2019年日本のEC市場 成長著しい部門はどこだった?

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経済産業省は昨年の国内EC市場を俯瞰する電子商取引(国内EC)に関する市場調査の結果を取りまとめた。
資料によると、2019年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、19兆3,609億円で、前年比7.65%の増加だった。
また、BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は353.0兆円と前年344.2兆円から2.5%の増加とこちらも拡大している。
さらに、CtoC-EC市場規模においては、1兆7,407億円の前年比9.5%の部門では最大の増加率となっている。
2019年、日本のEC市場はすべての部門において、前年から増加、拡大を続けている。
そして、新型コロナの影響で非対面販売による「EC」、「通販」へのニーズが高まりを見せている。
今回は、2019年のBtoC-EC市場規模において、どのカテゴリが最も拡大したのか、EC化率はどうだったかなど、「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査):経済産業省」の資料を引用し、まとめた。

日本のBtoC-EC市場規模

2019年のBtoC-EC市場規模は、19兆3,609億円で前年比7.65%増となっている。
EC化率は物販系分野の平均値であるが対前年比0.54ポイント増の6.76%であった。
経済産業省が区分する国内BtoC市場は、(1)物販系分野、(2)サービス系分野、(3)デジタル系分野となっている。
各分野別の市場規模は、(1)物販系分野は、10兆515億円、伸び率は8.09%増。
(2)サービス系分野では7兆1,672億円、伸び率は7.82%増。
(3)デジタル系分野では、2兆1,422億円、5.11%増という内容である。
伸び率、市場規模とも(1)の物販系分野が高い数値となっており、BtoC-ECに関しては、物販系分野が牽引していると言えるだろう。
それでは、さらに、各分野の内訳や伸び率など、詳細について見てみよう。

日本のEC市場規模


物販系分野のBtoC-EC市場規模

物販系分野の市場規模トップ5は大きい順に、(1)「衣類・服装雑貨等」の1兆9,100億円、(2)「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」の1兆8,239億円、(3)「食品、飲料、酒類」の1兆8,233億円、(4)「生活雑貨、家具、インテリア」の1兆7,428億円、(5)「書籍、映像・音楽ソフト」の1兆3,015億円の順となっている。
この中で2018年からの伸び率で最も大きかったのは、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の10.76%であった。
EC化率については、高い順に「事務用品・文房具」の41.75%がトップ、次に「書籍、映像・音楽ソフト」が34.18%、次に「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の32.75%。さらに「生活雑貨、家具、インテリア」の23.32%と続いている。
EC化率とはすべての商取引金額(商取引市場規模)に対するEC市場規模の割合のことを意味し、ECでの取引額が拡大すれば当然EC化率も増加する。
EC化率で最も低いのは、「自動車、自動二輪車、パーツ等」の2.88%、次は「食品、飲料、酒類」の2.89%である。

物販系EC市場規模

次に市場規模の大きい上位5つのカテゴリの内容ついてまとめた。

(1)「衣類、服装雑貨等」のEC市場規模

このカテゴリは、衣類(インナーウエア・アウターウエア)、服装雑貨(靴、鞄、宝飾品、アクセサリー)、子供服(ベビー服含む)、スポーツ用品といった製品群で構成される。
2019年の衣類、服装雑貨等のBtoC-ECの市場規模は1兆9,100億円で物販系分野では最大の市場規模、前年比では7.74%上昇し、EC化率は13.87%となっている。
アパレル関連商品は、実店舗で見て触れて、試着、採寸するなど、リアルで買う、いわば、食品に近いカテゴリであるが、EC化率は13.87%は確実に増加している。
これらは、ECテクノロジーによる企業の取り組みによるECで仮想による試着や着用感を確認できるサービスなどが現れ、ユーザーもECでの購入に抵抗がなくなってきている。さらに、顧客データを蓄積することで、AIを活用した商品提案など新しい施策によるものだろう。

(2)「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」のEC市場規模

このカテゴリは、EC専業の小売事業者、および家電量販店を中心にBtoC-EC市場が構成されている。
2019年は対前年比10.76%増の1兆8,239億円という結果となった。
2018年からの上昇率も10.76%増と高く、家電のネット購入が浸透している。
EC化率も32.75%と高く、要因としては食品のように、見て触って確認して買うというより、ネット検索で同等商品で低価格なものをネット比較検討しながら意思決定し、購入が可能な点が挙げられる。

