中国国家統計局が4月16日に発表した速報によると、中国の2021年1~3月期の実質GDP成長率は、前年同期比で18.3%増となり、前期比では0.6%増加した。
さらに、新型コロナウイルスの抑え込みに成功し、ワクチンの接種範囲も拡大することで、人出は新型コロナウイルス流行前とほぼ変わらない水準まで回復している。
今後も、中国政府が行ってきた活動制限緩和が続けば、積み上がった貯蓄は、さらに消費に向かうと見られる。
そして、6月に入り、中国では今年の中国EC・越境ECの動向を占う初夏キャンペーン・セール「618商戦」が開催され、日本や欧米からの多くの参加が行われている。
今回は、6月の公表された、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「中国EC市場と活用方法」から、最新の中国ECの市場状況、越境ECプラットフォーム、さらに、現在、中国政府が推進している越境EC優遇内容などを取り上げる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の「中国EC市場と活用方法(2021年6月)」によると、中国は2020年EC小売額は約2兆2,970億ドル(約252兆円)に達し、世界最大のEC市場となっている。
次にアメリカの7,900億ドル(約87兆円)と、中国EC市場はアメリカの3倍の市場である。また、2021年には前年比21%の成長が予想されるなど、中国のEC市場は引き続き急速拡大すると思われる。
これらは、eMarketer社予測値に過ぎないが、中国国家統計局などの発表によると、2020年の中国のEC小売額は前年比10.6%増の11兆7,601億元(約188兆1,616億円)円に達し、小売総額に占めるEC小売額シェアは30%まで拡大した。
中国のEC市場を調査する会社iiMedia Researchが発表したレポート「2021年世界および中国の越境EC運用データ典型企業分析研究報告」によれば、2020年の越境EC(B2C)の取引額は10億3,000万元(約175億1,000万円)となっている。
中国越境ECの2021年プラットフォームシェア(予測値)では、アリババ傘下の「天猫国際(Tmall Global)」が26.7%でトップである。
次に、「考拉海購 (コアラ/Kaola)」(2019年9月アリババグループが買収)が22.4%。(Tmall GlobalとKaolaで市場の5割弱も占めている。)
さらに、京東国際(JD Worldwide)の11.3%、蘇寧国際の11.2%などの順となっている。
天猫国際(Tmall Global)は中国最大の越境ECプラットフォームである。
Tmall Globalは海外のブランドが中国マーケットに第一歩を踏み出す際の第一選択肢として、7年連続越境ECマーケットのトップの座を占めている。
このTmall Globalへの出店には厳しい出店基準を設けており、基準を満たすことで偽物を排除し、中国消費者に安心と信頼を提供している。
中国消費者は、安全と品質にこだわる「中間所得層」や、ライフスタイルやトレンドにこだわる30歳以下の若い消費者が中心である。
最近では、高級ブランド品リサイクル品を扱う複数の日本のショップも正式加入した。
考拉海購(コアラ/Kaola)は、2019年9月6日、アリババグループが約20億ドル(約2,200億円)で買収した越境ECプラットフォームである。
「Kaola」は独立ブランドとして継続運営されており、シェアは22.4%と拡大している。単純計算で、Tmall GlobalとKaolaでアリババグループの越境ECシェアは49.1%となる。
特徴は、越境EC保税倉庫面積は中国最大規模となっており、そのため、中国各地に保税倉庫を持っている点である。多くの保税倉庫を有しているため、配送スピードが速いことが大きな利点である。
Kaola利用者は、高い購買力を持つ19~35歳の女性であり、全体の約80%を占めている。
中国越境ECプラットフォームのシェア3位の「京東全球(JD Worldwide)」は配送スピード、商品包装、アフターサービス、正規商品信用度、商品忠実信用度など各方面で消費者の満足度・業界第一位を獲得している。特にデジタル製品・家電の売上が高い。
JD Worldwideの強みは、独自の物流ネットワークによる配送スピードの速さである。
また、JD Worldwideは正規品を確保するために、「原産地直接買付け」方式をとっており、日本、韓国、アメリカ、フランス、タイ等に現地事務所を設立し、現地サプライヤーと直接連結することで、模造商品の根絶に努めている。
中国向け越境ECでの日本製品の売れ筋商品は、コロナ封じ込めに早くから成功していたため、中国ではメイクアップ・美容関連商品は相変わらず好調が続いた。
3月18日、商務部等の6部門の連名で「越境EC小売輸入試行の拡大、監督管理の厳格実施に関する通知」が公布された。
この通知は、越境EC小売輸入に対する優遇措置の試行対象地域がこれまでの87都市・地域から、自由貿易試験区、越境EC総合試験区、総合保税区、輸入貿易促進創新示範区、保税物流センター(B型)が所在するすべての都市・区域まで拡大するというものである。
また、越境ECで保税輸入モデルから輸入される商品については、個人利用商品として監督されるため、商品に関連する”輸入許可証書や登録を不要”とする優遇措置が実施される。
さらに、中国では消費者が越境ECで商品を購入する場合、関税が「0%」であり、輸入商品に対する増値税と消費税は通常の70%となっいる。
越境EC輸入税の税率の低さは越境ECを利用して商品購入する際の大きなメリットとなっている。
また、中国消費者が越境ECで利用できる上限額もアップしている。
これまで、越境EC購入上限額は1人1回あたり2,000人民元(約32,000円)だったが、1回あたり5,000元(約80,000円)にまで引き上げられた。
よって、年間購入上限額も、これまで20,000元(約320,000円)だったものが、26,000元(約416,000円)まで引き上げられている。
中国では越境ECでの個人輸入を優遇することで市場は大きく成長しており、越境ECで海外販路を広げるなら、中国での展開が不可欠な時代と言えるだろう。
「618商戦」は、中国の初夏の大型セールとなっており、毎年6月1~18日に開催される。現在は予約販売中で、6月18日がセール最大の山場となっている。
2020年は、大量のクーポンの発行とライブコマースで大きな盛り上がりを見せ、「618」期間中の全GMV(流通取引総額)は、前年比43.78%増の日本円で約8兆円まで伸長した。
「618商戦」は国外からの参加ブランドは欧米が主流でとなっており、昨年の参加した海外ブランドは欧米企業を中心に92か国・地域から、約2万5000ブランドとなっている。
日本から参加で、今回で4回目のとなるラオックスは、長引く海外渡航制限もあり、今年は日本酒やアニメコンテンツ商品といった日本文化を楽しめる商品がトレンドとなるだろうと予測している。
中国は完全にコロナが収束し、今後はリバウンド消費が高まるだろう。その中で、越境ECによる高品質な海外製品の購入欲求も高まりを見せるだろう。
しかし、中国は「安かろう、悪かろう」の製造から、高品質を目指すようなものづくりに変化しつつあることも押さえておく必要がある。これは、優れたITテクノロジーによる、産業構造の進展である。
中国消費者が自国の高品質な製品を安く買うことができれば、爆買いなど必要なく、越境ECで購入する必要もなくなるだろう。
そうなったとき、日本から購入する商品は、今売れ筋商品となっているメイクアップ・美容商品ではなく、アニメキャラクターなど日本文化を楽しめるオリジナル商品になるだろう。
参考: