EU(欧州連合27カ国)では、2021年7月1日より、非欧州ECに関して適応していた付加価値税(VAT)に関する一連の規則や指令の改正し、新たに輸入ワンストップショップ 「IOSS」を導入、実施した。
「IOSS」に登録すれば、輸入VATが免除されるため、通関はスムーズに短時間で対応することが可能となった。 今回はこの「IOSS(Import Onestop Shop)」について整理した。
海外消費者が、自国以外の国から商品を越境ECにおいて購入する場合、商品価格や種類に応じて、関税を支払うことになるが、その他に国ごとに定められた付加価値税(日本の消費税的なもの)も支払わなければならない。
EUの場合は、2021年7月1日以前は、22ユーロ(1€=137円で約3000円)未満の場合はVAT(付加価値税)は免除されていたが、法改正により、この免除がなくなった。
その代わりに新たに導入されたのが、輸入ワンストップショップ「IOSS(Import Onestop Shop)」 という新制度である。
「IOSS」とは、EUのVAT(付加価値税)申告、支払いを簡素化するための制度で、EU消費者が海外から輸入する150ユーロ(1€=137円で約20,000円)以下の商品に適応される。
越境EC事業者が、IOSS_ID番号を取得している場合、150ユーロ以下の商品に対してはEU各国のVAT課税は免除される。
また、IOSS_ID番号の取得は選択制であり、海外通販事業者は必ず取得しなければならないという義務はない。
IOSSはB2Cの販売の際に適応され、商品は非EUからEUへ発送されるものでなければならない。
また、出荷額は150ユーロ以下のもので、物品税の対象となる (通常はアルコールまたはタバコ製品)商品は対象外となっている。
IOSSはEU内の消費者に対する越境EC事業者を支援し、VAT(付加価値税)の徴収、申告、支払いを簡素化した制度である。
越境EC事業者がIOSSに登録されていない場合、EU消費者はVAT課税に加え、通常の輸送業者が請求する通関手数料も支払うことになる。
IOSSのメリットは、VAT(付加価値税)が免除され、代わって軽減税率の利用が可能となる。
さらに、IOSS_ID番号の記入があれば、通関に時間を要しない点、つまり、EU各国で異なるVAT申告が不要となり、ワンストップで申告が可能である。
また、越境EC事業者がIOSSを取得済の場合、EU消費者から商品購入時にVATを徴収することも可能となっている。
IOSSの登録にはEUを拠点とする事業所が必要となっている。
EUに拠点する事業所がない場合は、IOSS登録プラットフォームを介して該当するEUへの輸入品のVAT登録、及び決済を代行する仲介者を任命する必要がある。
通常、IOSSの申請・登録には専門の税務のコンサルティング会社や、グローバルな税理士法人に依頼する場合が多い。
EU消費者へ越境ECで商品を販売する場合、商品代金以外に送料、関税、付加価値税(VAT)の支払いをお願いすることになる。
だが、EUの場合、IOSSに登録したマーケットプレイスは「みなし供給者」と定義され、EU消費者に販売する場合の手続き費用等を削減できるようになっている。
逆に、IOSSに登録されていないマーケットプレイスの場合、EU消費者は商品を受け取る際にVAT額を請求されることとなる。
このVAT額に関しては、各国ごとに異なるので、最終的な請求額(送料、関税、VAT税率)などは、海外消費者が購入時に分かるように明示しておく必要がある。