(3)「食品、飲料、酒類」のEC市場規模

このカテゴリに入るのは、GMS等によるネットスーパーやEC販売に特化したネットスーパー、EC大手企業、飲料専門事業者、従来型通販事業者、菓子メーカー、酒類販売業、百貨店に加え、日用品メーカー等のEC販売である。
「食品、飲料、酒類」は物販系分野で、実店舗、ECなど含め、商取引市場規模で最も大きいカテゴリであり、その規模は2019年は60兆円と推定されている。
分母が60兆円と大きいため、このカテゴリはEC化率は2.89%と低くなっている。
2019年の「食品、飲料、酒類」は1兆8,233億円、増加率は7.77%であった。
ネットスーパーはコスト高で利益が出にくいと、事業参入においては敬遠されていたカテゴリであったが、今年のコロナ禍において、巣ごもり消費による需要が加速した。
JCBの統計を見ても、7月後半の飲食料関連のEC需要は、コロナ感染前の1月後半を1000とした場合と比較しても、140%の増加率となっている。

(4)「生活雑貨、家具、インテリア」のEC市場規模

このカテゴリーは、家事雑貨(食器台所用品等)、家事用消耗品(洗剤やティッシュ等)、一般家具、インテリア(カーテン等)、寝具類により構成される。
2019年のBtoC-ECの市場規模は1兆7,428億円となり、前年比で8.36%の増加となっている。
このカテゴリのBtoC-ECの売上の内訳は、70%が家事雑貨、家事用消耗品であり、残りの30%が一般家具、インテリア、寝具類である。
2019年の生活雑貨は、購入頻度の高い消耗品の定期購入(サブスクリプション)の利用の広がりに特徴である。
また、家具、インテリアは、ECサイト上で拡張現実(AR)によるシミュレーション機能やAIを活用しECサイト上で消費者の好みに沿った商品提案など、テクノロジーの進化による拡大が大きいとされている。今後はこの分野のEC市場の拡大が期待される。

(5)「書籍、映像・音楽ソフト」のEC市場規模

このカテゴリーは書籍、および映像ソフト・音楽ソフト(オンラインコンテンツ有料配信を除く)からなり、2019年のBtoC-ECの市場規模は1兆3,015億円という推計結果となっている。
2018年から7.83%上昇し、EC化率も34.18%と高い数値である。
EC化率においては、このカテゴリが2018年の32.28%から2019年は34.18%ともっとも上昇している。
書籍など紙媒体出版市場は、マイナス成長になっているが、電子書籍は拡大傾向にあるようだ。


サービス系分野のBtoC-EC市場規模

サービス系分野で最もBtoC-ECの市場規模が大きかったのは、「旅行サービス」の市場規模は3兆8,971億円であり、前年比で4.80%の伸びとなっている。
ついで、「飲食サービス」の7,290億円で、前年比14.34%。さらに「理美容サービス」の6,212億円で、前年比26.06%と続いている。
その他、「金融サービス」は5,911億円で前年からマイナス1.90%、チケット販売が5,583億円で前年比14.25%の増となっている。
前年からの伸び率でもっとも高かったのは、「理美容サービス」の26.06%で、理美容サービスのヘアサロン、ネイルサロン、エステサロン等へのネット予約の拡大が示されている。
これは、「理美容」のネット予約できる実店舗が増加したためである。また、理美容室の予約においては、はじめて、ネット予約が電話予約を超えたとも記されている。

サービス系EC市場規模

ここでは、(1)「旅行サービス」と(2)「飲食サービス」について見てみよう。

(1)「旅行サービス」のEC市場規模

サービス系BtoC-EC分野の中で、最も市場規模が大きいのは「旅行サービス」である。
ECの市場規模は3兆8,971億円となり、前年比で4.80%の伸びとなった。
「旅行サービス」カテゴリー(3兆8,971億円)は、国内BtoC-EC分野におけるもっと大きい市場規模である。
このカテゴリはインターネットによる旅行代理店への申し込み、航空機利用(国内便・国際便)、鉄道(新幹線・その他在来線)、バス利用、ホテル・旅館の宿泊費によって構成されている。
「旅行サービス」においては、インターネット予約が進んでおり、その販売比率も増加傾向にある。
この市場を牽引しているのは、インターネット専業の旅行代理店であり、最近ではエクスペディアやブッキングドットコムといった外資系予約サイトなども参入し、競争は激化している。

(2)「飲食サービス」のEC市場規模

飲食サービスは飲食店舗への事前のネット予約による売り上げが対象となっている。
このカテゴリの2019年のネット予約は7,290億円と推定され、14.34%の成長率となっている。拡大率の推移も変わらず拡大している。
このカテゴリの市場拡大には、実店舗のネット開設の増加が鍵である。
2019年の実店舗のネット化は1割程度で、少ない状況となっている。
だが、今年はネット予約でのデリバリーサービスが、このコロナ禍の影響を受け拡大している。
Uber Eats、楽天デリマ、出前館などのコロナ禍で大手デリバリーサービスが登場し、外食をせずにデリバリーをして、自宅で食事をする人が増加。
このニューノーマルな時代において「飲食サービス」のEC市場は大きく飛躍しそうである。


