経済産業省は4月25日、「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」 (電子商取引に関する市場調査)を発表した。この内容は2017年の日本の電子商取引市場の実態や日米中3か国間の越境電子商取引の市場動向についての調査内容をまとめたものである。
今回はこの内容をベースに2017年の国内、海外のEC市場、さらに越境EC市場はどうだったのか、前年からどれくらい成長したのかなどを見てみよう。
2017年のBtoC-EC市場規模は、16兆5,054億円(前年比 9.1%増)と前年を上回る結果であった。EC化率は、5.79%とこちらも増加している。
国内のBtoB-EC市場規模、各分野の構成比率を見ると、物販系分野で8兆6,008億円(伸び率7.5%)、サービス系分野で5兆9,568億円(伸び率11.3%)、デジタル系分野で1兆9,478億円(伸び率9.5%)となっている。どの分野も前年比増と拡大している。
EC化率(すべての商取引のうち、電子商取引が占める割合)についても年々増加、2017年の物販系分野のEC化率は5.79%と前年比0.35ポイント増と増加している。
今回の市場調査でのトピックスとして、スマートフォン経由の市場規模の伸び率が拡大していること。さらにCtoC-ECの中でフリマアプリ市場規模の増加などを取り上げていた。
2017年のスマートフォン経由のBtoC-ECの市場規模は4,531億円増の3兆90億円、前年比17.7%増となり、これは物販系市場(8兆6,008億円)の35%に相当する金額である。スマートフォンから、商品を注文する割合は年々大きくなっており、今後はこの傾向はさらに加速すると予想されている。
また、2017年のフリマアプリの市場規模については、4,835億円と、前年3,052億円から伸び率36%と大きく、メルカリなどを筆頭にしたフリマ市場が活況を呈していたことを示している。
2017年の世界のBtoC EC市場規模も拡大している。2017年の世界のEC市場は2兆3,000億USドル(約250兆9,000億円 )、対前年比成長率は24.8%の成長となっている。
これはスマートフォンの普及、インターネット人口の増加、物流システムの充実、決済機能の多様化対応、オンラインショッピングのインフラ整備、越境ECの増大、など様々な要因が挙げられている。
さらに今後、世界のEC市場は2021年までには4兆9,000億USドル(約534兆円)まで成長が見込まれている。
また、世界の国別EC市場規模を見ると、市場規模でトップは中国で1兆1,153億USドル、2位はアメリカ4,549億USドル、3位はイギリス1,126億USドル、日本は第4位で953億USドルとなっている。
その中でも成長著しいのは、中国とインドで中国は前年比は35.1%、インドは前年比42.1%と圧倒的上昇率である。 世界のEC市場では中国、アメリカが大きな存在感を保持しているが、他国に比べ日本の伸び率が鈍化しているのが気になるところである。
最後に日本、アメリカ、中国の各国間の2017年の越境EC市場動向についても見ていく。 2017年の3カ国(日本、アメリカ、中国)越境EC市場合計は4兆2,196億円、前年比は22.1%の伸びで拡大傾向が続いているようだ。
日本、アメリカ、中国各国間の2017年の消費動向の結果を見てみよう。 日本の消費者が、アメリカ、中国から越境ECで購入した金額は2,570億円で前年比は7.3%増となっている。 アメリカの消費者が日本、中国から越境ECで購入した金額は1兆2,070億円で前年比15.9%増となっている。
そして、中国の消費者が日本、アメリカから越境ECでの購入額は2兆7,556億円で26.8%と前年比的には鈍化しているが、中国は2017年も越境EC市場を牽引する存在となっていることがわかる。越境ECは中国を中心にますます、拡大して行くだろう。
2017年から2021年までの日本、中国、アメリカ各国の越境EC市場規模のポテンシャルを推計を見ると、2017年の3カ国総計消費額、4兆2,196億円は2021年には1.9倍の8兆3,765億円にまで拡大すると推計されている。
3カ国別では2021年までに日本は1.2倍、アメリカは1.67倍、中国は2.2倍規模にまで拡大すると推計されている。 この推計予想は、各種調査機関、文献及び越境ECを行っているEC事業者のヒアリングを行って得た数値で、東京オリンピックに向けての越境EC期待値は加味されていないとしている。
アメリカと中国の越境ECユーザーは越境ECでどのような商品を買い、越境ECのメリットをどのようなところに感じているのだろう。その内容もまとめられているので紹介する。
アメリカでの越境ECのニーズで多いのは、衣類、アクセサリー、玩具、図書、宝飾品、時計などである、医薬品や、食料品・飲料など数値が低いのは、コールドチェーンなどの輸送面の問題があると指摘している。それらが改善されれば、このカテゴリーについては購入率も上昇するとしている。
また、アメリカ人の越境EC利用者は約3,400万人とされ、越境EC利用経験者は31%を占めている。日本は900万人、越境EC利用経験者は5%と低い。 アメリカ人が、越境ECを利用するメリットは、比較的安い価格で商品を購入できるがトップで、43%、次に国内にはないユニークな商品が欲しいためが36%となっている。 アメリカへの販売は、安価で日本オリジナルな商品に需要があると言えるだろう。
今回の統計では中国人の海外ブランドと国内ブランドとどちらが好きかとい嗜好度調査結果も報告されている。中国国内より海外ブランドを買いたい商品のトップは乳児用粉ミルクが53%である。さらにワインが52%、3位にカラー化粧品が49%と続いている。 中国では、7,000万人ものユーザーが越境ECを利用しており、日本から越境EC利用経験者は67.7%と日本ブランドに対する人気は高い。
越境ECの利用メリットについては、中国国内では店頭で販売されていない製品が44.4%でトップで、2位が日本に旅行した時に購入して気に入ったから再購入したが40.4%と日本でのインバウンド体験が越境ECの消費行動に繋がっていることを裏付けている。
2017年の国内EC市場は2016年に続き、16兆5,054億円(前年比9.1%)と予想通り拡大していた。そして、 日本の越境EC(対中国、アメリカ)市場も2兆106億円(前年比21.7%)の増と順調な伸びを示している。
越境ECについては、2020年の東京オリンピック需要が期待され、ますます増大することは間違いないところだろう。
特に中国人アンケートによる訪日中国旅行者が観光地などで買った商品を帰国後も越境ECを利用し、購入するいう需要も増えているようだ。 日本のEC化率、越境EC化率は他国に比べまだまだ低い。インバウンド需要がある商品、ブランドであれば、これを商機として越境ECビジネスに踏み出してみる価値は充分あるだろう。
出典:「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」
ブログ中の図に関しては、全て「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」のデータを基に作成した。