越境ECを始めると、私は法人企業の勘違いを是正する必要があると思っています。それは国内ECで成長してきたプロセスは全く通用しないということです。まず、越境ECやインバウンドでマーケティングを考える前に日本のITの巨人たちが行っていることを確認しておく必要があると思います。
例えば楽天・Yahooショッピング・amazonの3モールで年商50億円ほど企業があったとします。年商50億を作ったのはこの企業ではなく、この企業ページに顧客を送客した楽天・Yahooショッピング・amazonのマーケティング戦略ありきで年商50億円なのです。その後、モールで成長を実感した企業は例外なく自社サイトの立ち上げに挑戦しますが、モール売上と比べて売上の1割すら作ることが困難なことに直面するはずです。なぜなら自らの戦略で市場から顧客を創造し、顧客に価値あるメッセージを表現したことがないからです。モールが顧客を送客しているこの壁から抜けられない限り、自社サイトをやっても、実は越境ECサイトをやっても売上を作ることは極めて難しいと言えます。
しかし、国内ECで成長し売上の大部分を作ってきた経営者や担当者にもプライドがあります。このプライドが仇となるのが越境ECだと思っています。自社でモールで行っていたような顧客創造するということが、よくわからないのです。越境ECは自社サイトそのものですから、モールの戦略ではなく、市場から顧客を創造し、顧客に価値のあるメッセージを表現する必要があります。
越境ECでamazon.comやeBayで年商10億円を作ってきた企業も同様です。amazonとeBayのマーケティング戦略にありきで売上を作ってきたのであって、自分たちがその市場を創造したのではないのです。つまり国内ECで年商50億あっても、越境ECの市場開拓ともなればゼロからのスタートになります。
では、モール依存せずにどうやって市場から顧客創造し、モールの戦略に依存しない自社100%の顧客にアクセスできるかということになりますが、結論から言えば amazon や eBayがやっていることと同じことをやる ということになります。
ただ、中小企業にしろ大企業にしろ資金も人も限られていますし、そもそもそんなITの巨人たちが行っていたマーケティング戦略を自分たちが到底できるわけではないと思われがちです。実は、無理そうに思うこのマーケティング戦略ですが、これは100%中小企業でも実現可能なのです。
Amazon ebay 楽天 Yahooショッピング 今は豊富な資金力を使ってテレビなどのマス媒体から大規模に宣伝をしていますが、現在もネット広告もやっていますしSNSやメールマガジンも動画広告も行っています。中小企業にできるのはまさにここ部分であるネット広告・SNS・メールマガジン・動画広告の分野です。特に効果が期待できるのがネット広告です。
そもそも論として私が起業した頃のネット広告はキーワードの組み合わせによる広告が主でした。マーケター自身がキーワードAとキーワードBの組み合わせ「キーワードA キーワードB」のように様々なツールを活用してキーワードの組み合わせを考える必要がありました。
また、広告についてもキーワードの組み合わせに応じた広告を、これもマーケターの「センス」で考える必要があり、それがA/Bテストなどによって改善されていくというのが一般的です。バナー広告についても同様で、広告クリエイティブもマーケターが考え、A/Bテストなどによって改善されていく形です。
市場での広告屋さんは基本この考え方です。
つまり、キーワード広告にしろバナー広告にしろ、最初にマーケターの「センス」ありきで、その後は蓄積されたデータに基づき「サイエンス」しながら改善を模索していくというものでした。広告代理店が行うのは後者の方、蓄積されたデータに基づきサイエンスする方が得意であって、商品そものを訴求してく最初のキャッチーなコピーが決まらないと分析のしようがありません。
で、何が言いたいかというと、キーワードと広告クリエイティブを自ら決めなければスタートできない広告のやり方だと、担当したマーケターのセンスに大きくビジネスは左右されることになります。これが自社サイトが成長できない大きな要因だと私は考えています。自社サイトを立ち上げキーワード広告で市場開拓するのは一見あたりまえのようにGoogleも宣伝していますが、科学的でないのでこれはギャンブルに近いのではないでしょうか。
従来のやり方で自社サイトがうまくいったのは、自社サイトの機能や見せ方ではなく、広告により集客をしたが、商品と顧客のマッチング精度が悪かった、それを実行した広告代理店(または経営者)のマーケティングのセンスに大部分が依存しており、それが科学的でなく、マーケターの主観(センス)ですべての広告ロジックを形成していたがために、検証されることもなく、特定の会議室ですべてがセンスによって決まっていき、気づいた時には「社長、やっぱり難しいですね、、、。」で終わってしまったというのが自社サイトが本丸の収益の柱とならなかった歴史だと思います。
それの潮目が変わったのが2012年ごろに開始されたGoogleショッピング広告です。
今までのマーケターの「センス」によって広告成果の良し悪しだったものが、マーケターが広告文もクリエイティブも考える必要が完全になくなり、商品データベースをCSV形式で登録するだけでGoogleが集めた膨大なデータと人工知能によって商品と顧客をマッチングさせてくれるようになったのです。しかも、そのやり方の方が今までの広告コストの1/10で運用までできるようになっていますし、広告の費用対効果の指標であるROASもセンス関係なしに正しく整形されたデータが登録されれば、500%(広告費1万円で5万円の売上という意味)や私のクライアントでは1700%のROAS結果がでています。センス型広告でROAS1700%ともなれば、相当な数のA/Bテストが必要ですが、Googleショッピング広告がこの考え方を根本的に変えたと言えます。
さらに2019年から開始されたGoogleの新広告であるスマート広告を使えば、従来のキーワード広告の組み合わせすらもGoogleが自動化するようになりました。広告主は最低限のキーワードと広告文のコピーを書くだけで、同じく商品と顧客をマッチングさせてくれるようになり、広告がマーケターのセンスから商品のデータ登録が重要視されるようになり、広告のゲームルールが完全に変わったのが2019年だと認識しています。
では楽天・Yahooショッピング・amazonの3モールで年商50億円の企業が今までやっていなかったGoogleショッピング広告やスマート広告を使えばモールと同じような売上を作れるか? という問いに対する私の答えは YES です。
マーケターのセンスに関係なく売上を作ることができると断言できます。
インターネット広告というと、どうしてもマーケターの広告コピーやクリエイティブのセンスが重要視されてきました。マーケターならセールスコピーの類の書は読まれたことがあると思いますが、PASONAの法則に代表されるようなセンスが大きく問われる広告です。しかし、2020年現在ではこの広告センスという比重が極めて小さくなってきており、むしろアドテクノロジーの進化によってセンスからサイエンスで広告を使えるようになったのは中小企業の大きな味方ではないかと思うのです。
そして、広告がセンスからサイエンスの時代に移り始めている今まさに、その広告効果を最も発揮できるのが実は越境EC市場の広告なのです。もちろん、国内EC市場でもまだまだ効果がありますが、海外市場の方法サイエンス型広告はより機能します。
例えば、日本の中古自動車の部品、中古ブランド品、骨董品、アニメフィギュア、化粧品、時計、釣り具、工業製品、嗜好品、お茶、日本酒、食品、お菓子、、、海外に売れるものといえばこのような商品が思いつきます。
では、これらの商品は具体的にどの国で何歳ぐらいの人が買うか創造などできるでしょうか。もちろんできるわけがありません。ですから、Googleショッピング広告やスマート広告がむしろ効果的に機能するのです。キーワードの組み合わせも広告コピーもクリエイティブのセンスもほとんど不要で、商品データのみを正確に登録できれば、各国の検索ニーズに応じて最適な広告配信をしてくれるというものです。
中小企業が Googleショッピング広告やスマート広告 を自社サイトで使えるようになり、それなりにケーススタディーが出ている今日では2020年は独立型ECサイトの逆襲の年であると言えるのではないでしょうか。
続き → 独立型ECサイトの逆襲 データフィード広告で「集客」が激変!商品データが広告という新しい広告のカタチ