デジタル分野のBtoC-EC市場規模

デジタル系分野で最もBtoC-ECの市場規模が大きいのは、オンラインゲームの1兆3,914億円である。だが、2018年と比べると伸び率は4.00%の減少となっている。
次いで、電子出版の3,355億円で前年比20.58%の増加。さらに、有料動画配信の2,404億円、こちらの増加率はBtoC-EC市場では最も高い上昇率、62.76%となっている。
さらに、有料音楽配信の706億円、前年比9.56%増であった。

デジタル系EC市場規模

次に(1)「オンラインゲーム」 (2)「電子出版」(3)「有料動画配信」の内容を見ていこう。

(1)「オンラインゲーム」のEC市場規模

デジタル系で60%のシェアを占める「オンラインゲーム」については、2019年の市場規模は1兆3,914億円と推定され、前年比で4.0%の減少となった。
この減少の要因は、ゲームユーザーの増加が鈍化したこと、さらに、海外からの直接配信の増加などとしている。
オンラインゲームは、現在は少し成長が鈍化しているが、ヒット作の有無や、日本のオンラインゲームの海外市場の獲得、さらに「eスポーツ」によるイベント開催など、まだまだ、伸びしろはあるだろう。

(2)「電子出版」のEC市場規模

このカテゴリ「電子出版」には、既に紙媒体として出版されている書籍の電子化とはじめらデジタルコンテンツで電子書籍化する出版が含まれる。
2019年の市場規模は3,355億円と伸び率も前年比で20.58%増加した。
2019年は市場規模が大きく伸長したが、この要因としては社会問題化していた海賊サイトの取り締まりなどの対策が実施されたことによるものである。
これにより、正規の電子書籍マーケットの拡大障壁がなくなったためだ。
市場シェアではコミック漫画が80%も占めており、このカテゴリが今後のどこまで拡大するかが鍵となる。
希望的観測をするなら、現在、ブロックチェーン技術を利用した電子書籍の取引が開始されていることや、ブロックチェーン技術を活用した電子書籍の2次流通(中古売買)についても検討がなされており、アーティストの音楽配信と同様、新しいテクノロジーによるこの業界の活性化に期待したい。

(3)「有料動画配信」のEC市場規模

今後ますます、利用が高まるだろうカテゴリは、この「有料動画配信」である。
2019年の市場規模は2,404億円となっており、前年比で62.76%の成長率で大きく拡大した。
有料動画配信の種類には、定額制による視聴サービスのSVOD(Subscription Video On-Demand)形式、都度課金制のTVOD(Transaction Video On-Demand)形式、さらに、ダウンロード型視聴サービスのEST(Electronical Sell Through)形式の3つの視聴有料形態がある。
人気があるのは、定額制による視聴サービスである。近年の若者のスマートフォンによる視聴の定着化が進んでいる。
有料動画は、映画、ドラマ、アニメ、コンサートなどコンテンツのラインナップが重要である。
最近では、有料動画配信サービス企業製作による独自コンテンツのドラマなどにも人気が高まっているようだ。
2020年はコロナ禍の影響で、このコンテンツ配信による視聴が大きく伸びている。
JCBの資料によるとコンテンツ配信はコロナ自粛時の4月前半頃から大きく伸びはじめ、自粛解除前5月前半がピークで、1月後半を100とすると、130%伸長した。その後、若干低下を見せたが、7月後半においても125%と極端に下降することはない。


まとめ

今回は各カテゴリーでのBtoC-EC市場規模を「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」により整理した。
分野別でもっとも大きい市場は、物販系分野市場で10兆515億円。カテゴリ別に見る、最も大きな市場は、サービス系分野の「旅行サービス」で3兆8,971億円である。
また、BtoC-EC物販系分野でEC化率が最も高いのは「事務用品、文房具」の41.75%である。そして、2018年からの成長率で最大の伸びを示したのは、「有料動画配信サービス」の62.76%増加だった。
今後も、この「有料動画配信サービス」は注視すべきカテゴリと言えるだろう。
2020年もあと4ヶ月となるが、コロナ禍による消費行動の「EC」「通販」へのシフト化が顕著となっている。
こうした背景を受け、EC・通販事業者の約半数は、今後も「さらにニーズが高まる(49.3%)」という意識を持っており、コロナ禍は、「EC」や「キャッシュレス決済」への大きな転換期となるだろう。

出典:経済産業省の「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)

 

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