財務省は1月24日、2017年の貿易収支を発表した。その内容によると2017年は2兆9,910億円の黒字と貿易収支は2年連続の黒字とはなったものの、前年比では25.1%減という結果であった。
貿易収支は、”モノ”を対象した統計結果であるが、”知的財産”を対象にした収支では、なんと、369億ドル(3.92兆円)の黒字となっており、この「知的財産収支」は数年前から年々増加しているようだ。
今回は、この知的財産についてその内容を見ていこう。
「知的財産」とは、”もの”としての財産ではなく、「人間の知的活動によって生み出されたアイデアや創作物など、財産的価値を有するもの」を指し、そうしたものを総称して、「知的財産」と呼ぶ。その知的財産を守る権利が「知的財産権」である。
この、知的財産が日本に大きな利益をもたらしている。昨年2017年1月ー11月の累計では、369億ドル(3.92兆円)の黒字で、これはアメリカに次ぐ第2位なのである。
金額的はアメリカが圧倒的に高い数値(日本の約4倍)を示しているが、日本の知的財産権の収支は5年前に比べ74%以上増大し、安倍内閣でも知的財産の活用を成長戦略の柱の一つに据えている。
2017年1月ー11月の世界の知的財産権の収支
「知的財産権」とは、知的財産のアイデアや創作物を保護し、運用していくための権利である。
この知的財産権は大きく分けると、「産業財産権」と、「著作権」と「その他の権利」の3つに分けることができ、今回はこの中で、知っておくべき主な知的財産権、「商標権、」、「意匠権」、「特許権」、「著作権」、「肖像権」について見ていこう。
商標権は、自社が提供する商品やサービスを他社と区別するために使われる、マークを保護する権利である。企業のロゴマーク、ロゴタイプやキャラクターイラストが商標権の対象となる。 保護期間は登録から10年間だが、更新は可能である。
意匠権は、工業デザインを保護するための権利である。ボールペンやパソコン、机からメガネまで大量生産が可能であるデザインを保護するものである。 美術品は大量生産されるものではないので対象とならない。 保護期間は登録は20年となっている。
特許権は、物・方法の発明を独占的に実施できることを守るための権利で、この特許技術は発明とも呼ばれ、保護期間は出願から20年である。医薬品などは期間を延長できる場合がある。特許権が認められるには、以下の5つの要件を満たす必要がある。
著作権とは、文学や学術、美術、音楽などの芸術分野の創作物を保護するための権利である。小説や楽曲の他、地図やプログラムといったものもその対象となる。 著作権は特許や商標などの産業財産権と違い、登録を行う必要がなく、創作時に自動的に権利が発生する。
だが、発表する可能性がある著作物を創作した場合は、自身の権利を主張するために、文化庁で著作登録を行った方が良い。 著作物は、原則として創作時から著作者の死後50年保護される。法人による著作の場合は公表後、50年となっている。
肖像権は人の姿、形、顔を無断で写真撮影することや、映像媒体に記録された映像を公開、利用することを禁止するもの。絵画などへの模写や似顔絵もこれに含まれる。 法律上では「幸福追求権」の下で保護された権利で、肖像権自体を規定した法律はない。
企業、またはご自分で発明、デザインした製品を製造、販売することは原則自由であり、特許権や商標権、意匠権を取得する必要はない。しかし、ライバル企業や他人がその発明やデザインを模倣した製品を製造し販売しても、権利を取得していなければ、どうすることもできない。
それら、権利を取得していれば、他社が模倣製品を販売した場合、差止請求や賠償請求ができる。その他にも知的財産権を取得することで多くのメリットがあるが、その内容を以下にまとめた。
自社開発の製品や技術、商品などが知的財産と認められれば、競合他社の参入を阻止でき、業界では優位なポジションにつくことができる。知的財産権で保護されていれば、後発の競合品は、知的財産権の侵害と見なされ、結果、市場シェアを伸ばすことができる。
知的財産権の取得はその商品や、技術が優れたものち認められたことになる。特許権などの取得は、営業活動において積極的にアピールすることや、サイト内に製品や技術に対して特許権取得の表示をすれば、顧客信頼度が高まり、さらに銀行などの融資や出資を受けやすくなる。
取得した、知的財産を他人または他社に使ってもらう契約をライセンス契約というが、 ライセンス契約を結ぶことでロイヤリティを得ることができる。つまり、ライセンス料による収益の拡大がみこめるのである。また、特許権を取得していても、商品化や販売できず、活かしきれない場合がある。他にライセンスを与えることで、収益確保につながる。
知的財産とは、物としての財産ではなく「知的創造活動によって生み出された財産的価値を有する情報」である。営業秘密や特許、商標といったビジネスに関わるものが対象となり、企業にとっては自社の資産の一つとなるだろう。
企業においては、知的財産権を取得し、活用していくことは、様々なメリットがあり、日本経済の活性化や、日本全体の競争力の底上げにも繋がってゆく。さらに、それらを海外に輸出する市場も大きく、政府も積極的に後押ししている。
企業においては、知的財産権制度を十分に理解し戦略的に、この知的財産権を取得・活用してゆくことが大切である。
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