2月1日、日本とEU(欧州連合)の経済連携協定(EPA)が発効された。 これにより、欧州産のチーズや豚肉、ワインは値下がり、日本車は関税が8年後に撤廃される。
今後は全品目ベースで、EU側が約99%、日本側は約94%の関税が撤廃される。 日本からは、自動車の他に、日本酒や肉類、果物のEU輸出にかかる関税が撤廃され、日本企業や農家にとって、EU諸国に向けた海外販売、越境ECが行いやすくなるだろう。
今回は、このEUの中でもリーダー的存在である、ドイツのEコマースの最新事情を調べてみた。
ドイツの人口は約8,252万人とロシアに続き、ヨーロッパでは最も多い国である。
ヨーロッパのほぼ真ん中に位置し、北側は北海やバルト海につづく低地帯、中央は丘陵地と低い山脈、南は東西に連なるドイツアルプスがある。 四方を9つの国に囲まれたドイツは、EUの中心的存在である。
ドイツといえば、ビール、ワイン、ソーセージから、サッカーやBMW、ベンツ、フォルクスワーゲン、アウディといった車産業、音楽ではベートーベン、モーツァルト、メンデルスゾーンなど連想される。このようにドイツは、食から工業、テクノロジー、スポーツ、文化にいたる様々な分野で世界をリードしている経済大国である。
下記にドイツの基本情報をまとめた。
ドイツはECの普及率が高く、73%のドイツ人が今までにオンラインショッピングでの買物経験がある。 2017年のEC市場規模を見ると、ドイツは世界第5位、ヨーロッパではイギリスに次ぐ、651億ドル(7.3兆円)であった。
2018年末のドイツの電子商取引は昨年11.4%増の約736億ドルとなり、堅調に増加しており、ドイツはEU市場を活用しようとする小売業者にとって、ターゲット顧客が豊富なマーケットである。
スマートフォンも普及し、eコマース取引の全売上高の32%がモバイル端末を利用し商品を購入している。 下記にドイツのEC関連の情報をまとめた。
EC市場の大きいドイツだが、ドイツは独自の決済方法が多く普及している。
下記、グラフをみると、オンライン決済が40%、後払い決済が29%、クレジットカード決済が10%などとなっている。
オンライン決済というのは、後払い決済で、請求書が手元に届いたら、コンビニなどから料金を振り込む決済方法である。 ドイツは日本と同様、キャッシュレス化が進んでおらず、通常の買い物など、ほとんどは現金決済が中心で他の先進国と比べても保守的である。
このまま、キャッシュレス化が浸透しないと、EC市場の拡大は鈍調となる可能性がある。
ドイツのオンラインショップで最も人気のあるカテゴリーは、ファッション。アパレル(66%)である。次に多いのが、カルチャー系(書籍、音楽、映画など)(56%)、3位に旅行・観光の46%となっている。
現在、最もドイツのネット通販で大きな勢力を持っているのはAmazon.de(アマゾン)である。
第2位はドイツ発祥の日本にもECサイトがある、Otto Group(オットーグループ)である。Otto GroupはB2Cファッションとライフスタイルの分野ではEC諸国でも有数のネット通販企業である。
3位は、カジュアルファッション系のZalando(ザランドゥ)となっている。
このAmazon、Otto、Zalandoがドイツのオンライン小売業界を支配しており、これら3社を合わせて、ドイツの電子商取引上位100社からの総売上の約44%を占めている。
Amazonはドイツでも強い。本、家電、ファッション、食品とその品数の豊富さや、会員サービスの向上などで、ドイツでもAmazonは最強である。
ドイツでは、アメリカより販売者の情報(会社名、住所、電話番号、VAT番号)開示が厳しくなっている。
OttoはB2Cファッションとライフスタイルでは欧州1位のオンライン小売業者である。
Ottoはモバイル通販の強化施策や、翌日無料配送、リアルタイム送金など、顧客データの分析を’活用した新しいサービスを次々に提供している。
日本でいう「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」のような通販サイトが「Zalando(ザランドゥ)」である。
Zalandoはイギリスを含むヨーロッパ諸国で、人気の通販サイトで、ファッション系オンラインECビジネスとして成功を収めた。
Zalandoはイギリスでは国内トップ20に入る人気ブランドのうち9ブランドと契約しているのに対し、Amazonは4ブランドの契約とファッション分野では優位に立っている。
ドイツでは、フランス、イギリスと同じように、越境ECをよく利用している。 特にイギリス、アメリカ、フランスの商品を好んで購入しており、24%がEU圏内からの購入となっている。
ドイツ人が越境ECを利用する理由は、低価格であること、自国で購入できない商品であること、豊富な品揃えあるなどがあげられている。
日本商品の売れ筋としては衣類・アパレル・靴・装飾品がトップで38%、次に家電・PC・スマホ等で22%、玩具・趣味用品も22%となっている。日本のアパレル商品や趣味、娯楽関連商品が人気のようだ。
日本とEUの経済連携協定(EPA)発効は、アメリカや中国が行っている、行き過ぎた保護主義に対して、一石を投じたものと言えるだろう。
EPAはEUと日本の6億人と世界の国内総生産(GDP)の約3分の1を占める、開かれた自由貿易圏の誕生を意味する。
2月1日より、日本から輸出する日本酒、醤油、タバコ、塩など日本からEUへ輸出する多くの品目の関税が即日撤廃され、日本の牛肉にかかっていた13%の関税も撤廃された。
今後は、ドイツのみならず、フランス、イタリア、オランダ、スペインなど、日本からEU諸国への越境EC市場・販路拡大に大きな期待がかかる。