8月21日、Googleトレンドワードで27%の高い上場率を見せたワードがある。
そのワードは「インバウンド」という当ブログではおなじみの言葉だ。
「インバウンド(Inbound)」とは、内向きに入ってくるという意味合いがあり、主に旅行関連では外国人が訪日することを指す。
なぜ、「インバウンド」がトレンドワードとなったかだが、これは、9月20日から始まるラグビーW杯2019に関連する「インバウンド効果」の増長と、8月20日から日本のラグビーW杯開催12都市で、12,000点以上のアイテムが開催都市を彩り始めたからだ。
開催地では順次、街頭バナー、のぼり旗などの装飾アイテムが街を彩りラグビーW杯を盛り上げることになる。
今回は来月9月20日から行われるラグビーW杯2019の予想以上に大きくなるだろうインバウンド効果や対策について調べてみた。
日本では今ひとつ盛り上がりに欠けるスポーツであるラグビーだが、ラグビーW杯とは、4年に一度行われる15人制のラグビーの世界大会で、夏季オリンピックとFIFAワールドカップに並ぶ、世界三大スポーツイベントの一つである。
前回の2015年イングランド大会では、海外から40万人の観戦客が訪れ、累計で247万枚のチケットが売れた。また、テレビ視聴者数も全世界で40億人にものぼった。
イギリス大会の予選リーグでは、日本は南アフリカに奇跡の大金星を挙げたことで話題になった。この大会で優勝したのは、ニュージーランドだった。
9月20日から開催されるラグビーW杯2019の概要は以下の内容である。
ラグビーW杯2019年は、9月20日(金)~11月2日(土)の44日間に渡って開催される。
日本はアジアでは初の開催国であり、ラグビー伝統国以外の開催においても初の開催である。
過去大会は1987年から、8回行われ、優勝3回がニュージーランド、優勝2回がオーストラリアと南アフリカ、優勝1回がイギリスとなっている。
ラグビーW杯2019は日本全国12の競技場で試合が行われる。
全国12の開催都市・会場は下図の通りで、開会式および開幕戦(日本vsロシア)は東京スタジアムで行われ、決勝戦および閉会式は横浜国際総合競技場でそれぞれ行われる予定だ。
ラグビーW杯2019のポイントとなるのは、第一は開催期間が長期であるということ。
来年開催される東京オリンピックが17日に対して、ラグビーW杯2019は44日間と約2.5倍である。
観戦目的で訪れた訪日観光客は、試合がない日は開催地周辺観光地の観光にあてることが予想され、周辺観光スポットや有名飲食店、お土産店などはインバウンド対応が一気に増加するだろう。
第二は、オリンピックは東京周辺の開催となるが、ラグビーW杯2019は全国12か所が大会会場となる。余り外国人が来ないだろう地方観光地でもインバウンド観光客を取り込める千載一遇のチャンスである。開催地域はもとより、その周辺地域、さらに観戦者移動エリアなど、東京オリンピックより地方経済活性化の起爆剤となることが考えられる。
万全の体制で、ラグビー観戦以外でも”おもてなし”対応、帰国後も継続的にエンゲージメントできるよう施策したい。
第三はラグビーはイギリス発祥の紳士のスポーツである。すなわち、平均より所得の高い層が観戦の為に訪日する見込みが高い。ラグビーファンは「年齢層が高い」「高収入」であり、時間とお金に余裕がある外国人が来日するとしている。
ラグビーW杯2019を観戦する外国人はオセアニア、ヨーロッパの富裕層、一人当たりの消費額も一般のインバウンドより消費額が大きいと考えて良いだろう。
それでは、40万人もの外国人が大会目的で訪日する、ラグビーW杯2019の日本の経済波及効果は、どのくらいになるのだろう。
ラグビーワールドカップ2019組織委員会で試算した内容があるので、
下記を参照していただきたい。
ラグビーW杯2019開催における、経済波及効果は4,372億円(29.7億ポンド)、インバウンド消費額は1,057億円と予測されている。
スタジアムでの観戦者は最大180万人。訪日観光客は40万人に達するとされ、まさにスポーツの祭典である。
上記のうち、GDP増加分は2,166億円(14.7億ポンド)と見込まれ、税収拡大効果216億円(1.5億ポンド)、雇用創出効果25,000人に上ると予測される。
ラグビーW杯2019は世界3大スポーツの祭典であり、期間が長く、欧米豪など富裕層が訪日する。過去イングランド大会でも約3,332億円の経済波及効果があった。
