最近、特にEコマースではチャットボットによるサービスを提供しようという試みが増えている。EC業界では通販サイト「ロハコ」に導入された顧客サポートチャットボット”マナミさん”が有名だ。
また、Appleが提供するiphoneにもある呼びかけ質問に答えてくれたり、会話を楽しむAI機能の一つが、チャットボットと呼ばれるものだ。
今回はEコマースとチャットボットの動向について見ていこう。
チャットボットとは、人間との自然言語でコミュニケーションを行うコンピュータプログラムのことであり、”ボット”とはロボットの略称である。
チャットボットは人がコンピュータを操作し、行っていた一つ一つの処理を人に変わって自動的に行ってくれるプログラムで、処理した内容を言語表示で会話形式で返してくれるシステムである。
”ボット”という言葉自体は、最近出てきたものではなく、IRCと呼ばれる自動会話=サーバを介してクライアント同士が文章のみで会話するシステムが始まりである。
チャットボットは主にモバイルディバイス上で使用され、主なものとしてはFacebook Messanger,LINE “Messaging ,WeChatなどが有名でこれらは、まるで、人と話しているかのように情報収集を行うことができるシステムである。
システムは通常、機械のアルゴリズムによるものだが、場合によってはAIによる高度な会話も実現可能である。
現在ではいろいろなチャットボットサービスがある。面白いニュースがあったら知らせてくれるニュースボット、スケジュールを管理するスケジュールボット、日用品や食料品の注文を手伝ってくれるショッピングボットなど、対話形式で目的とする内容に、効率よく、短時間に到達できることから、今後も多くのチャットボットによるサービスがリリースされると思われる。次に有名な3つのチャットボットプラットフォームを見ていこう。
チャットボットが知られるようになったのは、2016年4月にリリースされた、Facebook Messangerを利用したチャットボットプラットフォームである。現在ではMessanger以外にも、LINE, Skype, Kik, Telegram等が同様のボットを発表している。
Facebook公式のHPでは、Facebook Messengerボットを導入したいと考える事業者へ向けて実践的なガイドラインがある。それによると、ユーザーにボットを見つけてもらうことや会話のカスタマイズ、顧客管理など説明されている。企業はMessengerボットを利用してメッセンジャー上にチャットボットを設置すると、ユーザーはそのチャットボットから、企業のサービスを利用できるようになる。
下はCNNの事例だが、CNNボットは「何を読むか?」でカテゴリーを選ぶことで、記事一覧とその要約を伝えてくれ、さらに、記事を選ぶと元サイトに誘導されるなど情報収集を助けてくれる。
昨年9月にLINEは “Messaging API”の提供を開始した。このMessaging APIはPush API(ボット→ユーザーへ:任意のタイミングでの発信)とReply API(ボット⇔ユーザーの双方向:ユーザーへの応答メッセージの発信)をカスタマイズすることでチャットボットを構築することができるプラットフォームである。1対1でも複数人でのトークやグループトークにも対応できる。
https://business.line.me/ja/services/bot
チャットボットを市場に最初に創出したのは、MicrosoftでもFacebookでもない、中国の大手IT企業テンセント社である。WeChatは7億人も月間利用者がいる中国最大シェアを誇るSNSで、WeChatを介して、チャットの送受信や無料電話などの通信機能、マッチング機能「シェイク」や決済機能など、アプリ内で行うことができる。
公式アカウントの取得もチャットボットで自然言語対話を通して行うなど、Wechatは中国人にとってウェブサービスの玄関口なのである。
日本ではまだ、ECサイトで対話形式で買い物ができるという、ECアプリはない。有名なものはオフィス用品販売で知られるアスクルのECサイト「LOHACO」の人工知能チャットボット「マナミさん」である。
「マナミさん」は24時間対応できるチャット形式で問い合わせできるチャット接客サービスである。このような人工知能チャットボットによる接客を体験した人のアンケートによると、88.7%以上の人がECサイトの満足度が高まったとしている。
https://lohaco.jp/support/index.html?sc_e=zm_palj_aas_blh_cleg_dps_del
日本経済新聞の報道によると、大手衣料品店「ユニクロ」は人口知能による接客サービスの導入に力を入れている。
「ロハコ」のようなお問い合わせ内容に対するチャットボットではなく、ユーザーの好みや要望に対し人工知能が推測し、品ぞろえの中から最適な商品を薦めるというもので、具体的にはユーザーとの会話の中から、例えば、「寒い」といキーワードがあれば、そのキーワードからセーターなどユーザーの要望にあった商品を推測し提案するというものだ。
参考:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO13076690X10C17A2TI5000/
サンリオピューロランドでは、オンラインショップからチケット購入すると、サンリオのLINE 公式アカウントから電子チケットが届くというもので、チケット購入時にはハローキティからお礼のメッセージが届いたり、入館後も館内案内やグッズ紹介などをLINEのチャットボットを介し、双方向コミュニケーションを実現するというものだ。
チケット購入をチャットボットで行うことで、利用者との親密性の高いコミュニケーションを可能にした。
参考:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atclact/activer/nkpr/RSP435669_07022017/
AIを利用したチャットボットEコマースは、対話型ネットショッピングの実現である。
ユーザーは電話や電子メールなどより気軽にチャット質問ができたり、いちいち欲しいものを検索しなくても、チャットボットに’質問するだけで、お薦め商品を提案されたり、目的のものを短時間に購入できるメリットがある。また、返信も早いうえに、チャット履歴も残るためトラブルも少なくなる。
チャットボットEコマースでは実店舗での対面販売に近い感覚でのコミュニケーションが可能になり、顧客満足や成約率の向上が期待できる。
現状では、まだ、ユーザーが本当に使いたいと思うチャットボットの利用シーンは少なく、現行のアプリやWEBサービスをやめて、チャットボットがすぐに普及することはないが、将来的には、実店舗に近いショッピンを楽しめるEコマースは、比較的早い段階で普及してゆく可能性は高いと思われる。
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