JNTO(日本政府観光局)は昨年12月、訪日外国人累計者数が3,001万人を越えたと発表した。この数字は、2016年の2,000万人から僅か2年で3,000万人と推移したこととなり、東京オリンピック開催年の2020年の4,000万人の目標はクリアできそうな勢いで伸びている。
だが、ここからが、大事なとことろである。昨年11月の内閣府の「地域の経済2018」報告書によると、日本を訪れる外国人は、一定の地域に需要が偏った傾向にあり、今後さらにインバンウンド需要を拡大するには、全国的に需要を拡大させなければならないと指摘している。
今回は、この「地域の経済2018」の内容をベースにインバウンドの現況とインバウンド需要をさらに推進するためには何を行うべきかなどを見ていこう。
上図は2012年と2017年の訪日旅行者数の変化を比較したものだ。 インバウンド需要は急速に拡大しているが、その変化に地域的な偏りがあることが分かる。
地域別では、南関東、近畿にエリアの大幅に上昇し、都道府県別では、東京、大阪、千葉、京都が圧倒的に上昇率が高く、偏っているのだ。
また、インバウンド旅行者の消費額でも東京と大阪の占める割合が高いとしている。
「地域の経済2018」では東京都、大阪府、北海道、京都府、沖縄県を「成熟圏」、それ以外の「潜在成長圏」として現状を分析している。 そして、旅行者の5割、宿泊者数の6割、消費額の7割以上を「成熟圏」が占めていると指摘している。
インバウンド需要は日本の一部地域に集中している現状を地方にも、もっと拡大しない限り、今後の需要の拡大はありえないだろう。
訪日旅行者は地域に活性化をもたらし、インバウンド観光という新しいビジネスを創造し、さらには雇用の拡大も期待できる。
日本は東京、大阪という大都市、富士山や京都、奈良といった歴史的観光地だけではなく、全国各地にまだまだある、「新しい日本の魅力」をもっと外国人に知ってもらい、訪問していただく、「インバウンド需要のすそ野の拡大」が不可欠である。
また、報告書には無いが、外国人向け情報サイト「ガイジンポット(GaijinPot)」で、2019年外国人が訪れるべき、日本の観光地トップ10を発表している。
この「日本の観光地ランキングトップ10」は外国人ライターが、欧米の読者に向け日本の景観、グルメ、体験などの観光情報を取材し、選定したものだ。
以下がその順位である。
「2019年に外国人が訪れるべき日本の観光地トップ10」では、大都市だけではなく、地方都市(地域の経済で分類されている潜在成長圏)が多くランキングされている。
まさに、日本の地方圏は潜在的に成長するエリア、潜在成長圏であることを示している。
WEBサイトにある1位にランキングした鳥取県の紹介では、鳥取砂丘の魅力、食では世界一高価なカニとして松葉ガニ、ポップカルチャーとしての名探偵コナンゆかりの地など、鳥取の魅力を解説し、評価している。
このように、魅力溢れる地方の観光資源を積極的にプロモーションし、外国人の日本訪問を後押しする必要があるだろう。
「2019年に外国人が訪れるべき日本の観光地トップ10」:
https://travel.gaijinpot.com/top-10-japan-travel-destinations-for-2019/
上図は、インバウンド旅行者が滞在中の行動を調べたものだが、傾向として、潜在成長圏旅行者は「旅館に宿泊」、「温泉入浴」、「自然・景勝地観光」、「ショッピング」など行い、成熟圏旅行者は、「日本の酒を飲むこと」、「テーマパーク」といった観光体験を多く行っている。
潜在成長圏旅行者は、自然や温泉といった、そこでしか体験できない「コト」に対して消費している傾向があり、インバウンド需要のすそ野を拡大するためには、「コト」を楽しむ”体験”に焦点をあてたサービスを企画・開発し、発信してゆくことが重要である。
つまり、その地域固有の自然環境や景勝、温泉、資源等の魅力を積極的にアピールする、たとえば、サイクリングや農業体験、温泉巡りといった「コト体験」を企画し、プロモーションすることがポイントである。
また、観光庁がおこなった「訪日外国人消費動向調査」によると、2017年に日本を訪れた訪日旅行者のうち、2回以上来日したという外国人は61.4%、10回以上は13.1%にものぼり、リピーター人口は今後ますます、増加するだろうと思われる。
そのようなリピーターが望むものは「新しい日本の魅力の発見」と、「日本ならではの文化に触れる」という「コトを楽しむサービスの提供」ではないだろうか。
各地域、地方自治体など、インバウンドに訴求する観光資源を整備しても、それをインバウンドに対して、発信し、認知されないとインバウンド需要は取り込めないだろう。
上図は、インバウンド旅行客が来日前に役立った情報源についてのデータである。
これを見ると潜在成長圏の旅行者は、「地方観光協会ホームページ」や「旅行会社パンフレット」、「旅行会社ホームページ」、さらに「自国の親族・知人」や「日本在住の親族・知人」から得た情報が役に立ったとしている。
他方、成熟圏旅行者は個人ブログ、SNSが役立ったとしている。 したがって、地方にある観光資源の魅力を効果的に発信するには、旅行会社サイト、地方観光協会サイト、日本政府観光局サイトなどでプロモーションを行ったり、さらにSNSやネット動画を通じてPRを行うなど、訪日促進活動を盛んに行ってゆく必要がある。
下記は代表的な日本を紹介する有名サイトである。
このようなWEBサイトに投稿したり、観光資源の情報発信し、取り上げてもらうことが重要である。
2008年に日本語対応した、日本語による口コミ表示を優先表示される。
ホテルや旅行に関する口コミ情報や価格比較ができる。閲覧数としては世界最大である。
有名なガイドブック「Lonely Planet」のWEBサイト版。 情報量が圧倒的に多く、インバウンド観光客が必ず手にしている。
WEBサイトにはフォーラムがあり、新しい情報の提供、入手の場となっている。
1996年、スイス人のステファン・シャウエッカーによって設立された、月間PV数約800万の訪日観光客向けポータルサイトである。
訪日を予定している9割の外国人、リピーターも6割は閲覧しているというから、プロモーションを行うには最適なサイトである。
レストラン評価などで有名なミュシュランガイドのWEB版。サイトでは、書籍同様にホテルや飲食店、観光地に関して星の数をつけて紹介している。
欧米の旅行者にとってはバイブル的な存在である。
50人の地域パートナーと10,000人のライターによる、13言語対応のネットワークで構築された、日本の観光に特化した観光ガイドサイトである。
日本各地の最新情報や日本を旅行するために必要な計画、準備に役立つ情報、ツールを提供している。
今回は「地域の経済2018」の報告書より、「インバウンド需要の拡大」に焦点をあて、インバウンドの現況、問題点、今後の取り組みなど見てきたが、報告書では最後に日本政府の取り組みとして、入国の際に必要なビザ要件の緩和や、LCC就航便の拡充の推進などの施策も重要としている。
インバウンド需要は越境EC需要にも大きく関係している。 訪日旅行者は日本で「楽しいコト体験」を満喫し、帰国後は、越境ECで訪問観光地の商品を購入したり、新しい日本の情報を入手する。そのようなサイクルがインバウンド需要をさらに拡大してゆくのではないだろうか。
※ブログ何に掲載している図や記事に関しては内閣府「地域の経済2018」より抜粋作成した。
内閣府「地域の経済2018」:
https://www5.cao.go.jp/j-j/cr/cr18/chr18_index-pdf.html
タグ: インバウンド
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