5月17日、2018年1月から3月期の訪日外国人数、旅行消費額など公表された。 1月から3月の訪日外国人数は762万人は前年比11.6%の増加。
訪日外国人全体の旅行消費額は1兆1,343億円と推計され、前年比は17.2%増加の増加であった。 このままのペースでいけば、2018年の訪日外国人数3,000万人を超える勢いである。
そして、今、日本国内でインバウンド人気、注目を集めているのが、東京でもなく、京都でもなく、大阪なのである。 大阪は2009~2016年の「海外旅行者数の成長率が高かった都市 ランキング」では、堂々の世界第1位を獲得している。
大阪は訪日旅行のゴールデンルートとして、関西国際空港からのアクセスも良いという利点があり、大阪を中心に京都、奈良といった日本の観光地を訪れることができる。
しかし、大阪はそれだけで外国人に注目されているわけではない。 それでは、なぜ、今、大阪なのか。インバウンドの秘訣を調べてみた。
米マスターカードは、昨年9月に世界の海外旅行市場に関するレポート「Mastercard Destination Cities Index」を発表した。
海外旅行者数の成長率が高かった都市をランキング化したものである。
この急成長渡航先ランキングは、2009年から2016年にかけての渡航者の年平均増加率を示す数値だ。
以下がトップ10で発表された各都市の順位である。
大阪では2009年から2016年にかけて 年平均+24.0%で外国人観光客が増加し続けており、 この数値は世界で最も高いものなのであり、世界的にも大阪の評価がうなぎ登りなのだ。
その背景には何があるのだろう。近くに関空がありアクセスが良好だからなのだろうか。USJがあるからだろうか。 訪日外国人の数では東京の方が多いが、成長率では大阪が上回る結果の背後には大阪のインバウンドへの取り組みがあり、他の都市でも見習うべきポイント4つが明らかになった。
以下にそのポイントをまとめた。
大阪府と大阪市では一体となって、訪日外国人が過し易い環境づくりに取り組んでいる。
第一には無料Wi-Fiスポットの増設である。 訪日外国人旅行者が日本でインターネット通信をする上で重要になるのが無料のWi-Fiスポットである。
「外国人に日本に来て困ったこと」の2位には「無料の公衆無線LAN環境が少ない」がある。これに対して大阪観光局は大阪の約5,000か所でインターネットに無料で接続できる「Osaka Free Wifi/ Osaka Free Wi-Fi Lite」を設置した。
さらに「外国人に日本に来て困ったこと」のアンケートをみると、3位に「多言語表示の少なさ・分かりにくさ」にある。
それに対し、大阪観光局は多言語対応を普及させ、訪日外国人旅行者が過し易い環境づくりを実施した。
例えば、標識や案内板の多言語化。薬局・ドラッグストアでは外国人対応のマニュアルを作成したことなどだ。
マニュアルは英語・韓国語・中国語(簡体字/繁体字)に対応している 。まずは、日本人が一番不得意とされる、外国語対応。
コミュケーションは充分にできなくても、このような多言語に翻訳されたペーパーなどあれば、例えば、外国人が薬局で、薬の効能や使用方法など質問されても、薬多言語マニュアルがあれば、対応は可能だろう。
少しでも、「外国人が日本に来て困ったこと」に対して、施策し、実施することが、訪日外国人観光客にとって旅行しやすい街となり、海外で高評価をうけることに繋がるのだろう。
東京と比べると、大阪では夜間に楽しめるアクティビティが少なく、夜間に暇を持て余している訪日外国人観光客が多かった。
また、日本旅行中の外国人旅行者が挙げる不満点として「夜間に遊べる場所が少ない」というものがある。
夜のアクティビティ対策として、JTB西日本では2017年9月から 「OSAKA NIGHTCLUB PASS」を販売開始した。
さらに、大阪観光局では21時~0時までのインバウンド向けのお得なサービスやメニューを提供する参加店を募り、訪日外国人に向けてこうした内容の告知、サービス券配布するなどを施策している。
ニューヨーク・タイムズ紙の「52 Places to Go in 2017(2017年に訪れるべき52の場所)」という記事では、大阪は15番目に紹介されている。
記事を読むと「大阪には究極のごちそうが待っている(The ultimate Japanese feast awaits.)」「京都を日本の精神、東京を日本の心臓とするならば、大阪は日本の飽くなき食欲である(If Kyoto represents Japan’s spirit, and Tokyo its heart, Osaka is the country’s insatiable appetite. )」と紹介されている。
京都の着倒れ、大阪は食い倒れである。ニューヨーク・タイムズ紙という世界的な有名紙に大阪ミナミの道頓堀の写真と共に「食を楽しむ街」として紹介されることは大きい。
昨年の日本に来る目的ランキングを見ても、日本の「食」を楽しむために日本に来る観光客が多いことがわかっている。
大阪では「食」というアピールポイントがあることは大きな強みである。
Osaka, Japan – The famous neon lights in the neighboorhood of Dotonbori NYTCREDIT: Lauryn Ishak for The New York Times
■外国人観光客が日本に来る目的ランキングベスト5(2017年)
2016年の訪日外国人の困り事ランキングを見ると、トップが「施設等のスタッフのコミュニケーションがとれない 32.9%」、2位「無料公衆無線LAN環境 28.7%」、3位「多言語表示の少なさ・わかりにくさ 23.6%」となっている。
この、2位と3位の内容に対し、 大阪市と大阪府で施策し、対策を講じたところが大きいだろう。
まだ、インバウンド対策が不十分だと考える地方の観光都市などは、いち早く、公衆無線LAN対応、多言語対応などインフラの整備に取り組むのが賢明だろう。
また、大阪は今後はさらに集客を伸ばすためには、人的サービスとしての「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」に対し、いかに施策し、実行するかがポイントとなるだろう。
日本の観光地と言えば、京都の東山、河原町・烏丸・四条などイメージされるが、三菱総合研究所の推計によると、大阪の主要観光地を訪れたのは合計で3,574万人 であったのに対し、京都の主要観光地を訪れたのは2,004万人 という結果で、大阪の方が京都を上回っているのだ。
大阪で人気の観光地は食い倒れのまち「道頓堀」である。
「道頓堀」は「食」はもちろん、「遊ぶ」、「観る」と三拍子揃った観光地でもある。さらに大阪の主要な観光地は大阪駅を中心に大阪城、USJ、梅田と広がっている。
●まとめ
外国人観光客を集客し受け入るには、対策が必要である、外国人が日本に来て困ったことに対して、いち早く対策を実行し、さらに問題点を掘り下げ、観光PRを行った結果だろう。
大阪城の入場者数が3年連続で過去最高の270万人超え、過去最高を記録している。 これも様々な観光PRとしてのキャンペーンイベントを行った結果である。
訪日外国人にお客様になってもらうことは、海外ビジネスを発展させていく為の大きなチャンスでもある。
インバウントビジネスはさらに越境ECにも繋がってゆく。日本人の「おもてなし精神」と「チャレンジ精神」で様々な施策を実行して行っていただきたい。