日本政府は12月13日、2019年度補正予算案を決定した。予算額は4兆4722億円である。
そのうち、国交省関係の補正予算は「災害から復旧・復興と安全・安心の確保」に1兆1252億円、「東京オリンピック・パラリンピック後の経済活力の維持・向上」に1279億円など、合計で1兆2634億円となったようだ。
「ラクビーW杯2019」が終わり、次は「2020東京オリンピック・パラリンピック」である。
今回は、大盛況だったラクビーW杯のトピックとさらに、今後ますます増えるであろう、訪日外国人に対して取り組まなければならない課題について見ていこう。
9月20日に開幕した「ラクビーW杯2019」は11月2日まで行われた。
先週、12月11日(水)丸の内仲通りの800mで行われたパレードは、平日にもかかわらず、沿道には5万人も人々が集まり、埋め尽くされた。
ラクビーW杯の数字的要素をまとめると、まず、TV視聴率では、日本vsスコットランド戦の瞬間最高視聴率は53.7%を記録し、10月20日決勝T準々決勝の日本vs南ア戦は平均が「41.6%」だった。
また、観客動員は「170万人以上」で、決勝戦(南アvsイングランド戦)の観客動員は70,103人を記録した。
観戦チケットも99.3%が販売され、総販売数は約184万枚以上になったと発表された。
試合観戦に合わせて、各地の会場を訪れるラグビーファンが周辺の観光スポットや飲食店に足を運び、訪日客が周遊観光地を活発化したようだ。
大分県の発表によると、10月19~20日の2日間では大分と別府の宿泊施設の客室稼働率が80~90%台となり、その4割超がインバウンドによる宿泊だったとしている。
このラクビーW杯による訪日外国人数は約40万人とされ、この訪日外国人による経済効果は「4,370億円」と発表された。この数字は開幕前の事前予測通りの結果となっている。
次にラクビーW杯により、盛況となった主なものを見ていこう。
Airbnbによると、ラクビーW杯の期間中の全国の宿泊者数は65万人に達したと発表された。
そして宿泊費が最も高騰したのは、大分市の宿泊費でウェールズ対フランス戦の際の宿泊費で367%だったようだ。
計5試合が開催された大分県の調査によると、9月時点で試合に絡む14日間に少なくとも15万人が宿泊したとしており、そのうち、インバウンド数は5.4万人弱とされた。
試合会場周辺の居酒屋などでは、ビールの消費量が急増した。大会スポンサーのハイネケンの9月の販売量は、前年同月の3.4倍となったほか、ギネスビールも前年同月比5割増を記録した。
地域ならではのご当地ビールも販売量を伸ばしたようだ。大阪の「箕面ビール」の直営店では、9月以降はインバウンドによるが販売が急増した。
パイントサイズ(568ml)を3~4杯飲み干す欧米人客の姿も多く見受けられたようだ。
求人情報の「Indeed」によると、ラクビーに関連職の検索が、調査開始の2014年に比べて、7月には26.2倍、8月には40.0倍、そして、9月には63.6倍にまで増加したようだ。
検索数に合わせ、求人数も上昇し、2019年6月は1.21倍、9月には1.38倍となり、過去5年間で最多の仕事数を記録した。
ラクビー関連の仕事とは、「ワールドカップの運営・受付スタッフ」、「データ分析」、スタッフ」などである。
ラクビーW杯関連グッズは日本が勝利すれば、するほど人気が上がり、当然、売り上げは増加した。特に、日本代表選手のレプリカジャージーを販売しているゴールドウインは約20万枚を完売した。
さらに、ラグビー関連書籍もよく売れたようだ。東京の丸善では、日毎に来店者数が増え、ラグビー関連書籍を集めたコーナーを設置した。
特にラクビーはルールが難しいので、客層はさまざまだが、「ラクビー競技を勉強したいという人が多い」と書店担当者は述べていた。
ラグビーファンから意外な人気となった商品が、「和包丁」である。
和包丁の産地である堺市産の包丁などを取り扱う大阪市内の専門店では、9月の売り上げが、前年同月比16%の増加を記録したとしている。
また、「タワーナイブズ大阪 刃物工房」にはラクビーののイタリア代表の選手が来店したようだ。
同店では、店員全員が外国語による接客ができることから、売り上げの約7割が訪日外国人客による購入という好結果を生み出している。
ラクビーW杯2019の成功は、日本のインバウンド数の増加や地方都市の宿泊数の増加、消費拡大といった特需を生み出した。
次は来年2020年、東京オリンピック・パラリンピックである。
11月30日、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる国立競技場が完成した。そして12月15日(日)には竣工式が行われ、正式に「国立競技場」の名称となった。12月21日にはオープニンイベントが開催され、2020年元旦にはサッカー天皇杯決勝が開催される。
「国立競技場」は2020年7月24日(金)から開催される、東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムであり、開閉会式や陸上競技が繰り広げられる。
いよいよ、日本はこれから7ヶ月余り、本格的にオリンピックモードへと突入するわけである。ラクビーW杯の成功から、さらにインバウンドの増加が期待される。
東京都の試算ではオリンピックによる経済波及効果は直接的効果は5.3兆円。
オリンピック組織委員会では、この間の訪日客数はオリンピック(7月24日~8月9日)で780万人(東京の人口の約半分以上)、パラリンピック(8月25日~9月6日)で230万人と、この開催期間の1ヶ月以上にわたって、相当数の外国人が日本にやってくるわけである。
この780万人、230万人という訪日外国人に対して、店舗・宿泊施設のインバウンド事業主は対策を講ずることが求めらるだろう。
