新興国でのクレジットカード事情

本日の記事は、新興国でクレジットカードの普及が遅れている背景と、クレジットカード決済に代わる新興国独自で進化したモバイル決済の最前線について解説します。

ご存知の通り、日本ではクレジットカードは非常に普及しています。一方で、新興国市場では、Eコマースの利用者のうちクレジットカードを持っているのはわずか20%です。

そこで、越境ECで新興国(アジアや南米)に対してEコマースの拡大をする場合は、決済インフラの情報が非常に重要です。それでは、見ていきましょう。

 

新興国でクレジットカードの普及が遅れている理由

新興国市場でクレジットカードの普及が遅れている背景には、以下のような要因があります。

1. 銀行インフラの未整備
多くの新興市場では、銀行口座を持っていない人が多く、クレジットカードを発行するための基盤が整っていません。

銀行口座を持つには、信用力のある経済活動が必要ですが、非正規雇用や農村部の住民が多い地域では、その条件を満たすのが難しい場合があります。

2. 信用スコアシステムの未発達
クレジットカードの発行には、申請者の信用スコアが重要な役割を果たします。

しかし、新興市場では信用情報を管理・評価するシステムが未整備であることが多く、金融機関が個人の信用リスクを正確に評価するのが難しいため、クレジットカードの発行が制限される傾向があります。

3. 経済的な理由
一部の新興市場では、所得水準が低いため、クレジットカードを利用するための条件を満たせない人々が多いです。

クレジットカードの利用には、ある程度の安定した収入が必要であり、また、高額な手数料や金利が利用者にとって大きな負担となるため、利用が広がらないという現実があります。

4. 現金主義の文化
多くの新興市場では、現金が最も信頼できる支払い手段として広く使われています。

これは、過去の経済不安やインフレなどによる不安感から、現金を手元に置いておく文化が根強く残っているためです。

現金主義の文化は、クレジットカードの普及を阻む要因となっています。

5. インフラの整備不足
POS(販売時点情報管理)端末の不足: クレジットカード決済を受け入れるためには、店舗側にPOS端末などのインフラが必要です。

しかし、新興市場ではこれらのインフラが十分に整備されていないことが多く、クレジットカードの利用が制限されます。

6. インターネットとデジタルリテラシーの問題
インターネット普及率の低さ: クレジットカードのオンライン利用が普及するには、インターネットの利用が前提となりますが、新興市場ではインターネット普及率が低い地域も多く、オンライン決済が浸透しにくい状況にあります。

これらの要因が重なり、新興市場でクレジットカードの普及が進まない背景となっています。しかし、近年ではモバイル決済やフィンテックの発展により、クレジットカード以外のキャッシュレス決済手段が新興市場で急速に普及しつつあります。

クレジットカード以外の決済手段

日本では、クレジットカード以外の決済手段としてスマートフォン決済ありますが、新興国では、このスマートフォン決済がクレジットカード決済に代替する主要な決済となります。

それでは、各国ごとの決済事情を見ていきましょう。

アフリカ

モバイルマネー
アフリカでは銀行口座の保有率が低いことから、モバイルマネーが非常に普及しています。

M-Pesa
ケニアやタンザニアなどで広く利用されているモバイル決済サービス。携帯電話を使って、送金や支払いが可能です。

MTN Mobile Money
西アフリカを中心に展開されるモバイルマネーサービス。


アジア

アジアでは中国を中心に、QRコードを使ったモバイル決済が広く普及しています。

Alipay
アリババグループが提供するモバイル決済サービス。中国国内で広く利用されており、QRコードを使って支払いが行われます。

WeChat Pay
メッセージングアプリWeChatに組み込まれた決済機能。日常の支払いや送金に利用されています。

GCash
フィリピンで広く利用されているモバイルウォレット。QRコードでの支払い、送金、請求書の支払いが可能。フィリピンの通信会社Globe Telecomが提供しており、国内でのキャッシュレス化を推進する中心的な役割を果たしています。


ラテンアメリカ

ラテンアメリカでは、銀行振込やバウチャーを使った支払いが一般的です。

Boleto Bancário
ブラジルで広く利用されているバウチャーシステム。顧客が現金で支払うためのバウチャーを発行し、銀行やコンビニで支払いが行われます。

OXXO
メキシコのコンビニチェーンOXXOで利用される現金支払いサービス。オンラインで注文後、OXXO店舗で支払いを完了することができます。

PIX
ブラジル中央銀行が2020年に導入した、即時決済システムです。

24時間365日稼働しており、数秒で個人や法人間で資金の移動ができるこのシステムは、従来の銀行振込や現金支払いに代わる手段として、ブラジル国内で急速に普及しています。


インド

インドは、モバイルウォレットとUPI(インド国立決済公社が運営するデジタル決済システム)といったデジタル決済が急速に普及しています。

Paytm
モバイルウォレットサービスで、オンラインショッピングや公共料金の支払いに使われます。

Unified Payments Interface (UPI)
銀行間で即時に送金を行うための決済システム。多くのモバイルアプリと連携して利用されています。


中東

代金引換 (COD)
中東地域では、商品の配達時に現金で支払いを行う方法が一般的です。


東南アジア

東南アジアでは、各国で独自のモバイルウォレットが普及しています。

GoPay
インドネシアで人気のモバイルウォレット。オンラインショッピングや交通機関での支払いに利用できます。

GrabPay
シンガポールやマレーシアで利用される決済サービスで、配車サービスGrabの一部として提供されています。


まとめ

新興市場では、紹介したこれらの決済方法がクレジットカードに代わる主要な支払い手段となっています。

特に東南アジア、中国では、独自の決済方法が浸透しています。

新興市場を対象にしたEコマースを日本から越境ECで行う場合、d localによってその需要に応えることができます。

関連する記事

円安で越境EC販売が急増! 越境EC参入のための5つの方法と活用できる補助金... 今、越境ECによる商品販売が急増している。 急速な円安がその発端だが、越境EC参入において様々な支援サービスが増えたことも事実である。 今回は、越境ECを通じて海外販売する5つの方法と越境ECで活用できる補助金をまとめた。 越境ECとは 越境ECとは、消費者が電子商取引(EC...
メキシコ版ブラックフライデー「エル・ブエン・フィン」とは?... メキシコ版ブラックフライデー「エル・ブエン・フィン」とは? 毎年11月、メキシコ全土で開催される大型セールイベント「エル・ブエン・フィン(El Buen Fin)」は、メキシコ版ブラックフライデーとも言える年に一度の大型セールイベントで、2024年は11月15日から18日まで開催されています。 ...
24ヶ国のEコマースのデータに驚愕 国際ガバナンス・イノベーションセンター(CIGI)は、年次報告書「インターネットセキュリティと信頼に関する2017 CIGI-Ipsosの国際調査報告書」をリリースした。この研究は24,225のインターネットユーザーを対象に24カ国で実施した結果である。 この結果をまとめると、次のような内容で...
ヨーロッパ主要各国のオンライン決済方法... 今回は日本とヨーロッパ諸国におけるEコマースの決済方法についてさまざまな比較、分析をしてみました。 データにしてみるとわかりやすいのですが、イギリス、フランス、ドイツの3カ国の総人口は2億人を超え、EC市場規模は27兆円(2013年時)ということで、日本の約2.3倍ほどになっています。 20...
新興国が主役?急成長するグローバルAI市場の意外な実態... 2024年はあらゆるニュースでAIに関する記事が賑わっていますよね。 AIの急速な発展が世界を変えつつある今、新たな事業の可能性を日々見つけていませんか? 2030年までに、AI産業の価値は現在の20倍、約2兆ドルに達すると、市場関係者では予想してます。 しかし、ちょっとここで立ち...
ラクビーW杯が終わり、次は東京オリンピック これから始める越境ECの基本... 大盛況のうちに幕を閉じたラクビーW杯2019日本大会は、南アフリカの3年ぶりの優勝で11月2日に幕を閉じた。ラクビー会長のビル・ボーモント会長は、「最も偉大なW杯として記憶に残る。日本は開催国として最高だった」とコメントし、初めて開催された日本開催は大成功であり、高く評価されたようだ。これら...

タグ: , , ,

コメントをどうぞ