以上を踏まえ、インバウンド対策を考えると、以下の3つがポイントとなるだろう。
日本ラグビー協会の資料から、世界のラグビー人口トップ10を見ると、トップが南アフリカの53万393人、2位がイングランドの35万9,447人、3位がオーストラリア27万3,095人続き、日本は、アジアで唯一の9位のラグビー人口である。
これら、ラグビー人口トップ10の国々のラグビーファンが訪日することを念頭に置いて対策することが重要である。
ラグビー強国とされる、オーストラリア、ニュージーランドの人たちのユニークなのがビールを非常によく飲み、ビール片手に観戦するが常であるらしい。ラグビーファンの飲酒量は、サッカーファンの6倍以上というデータもある。
飲酒量が高いラグビーファンに対して、ビール以外にも日本酒やワインなど、地ビールや地元酒蔵やワイナリーなどあれば、プロモーションすべきだろう。
試合がなく、次の試合まで丸1日空いてしまうという観戦者に対して、体験型アクティビティを整備することも重要である。
観戦者は、自主的にあちこち巡る観光ではなく、一日、おまかせ体験プラン、つまり申し込んだら、1日中楽しめるようなアクテビティを用意すると良いだろう。
例えば、日本独自の茶道、和服、華道、忍者体験など日本ならではの「こと体験」で観光サービスを提供するのがポイントである。
最後はプロモーションを効果的に展開することが重要である。
観光スポットや体験企画、観光地ならではの商品、飲食、宿泊などのサービスを観戦客に「認知」させ、観光スポットへの来訪、飲食、商品、サービスの購入などの「動機づけ」を促す必要がある。
プロモーション手段としては、観光ポータルサイトや地元観光サイトへの登録・情報の発信、さらに多言語WEBサイトの構築や多言語パンフレットの頒布、FacebookやInstagram等SNS、YouTubeなどからターゲットに合わせたプロモーションを展開すべきである。
ラグビーW杯2019は44日間と長期である。各地スタジアム開催地域ばかりでなく、その周辺地域、移動経路においても観戦者需要を取り込める可能性は十分あるだろう。
あるアンケートによると、ラグビーに興味のある英国人の60%強が「ワールドカップ開催中に日本旅行への興味がある」と回答している。つまり、ラグビー観戦中に日本観光も楽しみたいとしているのだ。
株式会社JTB総合研究所では、2019年のインバウンド市場予測を公表した。
予測によると、2019年の訪日旅行者数は3,350万人(前年比7.4%増)となっており、予想は主要市場の減速の影響で前年の伸び率(8.7%増)を下回るだろうとしている。
原因は、2019年上期は前年の自然災害の影響が残ったこと等による、韓国、台湾、香港の訪問客数が減少したことによるもの。
さらに、中国のインバウンド数の伸び率の減速、タイのインバウンド数も鈍化している。また、韓国では反日運動が影響し7月から訪日旅行のキャンセルが相次いでおり、先が見えない状態である。結果、前年度の伸び率8.7%には及ばないだろういう見解なのである。
下期、インバウンド市場に期待されるのは、9月20日から始まる、ラグビーW杯2019である。
ラグビーW杯のチケット予約も好調であり、欧米豪からの旅行者数の増加が期待大である。
さらに、中国、台湾、香港など市場では上期の反動増が加わるため、下期の伸び率が上期を上回るだろうとも記されている。
下期は伸び率で確実に期待できる、欧米豪がどこまで、市場を牽引して行くかにかかっているようだ。
ラグビーW杯2019のチケット販売が好調である。ラグビーW杯は開催期間が長いこと、欧米豪の富裕層が観戦することなど、インバウンドによる経済効果に大きな期待がかかる。
また、ラグビーW杯の客はサッカーW杯と比べて、開催国での消費支出が多いというデータもある。今回アジアで初めてのラグビーW杯の訪日客がもたらす経済的なインパクトは予想以上のものとなるだろう。
ラグビーW杯2019開催まであと1ヶ月。インバウンド関係者は、これから多くの外国人ラグビー観戦者が訪日するチャンスに、受け入れ体制をしっかり整え、積極的な情報発信を行い、観戦、帰国後もリピーターとして継続的な訪日につなげていただきたい。
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