5月28日、電通が中国への越境EC事業に参入するというニュースが伝えられた。
電通は、中国のネット販売会社と提携し、中国進出を行いたい日本企業を対象に商品の出品、ブランド構築、在庫管理などの業務支援を行うというものだ。
今、中国では越境ECを活用し、ジャパンブランド商品の購入が盛んである。5月に発表された、経済産業省の「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」によると、2018年、中国消費者が越境ECを利用し日本から商品を購入した額は、1兆5,345億円、前年比18.2%の拡大となっている。この拡大傾向は引き続き続くものと予想されている。
今回は、この「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」のデータから中国越境ECの現況や中国と日本間の越境EC市場にスポットをあてまとめた。
2018年は2つの大きな出来事が越境ECに変化をもたらした。
ひとつは「中華人民共和国電子商務法(中国EC法)」及び、関連行政令の公布であり、二つ目は中国の輸入拡大政策による越境EC市場規模の拡大である。
「中華人民共和国電子商務法(中国EC法)」は2019年1月より発効され、中国の様々な政策による修正点などをまとめると下記内容の通りとなる。
中国における2018年の越境EC市場規模は、6兆2,938億円、対前年比変化率は5.9%増であり、2019年以降も拡大傾向にある。2021年には8兆1,571億円(129%増)と予測されている。
その背景には、インターネット人口やインターネット浸透率拡大に伴う越境EC市場へのインパクトが考えられる。
中国消費者が海外の商品を購入する方法としては、3つの方法がある。
ひとつは、中国国内のECプラットフォームを利用して海外商品を購入する方法(保税区活用型)。
二つ目は、中国国外のWEBサイトから直接購入する方法(直送モデル型)。
三つ目は、中国国内外の個人バイヤーを通して海外商品を購入するという方法である(個人代理購入型)。
そして、中国消費者が一番利用しているのが、中国国内のECプラットフォームから購入する方法である。
利用率が高いプラットフォームは、2018年の上半期時点ではトップは26.2%のKaola.com、続いてTmallの22.4%、さらに、JD Worldwideの13.4%などとなっている。
中国の越境ECの利用頻度について調査した内容によると、「月に1~2 回」が43.1%で最も多く、次に「半年に1~2 回」(36.6%)、「年に1~2 回」(13.5%)と続いている。
月に1から2回も海外の商品をから購入している内容は、中国消費者の越境ECサイトの利用率の高さが理解できる。現に、中国人女性の美容品にかける支出は日本の2倍以上という調査報告(下記項目で詳細を説明)もある。
中国消費者がどれだけ日本の商品を購入してるのだろうか。
経済産業省の資料によると、2017年は中国消費者は日本から1兆2,978億円、2018年は1兆5,345億円、前年比18.2%の増である。
国別構成比は、日本からの越境ECによる商品仕入額は、全体の約25.1%を占めておりトップである。2位はアメリカの16.4%、3位は韓国の14.7%となっている。
越境ECを利用して日本の商品を購入の有無を調査した結果によると、65.3%が「越境ECで日本輸入品の購入経験の有り」と回答しており、「日本からの越境EC」を行うことの人気を裏付ける回答となっている。
そして、「中国人が越境ECサイトで直近1年以内に購入した日本製品」について調査した結果が下のグラフである。
トップは「基礎化粧品」の46.9%で、次に「メイクアップ化粧品」の46.1%、3位に「食品」の43.5%、「マンガ・アニメ」43.2%、「フェイスケア用品」37.8%と続いている。
ヴァリューズが実施した調査によると、中国人女性の化粧品・サプリメント購入金額は日本人女性の2倍以上という調査結果がある。
30〜35歳未満の女性が1ヶ月あたりの化粧品の平均金額を見ると、日本人女性の平均は5,218円に対して、中国の女性の平均は16,648円と3倍以上である。
化粧品など美容関連商品は中国市場では出品すれば売れると言えるだろう。
中国消費者が越境ECで日本から商品を購入する際に重視する項目を調査した内容によると、2018年12月実施の調査(回答者数784人)では、第1位が「品質」の69.6%でトップ。
次に「ブランド」の58.6%、「安全性」の56.8%、「価格」の54.5%、「デザイン」40.4%と続いている。
越境ECサイトではジャパンブランドのクォリティの高さをしっかりと中国語でPRする必要がある。
日本製品を購入する理由として、「中国内では店頭で販売されていない製品だから」が69.1%と最多となっており、前年より24.7ポイント上昇している。
また、「注文してから商品が届くまでの時間が短いから」が45.0%、「ニセモノではないから」という回答も40.4%と前年より高くなっている。
越境ECの市場拡大に伴い、越境ECに参入する企業や、越境ECで販路を拡大する事業者が増加している。今回は割愛したが、本資料には中国に進出するうえでの主要課題なども記されていた。
中国消費者の越境ECの利用率は高く、その中でもジャパンブランドに対する信頼度は高い。そして、日本の商品を何故、求めるのかについては、価格以上に商品の「品質」、「ブランド」、「安全性」が優位であることが分かった。
中国消費者への販売戦略はこれらを理解し、商品プロモーションを展開することが重要である。
今回のブログは下記アドレスよりデータをダウンロードし、図などを作成した。
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002.html