次に、最低限必要なインバウンド対策をまとめた。
日本政府は、2020年の訪日外国人数を4,000万人とし、消費額を8兆円を目標としている。
そのために、政府は訪日プロモーションの実施、ビザ発給要件の緩和、最先端技術による出入国審査の実現、Wi-Fi環境の整備などを実施するとしている。
では、店舗や宿泊施設などのインバウンド事業者が行うべき準備は何があるのか。
主なインバウンド対策として、「多言語化対応」、「キャッシュレス対応」、「免税店の導入」である。
観光庁が実施した訪日外国人のアンケートによると、「多言語化対応」に対して不満が多く出ている。
店舗や宿泊施設のインバウンド事業者は多言語対応は早めに対策を徹底した方が良い。
つまり、メニュー、店舗や施設内の案内、サイン、WEBサイトの多言語化である。
言語としては、最低限、必要なのは英語、中国語(簡体字、繁体字)。さらにフランス語、スペイン語などがあるとよいだろう。
また、店員や宿泊案内人の外国語対応による接客ができると、SNSなどで口コミ情報が広がり来客数は増加するだろう。必要なら、通訳の採用や音声翻訳機などを導入し、インバウンドサービスの向上に施策しなければならない。
日本人も海外旅行では現金を持ち歩かないように、訪日外国人も同様である。
現金を持ち歩くのはリスクが高く、なるべくなら現金は小額の利用で、あとはキャッシュレス決済というインバウンドが一般的である。
特に、飲食はキャッシュレスが使える前提で計画されている訪日外国人が多く、キャッシュレスが使えない飲食店は避けられる可能性が高い。
まず、基本的には、クレジットカードは、国際5大ブランド(VISA、Master Card、JCB、American Express、Diner Club)は必須である。
また、中国人対応としては国際カードではなく、銀聯カードが利用できるようにすべきである。
さらに、中国人インバウンドを取り込むには、QRコード決済(AlipayとWeChat Pay)を利用できるようにすると良いだろう。
このような決済が利用できるということを店先に表示するだけで、中国人観光客の店鋪訪問の可能性は高まるだろう。
さらにもう一つが、一般物品や消耗品など扱う店鋪であれば、一般免税店「TAX FREE SHOP」として申請し、許可されれば、訪日外国人の買い物を後押しできるお店となることが可能である。
今年、日本では消費税が10%となり、この10%免除される一般免税店は、さらにインバウンドにとっての利用価値が高まるだろう。
最近では、マツキヨなどのドラッグストアがインバウンドで好調なのは、この一般免税店での消費税10%が免除されるからだろう。
一般免税店として販売できる商品は、一般物品として家電製品、カバン、靴、洋服・着物、時計、民芸品・工芸品。
消耗品としての食品、飲料、化粧品、医薬品などがある。
免税販売を行うには、免税店としての許可が必要で、以下の手続きが必要である。
近年、ますます、訪日外国人観光客は増加しており、東京オリンピック開催までさらに加速度的に増加するだろう。店舗や宿泊施設などにとってもインバウンド対策はもはや、無視できない状況になりつつある。
しかし、インバウンド対策には時間もかかる、それなりの準備、資金が必要なのも事実である。
そこで利用したいのが、政府や自治体などから給付される「補助金」である。
「補助金」を活用することで、インバウンド対策を整備することが可能である。
先に記したように政府は13日、2019年度補正予算のなかで、「外国人観光客6000万人時代を見据えた基盤整備」として、126億円を確保した。
来年はインバウンド対策として「補助金案件」が観光庁などから、多く示されるに違いない。
現在、実施されているものの一例として、東京都の「2019年度 インバウンド対応力強化支援補助金(東京観光財団)」がある。
この補助金の概要は、東京都内の民間宿泊施設、飲食店、小売店、中小企業団体等、観光関連事業者グループが、訪都外国人旅行者のニーズに対応した利便性や快適性を向上させる目的で新たに実施する受入態勢強化の取組を支援する補助制度である。
具体的には、施設・店舗・室内・店内設備の利用案内等の多言語化や外国人旅行者の受入対応に係る人材育成、事業に係るコンサルティング等も対象になる他、ホームページ、パンフレット等広報物の多言語化も補助対象事業としている。
補助対象経費は、多言語対応(施設・店舗の案内表示・室内・店内設備の利用案内・ホームページ・パンフレット等の多言語化、多言語対応タブレット導入等)にかかる費用で、経費の2分の1以内を補助するもので、1施設または、店舗あたり300万円を限度としている。
申請期間は、~2020年(令和2年)3月31日(火)まで。
詳細は、こちらの「2019年度 インバウンド対応力強化支援補助金(東京観光財団)」にてご確認いただきたい。
そのほか最新のインバウンド関連の補助金情報などは、こちらのブログ「海外販売に関する補助金・助成金情報(2019年12月)」でも掲載しているので参考にしていただきたい。
オリンピック開催国は、オリンピック開催後も需要が伸び続けるというデータがある。シドニーオリンピックでは開催が決定した1993年から、インバウンド需要は大きく増加した。
日本でも国際的なイベントが連続して開催されるなか、インバウンド対策が急がれている。インバウンド需要を取り込むためには、訪日観光客が言語やサービス、さらに会計においてストレスを感じない環境をつくことが最も重要である。
未だ、インバウンド対策を講じていない、もしくは対策に踏み切れない店舗経営者は、まずは、インバウンド補助金を調べてみるところから始めてはどうだろう。オリンピックは開催後も続く長期的な需要の向上が見込める大きなチャンスである。
参考:
タグ: インバウンド, インバウンド対策, ラグビーW杯, 東京オリンピック, 補助金