郵便の量が減り続けるなか、シンガポールの郵便サービスを担うシンガポール・ポスト社は、ロジスティックス事業(物資の効率的な統合管理を行う事業)、小売事業、Eコマース事業により利益を拡大させています。2013年度の総収入は62億8千シンガポールドル(約49億4千USドル)と見込まれており、前年度の47億6千シンガポールドル(約37億4千USドル)から飛躍的に伸びています。中でも、Eコマース事業での利益は全体の28%を占めており、その動向はアジアのEコマース市場で注目されています。
Eコマース業界で大躍進!その理由とは?
シンガポール・ポスト社が郵便サービスを中心としたいわゆる郵政事業から、Eコマースなどの新規事業へと舵を切り始めたのは2003年のことです。シンガポール人がイギリスのウェブサイトで商品を購入して、その商品を配送するサービスを提供するというvPost事業に始まりました。その後2011年には「Clout Shoppe」という高級商品を割引価格で販売するEコマースサイトの運営も始めました。そして2013年、ついにアジアのEコマース業界においてどのような役割を果たしていくのか、ビジョンが明らかになってきたのです。
主力商品「SP eCommerce」
Eコマース戦略の中心商品は、2013年の4月に開始された、「SP eCommerce」というEコマースのパッケージサービスです。アディダスやグルーポンなど、南アジアやオーストラリアにおいてオンラインで商品を売りたいけれど、そのノウハウがない200以上の企業が、既にこのサービスを利用しています。
SP eCommerceでは、小売事業者がオンラインでの商品販売を始める際に必要なすべてのニーズを満たすサービスを提供しています。サービスは3つの要素から成り立っており、HybrisやMegantoをベースにしたショッピングサイト、Supplizerと呼ばれる注文管理システム、そして物流&配送管理システムです。特に、物流ネットワークは卓越しており、クライアント企業に理想的な配送システムを提供することができます。そして、Eコマースサイトの分析機能などのテクノロジーにも重点をおいており、Eコマースの総合コンサルタントサービスといった内容になっています。
サイト・注文管理・配送の一体サービスであるがゆえに、顧客は商品の在庫数を正確に把握でき、在庫切れの商品を注文してしまう、などということは起こりません。
補助サービスも充実!
また、シンガポール・ポスト社は、オンライン・マーケティングやその効果測定についての補助的なサービスも提供しています。分析にはExactTarget、Google アナリティクス、Coremetrics、経営上の課題解決にはSAS、ソーシャルメディア・マーケティングにはGigya、と専門的なサービスについても連携して提供しています。
さらに、単独でEコマースサイトを運営するに至っていない会社の商品を取り扱うOmigoというショッピングサイトまで用意しています。
東南アジア・南アジアのEコマース業界はこれから!ますます目が離せない
東南アジア、南アジア地域でも、Eコマース業界には多額のお金が流入していますが、日本やアメリカに比べるとまだまだ始まったばかりです。ショッピングサイトを訪れた人が実際に購入するコンバージョン率も約1%と低い水準にあります。つまり、Eコマース市場では、Eコマースのしくみを改善して提供する余地もあれば、事業者が新規参入する余地も十分にあるのです。
こうした状況下にあって、シンガポール・ポスト社は、クライアント企業に新たなマーケティングチャンネルを提供するために、SampleStoreという商品サンプルを無料で提供するサイトを約120万USドルで買収しました。一方で、運営してきたEコマースサイトClout Shoppeは、今後はEコマースの総合サービスに特化するためとして売却するなど、戦略的に攻めの姿勢を見せています。
最近では、オンラインで購入した商品をピックアップできるPOP Stationという受取り専用ロッカーをシンガポール全土に設置するというサービスも始めました。南アジアだけでなく、オーストラリア、アメリカ、イギリスなどにも12の倉庫を保有し、卓越したロジスティクス・サービスを基盤に攻め続けるシンガポール・ポスト社の動向に今後も目が離せません。