本日は、中国発の越境ECサイト、Temuについてです。
現在、米国を中心に世界主要な国で販路を拡大しており、日本でも昨年からシェアを拡大させています。今、注目のTemuについて解説します。
Temu(ティームー)は、中国のPDDホールディングス(拼多多/ピンドゥオドゥオ)が運営する越境ECサイトです。
創業者は中国人の黄峥(コリン・ファン)です。浙江大学でコンピュータサイエンスを専攻し、その後、米国ウィスコンシン大学マディソン校で修士号を取得しています。やはり米国で学んだ人は、自国に戻って起業し、その後は世界へと事業を展開していくのは、一つの成功モデルと言えるかもしれませんね。
キャリアの始まりは、Google中国です。技術部門のリーダーとして活躍しました。その後、Googleを退職し、複数のスタートアップを立ち上げました。
2015年に現在の会社を創業し、わずか数年で、中国の主要なEコマースプラットフォームの一つに成長しました。2018年にはNASDAQに上場し、時価総額は急速に拡大しました。
2022年9月にTemuを立ち上げ、その後は世界の主要な国でサービスを開始し、家電、アパレル、化粧品、日用品など幅広い商品を取り扱っています。
主に10代後半から30代前半の若い世代がメインユーザーとなっています。特にZ世代やミレニアル世代に人気があります。
Temuは特に低価格で商品を提供することを特徴としており、販売業者が設定した価格に補助金を提供することで、競合他社よりも安い価格を実現しています。
Temuの2023年の売上高は、約1.9兆円(868億元)でした。
非常に安い価格設定で商品を提供しており、特に物価高や経済的不確実性の中で消費者に強く訴求しています。
Temuのビジネスモデルは、「フルホスティングモデル」と呼ばれる新しいやり方です。
生産工場と直接取引を行うことで、驚異的な低価格を実現しています。
フルホスティングモデル(Full Hosting Model)とは、EC企業が商品販売に関するすべてのプロセスを一括して管理・運営するビジネスモデルです。
メーカーは製品をEC企業に納入するだけで、広告宣伝、物流、販売、顧客対応までをすべてTemuが行います。
このモデルにより、メーカーは製品の製造に専念でき、Temuは販売からアフターサービスまでを一貫して提供することができます。
結果として、サプライチェーンが統合され、商品が生産者から直接消費者に届く効率的なシステムが実現します。
2023年のTemuの米国でのマーケティング支出は約30億ドル(約4500億円)と推定されています。
これを365日で割ると、1日あたりの平均広告費は12.2億円となります。
ただし、これは年間の平均値であり、実際の日々の広告費は変動している可能性が高いです。
例えば、スーパーボウルの広告では1回あたり700万ドル(約10億5000万円)を支払っており、特定の日や期間には平均を大きく上回る広告費を投じていると考えられます。
Temuは非常に低価格の商品を提供することで知られており、これが日本市場における価格競争を一層激化させる可能性があります。
既存の小売業者やECプラットフォームは、Temuの価格に対抗するために価格を引き下げる必要が出るかもしれません。
Temuの成功により、他の海外ECプラットフォームの日本進出が加速する可能性があります。そうなった場合、日本の中小企業のECサイトにも影響が確実にでていきます。
これは日本の消費者にとって選択肢の増加を意味しますが、国内企業にとっては競争が激化してしまいます。
Temuで販売されている商品の大半は、無名または独自ブランドの製品です。
Temuで販売されている有名ブランドの商品については、偽物である可能性が高いといわれていますが、そもそも価格が非常に安いことを考えると、たとえ偽物だとしても、それにクレームをつける顧客はいないのでは?と考えてよいと思います。
正規のブランド商品を扱っているという情報はネットを徘徊する限りでは、そうした口コミはないようです。
基本的には、非ブランド商品が中心であるため、商品の品質にばらつきがあることと思われます。
ネットやソーシャルメディア、Temuサイト内のレビューを参照する限りでは、多くのユーザーがTemuの低価格に満足しているように思われます。特に生活用品やシンプルなアクセサリーなどは非常に安価で提供されています。
一定の注文金額を超えると送料無料で、90日以内の返品が可能な点も評価されていますね。
Temuは各国で拡大をしていますが、そのマーケティング戦略を4つのポイントで解説します。
1つ目は、私たち中小企業でも利用するオンライン広告です。
Temuは基本的に、Meta、Googleなどのプラットフォームに広告を投資しています。2023年だけで約20億ドルと大規模なキャンペーンを展開しました。
2つ目は、イベント広告です。
アメリカで最も視聴されるテレビイベント、スーパーボウルの高額CMも購入し、1500万ドル以上の景品やクーポンを提供しています。
3つ目は、インフルエンサーマーケティングです。
Temuは、InstagramやTikTokなどのSNSを活用したインフルエンサーマーケティングも積極的に展開しています。
特徴としては、マイクロインフルエンサーを中心に起用し、幅広い層へのリーチを図っています。
4つ目は、ゲーミフィケーションマーケティングです。
スマートフォンアプリのインストール戦略も日本の会社とは全く異なる戦略をとっています。
それが、ゲーミフィケーションによるアプリのインストールです。
アプリ内にゲーム要素を取り入れ、ゲームを通じて割引やクーポンを獲得できる仕組みです。
これは20代などの若い世代に、Temuのアプリインストールを普及させる戦略です。
最後にTemuの将来について予測してみましょう。
Temuの根幹である、中間業者を排除し、直接生産工場と取引することで低価格を実現する方針は今後も継続される見込みです。
先進国を中心にMeta、Google広告、マイクロインフルエンサーを中心に拡大志向ですが、今後数年以内に同じ戦略で30ヶ国、40ヶ国と拡大をすると思われます。
以上、越境ECにて世界を席巻している中国発のEコマース Temu について解説しました。
タグ: temu, Z世代, フルホスティングモデル, マイクロインフルエンサー, 低価格, 越境EC