天経由でGoogle Shoppingに擬似的に登録されているというのが実態です。

データフィードがキングになる時代か

オランダ発の商品データベースを管理する企業 IceCatはメーカーから商品データの提供を受けてオンラインカタログを構築し、それをフィードという概念に基づき、eBayやAmazonなどに商品カタログを供給するというビジネスも存在します。完全な商品データを外部サービスと連携しながら保持することが、Google Shoppingとデータ連携するときに大きな強みになる可能性もあります。

オランダ発の商品データベースを管理する企業 IceCat

オランダ発の商品データベースを管理する企業 IceCat

 

そのほかにも、米国発のサービス datafeedwatchでは、Google Shopping, Bing, Amazonなどに一括してデータフィードを作成することができるツールも登場しています。このサービスが開始されたのが2013年なのでまだ比較的新しいサービスと言えます。

Google, Amazon, eBayなどに一括してデータフィードを作成することができるサービス

Google, Amazon, eBayなどに一括してデータフィードを作成することができるサービス

 

GoDataFeedも同じく商品データフィードの作成のほか、主要なマーケットプレイスに作成した商品データから直接商品登録までを行えるようになっており、商品データフィードの活用範囲が現時点では最も多いサービではないかと思います。

GoDataFeedでは1つの商品データフェードから様々なウェブサービスへ露出が可能

GoDataFeedでは1つの商品データフェードから様々なウェブサービスへ露出が可能

 

 

このように商品データをフィードをいう概念で管理することによって、今後はGoogle Shopping をはじめfacebook製品カタログもあります。

eBayはMerchant Intergration Platformという名称で商品データフィードを作成することで登録や広告がeBay内で行えるようになっています。今後は大手のモールをはじめ商品データの活用が従来のブログのRSSフィードを応用した形で、商品登録の領域に入り込んできており、これが結果的に商品登録の作業を自動化したり、商品データフィードから広告作成を自動化するなどの時代になると思われます。

eBayでもMerchant Integration Platformによって新たな商品登録の概念を開発し始めている

 

単なる商品データをCSVなりXMLにしただと言えばそれまでだが、商品データフィードが改めて見直され始めており、様々な大手ECサイトではこのフィードから新たなEコマースの付加価値を作り始めていると思われます。

最後に、Google Shopping はこの商品フィード広告という概念を世界統一基準として促進しており英語の商品データフィード1つで最大30カ国近くも商品の露出ができるという仕組みを作り上げています。これは商品フィードというデータの価値がこうした大手ITサイトによる今後さらにフィードサービスの拡充を行うことによって、キーワード検索と同等の価値を持つ時代になるのではないかと思います。

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