今週10月1日から8日まで、中国の国慶節(日本の建国記念日)、祝日による大型連休があり、日本へ多くの中国人観光客が訪れ、その動向はメディアなどでも紹介されている。
中国人観光客は2015年のような爆買いは見られないものの、多くの中国人が日本各地を観光し、お土産を買い、祝日を満喫しているようだ。
観光白書によると、2016年のインバウンド、訪日外国人数は中国が1位、2位が韓国、3位が台湾となっている。
今回は、5月30日に発表された、観光白書からインバンド事情、さらに、みずほ情報総研のデータを元にインバウンドと越境ECの関連について見て行こう。
日本政府観光局(JNTO)が公表した2016年の1年間に訪れた、外国人合計は、前年比21.8%増の2,403万9000人という結果だった。
伸び率は昨年の昨年の47.1%増から大幅に低下しており、成長が鈍化したと見られている。国別、地域別の訪日外国人客のトップは中国は637万3,000人。初の600万人の大台は、中国が大きなマーケットであることを印象付けた。
2位は韓国の509万人、3位が台湾の416万人、4位は香港の189万人と続いている。 このアジア4強の平均伸び率は前年比23.1%増の1,700万人を上回っている。 また、アメリカ、ヨーロッパ、豪州、ロシアなどのインバウンドも前年より324万人以上という数値となっている。
一方、国別、地域別の旅行消費額を見ると、中国が4.1%増の1兆4,754億円。続いて台湾の0.7%増の5,245億円、3位に韓国18.9%増の3,577億円、4位は香港が12.2%増の2,947億円となっている。
いづれの国、地域も、旅行消費額は過去最高であった。 一人あたりの旅行支出を見ると、中国が18.4%減の23万1,504円、台湾が11・1%減の12万5,845円、韓国が6.5%減の7万281円、香港が7.0%減の16万230円、米国が2.4%減の17万1,418円などだった。
いずれも個人支出は減少しており、旅行消費額は過去最高ではあったが、全体的には伸び悩み傾向が見られ、一人一人の支出が減った分、訪日客数が埋め合わせをしている現状が見て取れる。
それでは、日本を訪れるインバウンド観光客は観光地でどんな土産を買っているのだろう。
そして帰国後、土産をまた、再購入したりするのだろうか?
その回答が次にまとめてある、2016年に行ったみずほ情報総研のデータである。次にこの内容を紹介する。
2016年3月にみずほ情報総研は、インバウンド観光客向けマーケティング施策の検討を目的とした、外国人旅行者の訪日前、訪日中、訪日後の購買行動・意識に関する調査を行った。
調査対象は中国人、タイ人、台湾人各200名にアンケート、中国人5名、タイ人3名、台湾人4名にインタビュー調査を行った内容と結果を公表している。 主な内容を以下に整理した。
「訪日中に購入した商品」で一番多かったものは、「菓子類」(94.7%)となっている。
次いで、「その他食料・飲料」(90.3%)、「化粧品・香水」(85.3%)、「衣類・鞄・靴」(85.2%)の順に購買率が高い結果となっている。
インバウンド観光の購買満足度に対する調査である。
多くの人が買い物をした店舗や商品に満足し、特に「商品の品質の高さ」(4.25)、「商品の価格の安さ」(4.13)、「店員の接客態度」(4.13)に対する満足度が高いことが分かる。
日本で買った商品や買い物をした店舗については、様々な観点から情報が発信されている。
表を見るとインバンウンド観光客の80%前後の人が、商品や店舗についてインターネットでの書き込みや友人や親族と会話をして情報を発信しているようだ。
話題にする内容で最も多いのは「買った商品の品質について」で、88.0%が書き込みや会話をしたと回答し、次いで「買った商品の値段」(86.5%)について、「買い物をした店舗の品揃え」(84.8%)、「買い物をした店舗の定員の接客」(84.5%)と続き、さらに「買い物をした店舗の立地・アクセス」(84.2%)なども話題にしているようだ。
「訪日後の再購買行動について」の質問には、商品種別にかかわらず60%以上の人が帰国後にその商品を再購買しているようだ。
「帰国後に買った」の割合の最多は「菓子類」(71.3%)、次いで「トイレタリー/その他の日用品」(71.9%)、「化粧品・香水」(71.1%)、「マンガ・アニメ・キャラクター関連商品」(71.0%)。
以降、「その他食料・飲料品」(69.9%)、「衣類・かばん・靴(和服・草履等の日本の伝統品以外)」(69.3%)、「電気製品(PC、音響機器、炊飯器、温水便座など)」(68.1%)と続いている。
入手チャネルを見ると、現地店舗での購入の割合が4~5割と高くなっているが、「電気製品」「衣類・鞄・靴」「トイレタリー/その他日用品」は、越境ECを利用して購入される割合も高い。 また、後日、「日本に旅行に行った友人・親族に買ってきてもらった」という人も一定の割合でいるようだ。
帰国後に再購入しない理由についての質問には、最も多い理由としてあがっているのが「越境ECの送料が高い」(4.63)となっており、海外から商品を取り寄せる越境ECは普及しているが、送料の割高感から購入にいたらないケースが多いことが分かる。
次いで、「居住地近辺の店舗に商品が置いていない」「置いてあっても価格が高い」が購入しない理由として挙がっており、日本の店舗との商品ラインナップの違いや割高感から購入しないケースが多いようだ。
みずほ情報総研の行ったこの調査内容を見ると、「日本での買い物に満足した人ほど、再購買の意向が強くなる」傾向にあり、越境ECで再購入の際の課題は「越境ECの送料の高さ」であり、現地店舗での課題は「現地での価格や品揃え」であることが浮き彫りになっている。
また、旅行中の買い物、店舗や商品、サービスについても、「商品の品質の高さ」「店舗の場所や店舗内の案内のわかりやすさ」など、高いロイヤリティを持っていることがまとめられている。
これから3年後の2020年の訪日外国人数は3,679万人と予測され、特に中国をはじめとするアジア地域からのインバウンドは順調に拡大するものと思われる。
みずほ情報総研の調査内容は、今後、訪日中の外国人に対して買い物満足度をさらに高めることで、帰国後、現地店舗で買い物したり、越境ECで再購入する衝動が高まることを示唆している。
越境ECの課題は「配送料の高さ」と指摘されているように、配送料は、初回限定のお客様に対する割引率、まとめ買いよる割引率、定期購入に対する割引率を高くすることなど施策が求められる。
また、インバウンドで買い物されるお客様へは必ずお店のパンフレットや商品カタログを添え、帰国後も越境ECで買い物を楽しめるように促すことも重要である。
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