10月1日から2022年3月31日まで、アラブ首長国連邦(以下UAE)のドバイでは、中東初の国際博覧会「ドバイ国際博覧会(ドバイ万博、Expo 2020 Dubai)」が開催されている。
私のドバイのイメージは、とにかく世界一の高層ビル群といったものである。
世界で最も高いところに位置する屋外プール「アドレス・ビーチ・リゾート」や、「バージュ・カリファ」は、高さ828メートルの世界一高い建造物である。
そして、この10月21日には、 世界最大の観覧車「エイン・ドバイ」が完成する。
ドバイは近年、外国資本の流入により大きく成長し、UAEでは「経済のドバイ」と呼ばれている。
今回は、このアラブ首長国連邦(UAE)のEC事情について調べた。
UAEは、7つの首長国から成っている中東の連邦制国家である。
7首長国とは、アブダビ首長国、ドバイ首長国、シャールジャ首長国、アジュマーン首長国、ウンム・アル=カイワイン首長国、フジャイラ首長国、ラアス・アル=ハイマ首長国である。UAEの首都はアブダビ市である。
UAEの経済は、石油や天然ガスといった天然資源による歳入が中心であるが、最近はサービス産業に力点を置き、多角化しつつある。
2020年、UAEはコロナの影響で原油価格が落ち込み、経済的苦境となった。
UAEはこの石油依存からの脱却、脱石油政策に向け、大きく転換を図っている。
その一つが、投資家、医師、発明家、科学者など、UAEに必要とされているスキルを持つ外国人に対して、パスポートの発行を開始した。
このパスポートの取得は市民権を得ることであり、取得できれば、アラブ国民と同様の手厚い恩恵ををうけることが可能となる。
アラブ政府は、投資家や優れた才能を有する人々をUAEに集め、経済活性化を図っている。
以下に「Hootsuite UAE 2021」などによりUAEの基本データをまとめた。
ジェトロの資料によると、UAEの2017年時点のEC市場規模は27億8900万ドル(約314億円)、2020年には53億2100万米ドル(約600億円)となり、年率約24%で拡大するとされている。
さらに、2024年には97億100万米ドル(約1兆円)の規模に到達するとも予想されている。
現在、UAEではスマートフォンの普及から、モバイルコマースが大きく成長している。
2020年はモバイルによるEC利用が42%に増加した。今後はさらにモバイルコマースは拡大するだろう。
新型コロナの影響で変化したのが決済の方法だ。
これまで、UAEの主流だった決済は代金引換っだったが、衛生対策と非接触型決済であるクレジット決済が大きく増加した。
さらに、コロナ禍によりECで商品カテゴリにも変化があった。
「食品・パーソナルケアアイテム(美容・化粧品、)」が急増し、2020年の約6億8,000万ドル(約770億円)が、2024年には約14億4,000万ドル(約1,590億円)の約2.5倍の大幅増が見込まれている。
他にも多くのECカテゴリにおいて成長が見込まれており、家具セグメントが約2.2倍、ファッション(衣料・靴)が2倍、おもちゃ、趣味・DIY 用品セグメントが約1.8倍、電子メディアは約1.6倍など、アフターコロナにおいても、消費者の買い物はオンラインサービスを利用し、今後も拡大するだろうとしている。
UAEにおけるECサイトは大きく分けると、AmazonのようなECモールとして総合型、リアル店舗はないが、ECのみでファッションや生鮮青果になどECカテゴリに特化したもの、さらに、スーパー店舗とECサイトを同時に運用しているリアル店舗&ECというタイプがある。
ここでは、UAEで代表的な総合ECモールの「Amazon UAE」、アパレル専門の「NAMSHI」、総合スーパーとECを運用する「Carrefour」を取り上げる。
「UAE Amazon」は、Amazonがドバイに本拠を置くEC企業スーク・コム(Souq.com)を2017年に買収し「Amazon.ae」としてスタートさせたもの。
スーク・コムで販売されていた31カテゴリー約940万点の商品に加え、アメリカAmazonから500万点が拡大販売され、国内外の事業者による出品を合せると約3,000万点もの商品をUAE消費者が購入できる巨大ECモールである。
服、靴、アクセサリー、コスメなどの約600ブランドの商品を扱う「NAMSHI(ナムシ)」はUAEを中心としたファッション専門のオンラインショップである。
「NAMSHI」は、国内はもとより海外からの商品も取り扱っており、日本からも出品が可能だ。地域別では、欧州、アメリカ、トルコなどのブランド商品が多いと言う。
強みとしては、国内店舗では扱っていない海外ブランドの多様な商品を提供している点にある。
毎月1,500万人がサイトを訪れ、そのうち120万人が実際に商品を購入しており、利用者は20歳以上のファッションが好きな女性が中心となっている。
UAEの「Carrefour」はアメリカのWallmarketのようなものだ。
「Carrefour」はフランスに本社があり、世界各地にスーパーマーケットチェーンを展開する小売企業である。
Carrefourは1995年、アラブ首長国連邦、デイラのシティセンターに最初の超大型スーパーマーケットをオープンした。
Carrefourには、食料品から家電製品,医薬品,生活用品,宝石,工具,おもちゃなど何でも揃っている。
2020年、新型コロナでオンライショップ「Carrefour」の売上急増を受け、今、DXによる事業の拡大を加速させている。
UAEにおける越境EC市場は、EC市場の3割程度を占めるとジェトロでは公表している。
UAE消費者は越境ECで良く買い物を行っていると言える。
そして、越境ECでの販売方法としては、UAEの有名ECプラットフォームへの出品と言うものが主流とある。
出品が可能となっているのは、前段で説明した「Amazon.ae」、「Namshi」と「Bashracare(スキンケア商品など専門サイト)」などとなっている。
また、売れ筋商品は、衣料・靴(31.2%)、家電(27.6%)、電子メディア(16.4%)とあり、新型コロナでは、女性の「海外パーソナルケアアイテム(美容・化粧品)」が急増している。
ただし、化粧品、医薬品、食品に関しては、UAEで販売するには必要な手続き(UAE政府への登録)をメーカー負担で完了済みであることが条件となっている。
また、関税に関してUAEは、個人利用のための小口貨物は非関税となっている。ただし、小口貨物となるかどうか明確な基準がないともある。
UAE消費者の特徴としては、あまり長い文章は読まないのがアラビア人らしい。簡潔で明瞭な商品紹介で、詳細はYouTubeな動画で実演するのが効果的である。
新型コロナの影響でけUAE経済は減速したが、EC市場は多くの分野で活況した。特に、美容などパーソナルケア、ペットケア、アパレル、家電が大きく成長した。
現在、UAEのコロナは収束に向かっており、この10月から開催されているドバイ国際博覧会は、来場者数2,500万人と予測されている。まさに、ドバイ万博はUAE経済活動再開のインセンティブとなり、様々なビジネスに大きな利益をもたらすことだろう。
UAEは可処分所得の高さ、インターネット・スマホの普及、都市人口率の高さ、輸送ロジスティクスネットワークの充実、テクノロジーに精通する若者の人口の増加など、オンライン・ショッピングに適した土壌があり、今後、UAEのEC市場はさらに勢いを増し拡大すると予想される。
日本企業は早期にUAEをターゲットとした海外販売事業を検討すべきである。
参考: