アメリカは2013年までは、世界第1位のB2C Eコマース市場規模だった。2017年、現在では、急成長の中国に1位の座を奪われたが、市場規模は世界第2位で、前年比の成長率は12.1%の3,603億米ドル(約41兆円)(2016年数値)となっている。
越境EC市場規模でもアメリカは世界第2位で、2017年の日本・アメリカ・中国の越境EC市場規模では、アメリカの日本からの購入額は、前年比15.8%増の7,128億円。中国からの購入額は前年比16%増の4,942億円となっている。
どちらも前年から増額で、越境ECは中国、アメリカを中心に2020年まで毎年10%以上の成長率で推移していくと予想されている。
この背景としては、PCとスマートフォンが世界中で普及したことやインターネット環境が整備されてきたことがあり、海外の商品であっても誰でも、自国でインターネットを利用して海外商品を気軽に購入できるようになったからである。 さらに、中国人ユーザーの高い消費意欲が越境EC市場を牽引していることがその要因である。
今回は、世界第2位のアメリカに越境ECで商品を販売する場合、アメリカの市場動向や押さえるべき法的内容など、基礎情報を見ていこう。
2016年に実施した、アメリカのオンラインユーザーに関する調査によると、オンラインユーザーの約半数が、外国のオンライン店舗、または販売者から、商品を購入しているという。
つまり、アメリカのオンラインユーザーは推定2億人、その半数の約1億人の越境ECユーザーが存在することになる。
主な越境EC相手国は、1位中国、2位イギリス、3位カナダ、4位日本となっている。
2017年にケーピーエムジー(KPMG)が行った調査によると、アメリカの消費者の中で購入額全体に占める、越境ECでの購入額の割合が高いユーザー層は、ミレニアム層(2000年以降に成人を迎える世代)の15%、2位はジェネレーションX(1960年から1970年に生まれた世代)で9%、3位はベイビーブーマー(1946年から1964年に生まれた世代)で3%と公表されている。
アメリカの越境ECユーザーはミレニアム世代と言われる、1980年代~2000年代に生まれ、デジタル機器とソーシャルネットワークを自在に操る人々がマーケットの重要な位置を占めている。
アメリカの越境EC市場の主要プレイヤーは、イーベイ、アマゾン、エッツィーの3社である。2016年、ペイパルとイプソス実施のオンライン小売業者 1,200社を対象とした調査によると、越境ECの利用率はイーベイが最も高くて59%、アマゾンが38%、エッツィーが26%となっており、イーベイの存在が大きい。
アメリカのユーザーはイーベイUSを利用して、国内で手に入らない商品や海外の希有な商品を探し、購入しているようだ。
また、SNSもよく利用されており、2016年のピトニーボウズ(Pitney Bowes)の調査内容によると、米国の越境EC購入者の19%はSNS上で商品を発見して購入しているとしている。
2016年にペイパルが公表した内容によると、アメリカユーザーが越境ECで購買をする際のデバイス別シェアは、デスクトップ、ノートブックなどのパソコンが64%、スマートフォンが18%、タブレットが12%、スマートテレビやゲームコンソルなど、その他のデバイスが6%となっている。
アメリカでは、下図にもあるようにニーズが高いのは衣類、アクセサリー、玩具、図書、宝飾品、時計などである。
越境ECで購入がトップは衣類、アクセサリー関連で、越境EC利用者の48% がこのカテゴリーの商品を購入している。
越境ECを利用するメリットは、「比較的安い価格で商品を購入できる」がトップで、49%、次に「好きなブランドや商品が国内で購入できないため」が43%となっており、日本から商品を購入する場合、ユーザーが重要視するのは「価格」という答えがもっとも多い。
アメリカユーザーは購入時に他のサイトで必ず価格比較を行い、最も安いECサイトで購入しているのが一般的だ。
アメリカで越境ECを使って購入する際、どのような決済方法が一般的なのだろうか?
越境ECユーザーの53%が「安全な決済方法」、44%が「便利な決済方法」、41%が「ほとんどの小売業者で使用できる決済」、37%が「早い決済プロセス」、34%が「信頼できる決済ブランド」となっている。
これらすべてに対して、日々改善し、取り組んでいるがのがペイパルなのである。 アメリカの決済手段の利用順位をみると、1位がペイパル、2位がクレジットカード、3位がデビットカード、4 位が銀行送金となっている。
ペイパルは購入者と販売者が安心して利用できる決済プロセスを提供し、成功している。 アメリカをターゲットの越境ECを行う場合は、ペイパルで決済できることが必要不可欠である。
世界の越境EC消費者を対象にしたアイピーシーの調査では、越境ECユーザーの7割が購入時に最も大事な情報として「発送料金の明示」をあげている。
また、ミレニアル層は越ECでの購入にも親しむ年齢層だが、アンケートでは39%が「配送に時間がかかりすぎている」と回答した。アメリカの配送で一番利用されているが、郵便局での郵送(米国であれば USPS)である。
それは、郵便局での配送料金が他企業の配送料に比べ、比較的安価あることが影響している。 例えば、日本からアメリカのロサンゼルスまで、縦20cmx横25cmx高さ10cm、重さ1.5 キロ以下の梱包された商品を送る場合、アメリカユーザーが払う料金は以下のようになる。
海外発送の場合は、主要配送業者は各国郵便局が経済的であるといえる。
日本で越境ECを始めるうえで、最低限アメリカのE-コマース法律における留意点も抑えてく必要がある。
日本で自社越境EC運営を行っている場合と、アメリカに拠点をおいて越境ECの運営を行っている場合(現地サイトモデル)では、法的リスクが違ってくる。 現地サイトモデルの方が、日本で越境ECを開設してる場合よりリスクは高い。
現地サイトの場合はあくまで、アウェイとなるので、現地商習慣や法的体制に従う必要がある。 一方、日本で越境サイトモデルは、現地でのコミットが少ない分、市場開拓スピードは遅くなるが、法的リスクは少ない。
ここでは、日本で越境サイト構築した場合の最低限守らなけばならない、アメリカのビジネスに関する法的内容についてまとめてみた。
アメリカのEコマースビジネスを統治しているのは、連邦取引委員会(FairTradeCommission、以下「FTC」)と呼ばれる機関である。 このFTC機関が、企業の不公正または欺瞞的な商行為を規制し、、それらのビジネスから消費者を守る権限をもっている。
FTC による「公正な E-コマース」の定義を理解するには、FTCが承認した経済協力開発機構(OECD)のガイドライン(Consumer Pritection in E-commerce)が参考になる。以下が基本的なアメリカのEコマースビジネスルールである。
ここで重要なのは、「開示義務」と「データ保護」を遵守するための項目である。
越境EC企業は、Terms & Use と Privacy Policy と呼ばれるサイト内ポリシーの策定をしっかり行う必要がある。
「Terms of Use」では消費者が不利にならないよう取引に重要となる情報を開示し、企業は、消費者が安心して商品購入できる環境づくりを示さなければならない。 「Privacy Policy」はサイトにおける個人情報の取り扱いを明確に消費者に説明しければならない。
例えば、「第三者に個人情報を共有しない」とポリシーに書かれている場合、これに反して個人情報を共有してしまうと、情報漏洩したものと判断される可能性があるので、注意する必要がある。
ポリシー内の規約条項はアメリカユーザーは、しっかり読む傾向が強い。サイト内ポリシーは充分注意し、日本語ポリシーの翻訳ではなく、アメリカ法的ガイドラインに沿って記述する必要があるだろう。
FTCではインターネット上の広告に関しても規制をしている。 例えば、重要な事実を省略すること虚偽または誇大な表明や主張を行うことを禁止しています。
FTCのマーケティング規定に違反した場合、広告内容の修正だけではなく、消費者の損害を補償する、あるいは民事制裁金と呼ばれる罰金を課せられることもあるので、アメリカユーザー向けプロモーション広告など出稿する場合は注意が必要である。
以下にその内容を明記した。
アメリカ向けE-コマースを展開するうえでは、企業が知らなければならない法律、規定、ガイドラインが存在する。
「アメリカに拠点を持たないから大丈夫」、「日本でサイト構築した越境ECだから心配ない」と、法的内容を無視することは危険である。 アメリカでは、Eコマースを対象とする法律・規定の多くは、アメリカ消費者を保護するために機能している。
そのための法律、規則であり、ガイドラインである。それら内容を無視することのないように、サイト規約や商品の表示内容、商品広告などを再度、見直していただきたい。
アメリカのECユーザーが日本の越境ECに求めることは、安全で安心して、安く良い商品を購入できることである。
その中でも重要なのが、「価格帯」であるようだ。 また、越境ECでは、物流にかかる日数がかかりすぎるという課題があがっている。
特に日本の場合は、カナダやメキシコと比べても時間がかかり、26%の商品は平均15日以上経過して消費者に配送されるという調査結果もある。
アメリカをターゲットした越境ECでは、アメリカにはない商品をより安く、より早くアメリカのユーザーに配送することが自社ブランド力を高めることとなるだろう。
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