2020年は新型コロナ感染拡大以降、緊急事態宣言発令や外出自粛などの影響で、実店舗での買い物を控える人が増えた。
そして、この期間が長く続くことで、人々の消費活動が大きく変化した年となった。
それは、ECサイトで商品を購入する人の増加であり、これまで、ECを利用したことのない70歳以上の高齢者もネットショップを利用し始めた。
外出自粛で自宅から買いにいけない生活必需品を、ECで購入する人が増え、緊急事態宣言が解除されても、ネットショップ利用者は減少の気配がない。
今回は、総務省統計局の6月に公表した、家計消費状況調査年報(令和2年)結果の概況をもとに、ネットショッピングの利用者の増加、支出の増加について、具体的な数値やECで支出が大きく増加したカテゴリーなどについて見ていこう。
下のグラフは、2010〜2020年の二人以上の世帯におけるネットショッピングを利用した世帯の推移を示したものである。
2010年は19.7%だった利用率も2020年には48.8%と10年前と比べると29.1%も増大している。直近の2021年4月では52.4%と更に増加している。
今日では、二人以上世帯において半数強の世帯がネットショッピングを利用している計算になる。
2020年は、コロナ禍で多くの国が行った外出制限措置により、ネットショップの利用が急増したことは間違いない事実である。
今後はワクチン接種などが進展し、実店舗回帰となるが、EC事業者はこの成長を活かした新たな取組みが必要である。
下の表は、2019年と2020年のネットショッピング支出金額を示したものだ。
2020年の二人以上の世帯におけるネットショッピングによる支出金額は、1か月平均は16,339円と前年に比べ14.0%の増加となっている。
ネットショップの商材をカテゴリー別に見ると、「食料」と「家電・家具」は共に 55.9%増加しており、最も増加率が高い。
逆に低くなっているのは「旅行関係費」が 51.7%の減少,「チケット」が 54.2%の減少と、旅行、イベント関連はコロナの影響を大きく受けている。
また、2020年の二人以上の世帯における、利用世帯あたりの支出金額は、1か月平均33,353 円と,前年に比べて0.3%の減少となっている。
直近の2021年4月のデータでは、34,146円となってが、利用者限定で見ても、支出額は増加しているが、世帯全体の上昇度合いは穏やかな数値にとどまっている。
下の図は2020年の二人以上の世帯におけるネットショッピングによる支出金額について,その内訳の構成比を2019年と比較したものだ。
2020年の支出割合で一番だったのは「食料」の19.0%。次に、「家電・家具」と「衣類・履物」の11.9%。
「旅行関係費」は10.1%で、前年の23.8%から大きく減少となった。
さらに、「食料」については、70歳以上の利用率が、70.5%も増加している
「食料」には、「出前」、「食料品」、「飲料」の種別があるが、消費者の支出額が最も大きかったのは、「食料品」である。
MMD研究所は、2021年5月17日~5月18日の期間で「食材宅配に関する利用実態調査」を実施した。
対象は、18歳~69歳の女性10,000人であり、普段の食材・食品を購入する際に利用したことがあるサービスについてのアンケート調査である。
さまざまな項目内容があるが、その中で、ここ1年以内に野菜・果物や肉・魚など食材の注文・配送を利用したことがあると答えた女性に、最も利用度の高かったサービスについての回答結果が下のグラフである。
最も利用度の高かったサービスは「おうちCO-OP」の12.8%。
次に、「コープデリ」の12.4%、「イオンネットスーパー」の12.1%、「パルシステム」の10%、「楽天西友ネットスーパー」の8%と続いている。
食材宅配サービスの利用は、コロナ禍においてその利便性を享受した消費者は、アフターコロナにおいても増加すると思われるが、この利用度サービス順位を見ると、消費者は食材の鮮度を重視した産直品をベースした商材を提供する生協・コープなどが好まれているのがわかる。やはり、食品は鮮度と安心・安全が最重要であると言える。
食品ECは今後も伸びる市場であるし、また、これからは食品ECの戦国時代となるだろう。
食品ECを更に成長させるためには、食品EC利用者のリピーター化に注力することが重要である。
重要となるのは、ターゲットニーズに合った商品開発である。
例えば、若者や一人暮らしの消費者には簡単調理に利用カット野菜の小分セット。
また、子育ての家族には子供用の栄養食材セット、下ごしらえ済み食材と調味料のセットなど、料理や献立にあった食品ECならではのさまざまなセットメニューの開発である。
各ターゲット層のニーズ合わせた、毎日の料理に合わせたセット商品開発を提供することで消費者の定期購入やサブスクリプションを促し、安定した売り上げに繋げる必要があるだろう。
参考: