今、越境ECではアメリカ消費者に向けて、AmazonやeBayを利用して、日本の食品や化粧品を販売する人が増えている。アメリカに向けて食品、飲料、化粧品、医薬品など販売するには、FDA(Food and Drug Administration)という機関が定めたルールを守る必要がある。
AmazonやeBayなどを利用して食品などを販売している日本人ユーザーの中にはFDAルールを知らない、守っていないユーザーも多いらしい。
FDAを守っていない(FDA許可ない)商品をアメリカに販売又は、輸出しようとすると、米国税関を通過延滞し、拒否され、留置される場合もある。
今回は、アメリカのFDAルールとは何か、FDA対象商品、認証手続きに必要なものなど、留意点をまとめた。
FDA(Food and Drug Administration)とは、「アメリカ食品医薬品局」のことで、日本の厚生労働省にあたる公的機関である。
FDAの公式サイトによると、「FDAの責務は、医薬品、動物医薬品、生物学的製剤、医療機器、食品、化粧品、電磁波を発する製品の安全性と有効性を保証し、アメリカ国民の健康を守ることである」となっている。
つまり、アメリカ消費者が、食品や医薬品など口に入るものや、化粧品のように人の肌に直接触れるもの、さらには医療機器などはそれぞれの安全性を確保し、アメリカ市民の健康を守ることがFDAのミッションなのである。
FDAは日本の厚生労働省に相当し、食品、化粧品、医薬品、医療機器などの販売、流通などを規制・管理を行っているアメリカの行政機関であり、アメリカにおける食品、薬品および化粧品における「ルールの策定」と「監視と取り締まり」を行っている。
FDA対象商品を、アメリカへ販売する場合、このFDA認証取得されていない製品を輸出しようとすると、厳しいペナルティが課せられることがあるで注意が必要だ。販売者はこのFDAルールを熟知し、遵守しなければならない。
FDAの対象となる商品は、基本的には人の口に入る食品・飲料から、人の肌に直接触れる化粧品、さらに医薬品、医療機器(メディカルデバイス)、放射線放出装置が該当する。
下記にその詳細を整理した。
食品は一般食品、健康食品、低酸性食品、酸性化食品が含まれ、飲料、ペットフードを含む飼料も「食品、飲料」に含まれる。
FDAが「食品、飲料」としているものは、次の商品である。
「食品、飲料」の詳細はこちらのサイトで
https://www.fda.gov/food
FDAでは化粧品を『人の体に塗る、馴染ませる、スプレーするなどにより、体をきれいに美しくし、魅力を高め、または外見を変えるためのもの」と定義している。
化粧品には保湿剤やシャンプーのほか、練り歯磨き粉、マニキュア、香水も化粧品に分類される。
これらを一般化粧品とし、それとは別に、医薬品の定義に該当する化粧品をOTC医薬品として定義している。
このOTC医薬品は化粧品、医薬品の両方の規制の対象となる。
例えば、OTC医薬品定義に該当する化粧品としては、日焼け防止剤、フッ化ナトリウム成分を含む歯磨き粉や薬用シャンプーなど医薬品の効能を持つものなどがある。
FDAでは「OTC医薬品」を次のように定義してる。
「人又は他の動物に対して、植物以外で、診断、治療、緩和、処置または予防で使用することが目的であり、本体の構造または昨日に影響を及ぼした商品」としている。
シミソバカスを消す、シワをなくす、コラーゲン生成、細胞若返り、血行を良くする、むくみを取る、お肌の美白、お肌の修復、発毛、育毛、などの製品が「OTC医薬品」となる。
一般化粧品、OTC医薬品ではFDAの規制が全く違い、「FDA認証手続き」も違うので注意が必要である。
「化粧品」の詳細はこちらのサイトで
https://www.fda.gov/cosmetics
アメリカに「医療機器」を輸出しようとする場合も、FDAの認証が必要である。
製品としては、歯ブラシなどのシンプルなアイテムから、心臓ペースメーカーなどの複雑な技術製品まで多義にわたる。
FDAでは、約1700種ある医療機器を歯科、心臓・循環器科、放射線科、免疫学関係など16の医療専門分野に分類しリスクの程度によってClassⅠからClassⅢの3クラスに分けている。以下がその概要である。
FDAへ登録、許可取得のためには、まず製品のクラス分類を知る必要がある。
この際に、日本では医療機器に該当しない製品が米国では医療機器として取り扱われる場合もあるので注意が必要である。
詳細はこちらのサイトで
https://www.fda.gov/Medical-Devices
放射線放出装置とはレーザー、X線関連製品、無線周波数などである。
具体的には、レーザーポインタやレーザープリンタから補聴器、超音波歯ブラシ、マッサージ機器も該当する。さらに、X線装置、マンモグラフィー手荷物検査器、電子レンジ、車載レーダー、MRI機器などである。
「放射線放出装置」詳細はこちらのサイトで
https://www.fda.gov/radiation-emitting-products
医薬品とは、ヒトや動物の疾病の診断・治療・予防を行うために与える薬品である。
処方薬(ブランド品とジェネリックの両方)と非処方薬(市販薬)両方が該当する。さらに、ワクチン、血液および血液製剤、遺伝子治療製品など生物学的製剤も含まれる。
「医薬品」の詳細はこちらのサイトで
https://www.fda.gov/drugs
FSMA(米国食品安全強化法)で定められているように、アメリカ向けに食品を輸出、又は販売する場合、事業者がやるべきことは以下の5つである。
輸出者がメーカーである場合、上記すべて、商社であれば、メーカーや農場の協力を得て上記内容を全て行わなければならない。
アメリカ国内で、人や動物が口にする、食品を製造。加工、梱包、保管する国内外の施設は、FDAへ施設登録が必要である。
つまり、アメリカに自社製品の輸出を希望する食品メーカーは、すべて製造施設を登録する必要がある。
メーカーから商品を仕入れて販売する業者の場合、メーカーに依頼して施設を登録してもらうか、自らを代理人として施設を登録する必要がある。
最近、多く輸出されている、サプリメントについても「食品」と定義され、その成分を製造・加工・梱包・保管する施設は登録が必要である。
FDAでは、製造施設の登録と同時に米国代理人の指定についても義務づけている。
米国代理人とは、緊急事態が発生した時にFDAが連絡を取ることができる人を指し、個人、パートナーシップ、企業、協会が代理人として指定することができる。
ただし、いずれもアメリカ国内にビジネス拠点または居住所を持たなければならないとしている。
FSMA(米国食品安全強化法)では、下記に該当すれば指定できる。
米国代理人には、輸出者がアメリカ国内に関連会社がある場合は、関連会社を指定するのが一般的だが、アメリカに関連会社がない場合は、アメリカ在住の代理人を用意する必要がある。また、この登録は毎年更新することが義務づけられている。
FDAは、アメリカ国内で流通する食品のラベルに表示する項目を定めている。具体的には、以下の内容である。
表示ラベルは日本語と英語のラベルを貼る必要があり、ラベルのサイズや表記の仕様にも細かい規定がある。ラベルに関しては、食品、化粧品、メディカル・デバイスについてその内容が異なる。以下にその内容を記した。
化粧品のラベルについては、「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act: FDCA)」と「公正包装ラベル表示法(Fair Packaging and Labeling Act)」の規定を遵守しなければならない。
また、化粧品のラベル表示は外箱と本体容器の両方に英語で印刷すべきとしている。
具体的には、製品名、使用法、注意事項、製造者名と住所、容量などについて正確に表示することを求められている。アメリカ市場で化粧品を販売するには、このラベル表示を正しく行うことが最大のハードルとなっている。
メディカルデバイスに関しては食品や化粧品と違い、UDI規制(医療機器に対する個別表示に関する新法令)に従う必要がある。UDI規制は、アメリカ国内で流通する医療機器に対して固有の識別子の設定を求めるものである。
ラベル及びパッケージに、人が識別できる文字表示と自動識別表示(バーコード等)を記載することを求めている。さらに、機器の安全かつ効果的な使用のため、FDAのデータベースに規定データ項目を登録し、維持することが求められている。
アメリカへ食品を輸出する場合、FMSAにより、危害分析と予防管理措置を含む食品安全計画を策定、実施しなければならない。
2015年に公表された最終規則では以下となっている。
アメリカ国内に輸入される「人及び、そのほか動物用食品」の郵送については、FDAに事前通知することが必要である。
事前通知を行うには、FDAがWEB上に開設している事前通告を行うためのシステムフォームにアクセスし、以下の内容を登録する。
登録すると、FDAからPN確認番号が発行される。
これら、認証のための登録、FDA認証を取得するには、FDA認証取得代行サービスを利用するのが良いだろう。医療機器などは、FDA510k申請、米国食品医薬品局への医療機器届出などあり複雑である。内容によっては専門とするサービスにの認証取得代行サービスを利用するのが賢明である。
以下にFDA認証取得代行サービスを行っているWEBサイトを記した。
ここまで、日本の食品、化粧品を販売するには、FDAルールを遵守することが重要であることを記してきた。そして、FDAルールに違反すると、輸入通関が通らない、さらに、FDAからペナルティを課せられる可能性がある。以下がそのペナルティの内容である。
■警告書の送付
FDAの定めたルールに違反すると、まず、FDAから製造施設の米国代理人へ警告書が送付される可能性がある。警告書には法的な問題点や改善すべき点などが示めされている。
ラベル表示に問題があると、ラベル変更を求められる。
■製品の差し押さえ
次はラベル表示が事実と異なっている場合など、食品や化粧品が悪質だと判断されると、FDAが強制的に商品を差押える場合がある。
■活動禁止命令
さらにひどい場合、つまり、ルールに違反している状態が長く続いていて、改善の兆しが見られない場合、FDAは裁判所を通じ活動の禁止を命令することができる。
■刑事告訴
アメリカの食品医薬品化粧品法に違反した場合や傷害事故などを伴う違反が発生した場合は、FDAは職権により事業者を刑事告訴することができる。罰金の支払い(約1100万円から約5500万円)、さらに懲役を伴う刑罰が課せられる場合もある。
FDA対象の食品、化粧品であっても、非商用目的のために、個人から個人へと送られる発送物であれば、FDA対象から除外されるとしている。具体的には、以下のような場合である。
基本的には、食品や化粧品であっても個人から個人への発送物で、販売ではなく、非商用目的、つまり、お土産的なものはFDAの対象とはならない。あくまで、個人から個人であって、小売業者、又は配送業者かアメリカ消費者に送られる発送物はFDAの対象となる。
越境ECでアメリカへ食品、飲料、化粧品、サプリメントなどFDA商品を発送する場合は注意が必要だ。アメリカへFDA商品を発送するにはFDA認可証を取得した商品を発送・販売することが前提である。
日本の商品はアメリカでは品質が高いと評価されている。観光で日本に訪れたアメリカ人も、日本製の食品のクオリティの高さに驚き、その食品のリピートユーザーになることも少なくない。これら食品をAmazon.USやeBayなどで販売するには、必ず、FDAが定めるルールを守る必要がある。
アメリカ消費者へ食品や医薬品を販売する場合は、FDA登録、申請、認証取得などルールを遵守し行っていただきたい。
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