スマートデバイスの普及により、企業のマーケティング戦略は大きな変革期を迎えている。
つまり、デジタル化の大きな波により、デジタルマーケティングを認識し、取組んでいかない企業経営は成り立たない時代になってきているということだ。
今年1月、「先進技術による新事業創造委員会」より『企業の成長シナリオを描くために市場戦略の変革をーデジタルマーケティングによる価値創造ー』が報告された。
概要は日本の経営陣は今後、さらに積極的にデジタルマーケティングに着手していかなければならないことを示唆したものだ。
今回はこの報告書を元にデジタルマーケティングの日本の現状やデジタルマーケティングの注目トレンドなどを見ていこう。
デジタルマーケティングとは、デジタルチャネル(WEBサイト、Eメール、SNS、スマホアプリ、動画、デジタル音声、デジタル決済、デジタルチラシ、顧客データ、IOTなど)を活用し、プロモーション施策を実施し、お客様データを可視化しマーケティングを行うことである。
今回の『企業の成長シナリオを描くために市場戦略の変革をーデジタルマーケティングによる価値創造ー』レポートでは、どの業界でも多くの企業がデジタル化による変化を認識しており、デジタルマーケティングに取り組む企業は増加していると記している。
しかし、一方で、その手法や導入状況においては、SNSやWEBサイトを活用したマーケティングに留まっているとしている。
そして、デジタルマーケティングの根幹とも言うべき、顧客データを蓄積、管理し、そのデータを分析するDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)を導入している企業はデジタルマーケティング実施企業のうち、5.1%に過ぎないことにも触れている。
つまり、デジタル広告の配信など、WEBマーケティングは行っているが、プラットフォーム(AI)を導入し、顧客の履歴データを蓄積、分析・解析し、次の一手を打っている企業は少ないと行った現況が報告されている。
さらに、日本企業はアメリカ企業に比べて、CMO(最高マーケティング責任者)の設置が進んでいない状況も指摘されている。
アメリカの500社を対象に行った調査ではCMOの設置は62%あるのに対し、日本企業300社を対象とした、CMOの設置は0.3%とマーケティングに対する経営陣の認識の違いが明らかにされている。
日本の場合は、価格競争型のビジネスモデルにとらわれたマーケット戦略が横行し、マーケティング戦略の重要性が認識されていないと指摘している。
デジタル時代においては、企業は消費者に対して、買いたい時に、買いたい場所で、買いたいモノを提供できる仕組みを構築し、提供しなければならない。
企業はオンラインによる手軽さと、オフラインによる親密性をうまく組み合わせることで、消費者の支持を得なければならない。
アメリカの「Warby Parker」では、眼鏡・サングラスをオンラインで販売し、実店舗をショールームとして位置づけ、低価格を実現し成功している。
オンラインでは、最大で5つの眼鏡を自宅に配送し、5日間の試着体験サービスを提供している。
さらに、Instagramに画像を投稿すると、SNS ユーザーからだけでなく同社からもアドバイスが届く仕組みになっている。
人間は繰り返し接触した人やモノに対して好感を持つ傾向があるとされている。この心理を応用し、常に顧客への接触を行うことのできる、オウンドメディアを強化する。
「パナソニック」の事例では、オウンドメディアのコンテンツの拡充により、「CLUB Panasonic」の会員数は1,000万人を突破し、会員の年間購入金額は非会員の約2.6 倍になった。
世界の人口の4割、日本人の約6割がSNSを利用している現代は、SNSによる情報の影響力は無視できない。
企業はSNSにおけるクチコミの共有と拡散を利用したマーケティングを展開しなければならない。
「I-ne」が販売する「ボタニスト」シャンプーは、SNS広告のみに集中的にマーケティング費用を投下した。SNSによる宣伝効果を持続することにより市場シェアを大幅に拡大し、1年半で販売累計1,000万本を達成した。
データマーケティングを実施するには、ROASなどの KPI を設定した上で、社内外のデータや部門毎に別々に管理されているデータを顧客毎のデータとして統合し、一元管理する仕組みを構築する必要がある。
顧客の購買行動パターンは多様化しており、企業が継続的に消費者のモノを売るには、顧客を「個客」として捉え直す必要がある。
それには、顧客の一連のカスタマージャーニー(顧客の一連の行動)を描き、顧客接点を把握し、強化する。さらにその枠組みを広げ、個客に最適な体験を提供できるサービスを創出しなければならない。
海外のチャットボット普及率が、年平均の成長率でみると35.2倍と予想されているのに対し、日本はまだまだ、チャットボット活用は進んでいないのが現状だろう。
チャットアプリはLINEを始め普及しているが、チャットボットの普及、定着には至っていない。 チャットボットは、カスタマーサービスの自動化と向上に効果を発揮し、Webサイト、アプリケーション、さらにはSNSプラットフォームにも導入できる。
チャットボットは、基本的なカスタマーサービスをアシスタントし、カスタマーデータを蓄積し、自社の製品機能の向上、商品キャンペーンを促進する活用することができる。
Googleで利用されている35億件の検索のうち、その3分の1は音声検索である。 今後は、自動言語処理、会話型インターフェース、機械学習の進歩により利便性は高くなり普及すると思われる。
音声による検索が増えれば増えるほど、音声検索結果にインデックスされるSEO対策は重要となってくる。
音声SEO対策としては、検索キーワードを会話的で短いものにすること、”打ち込むワード”ではなく、”話すワード”を想定し、「音声検索の回答に利用されやすい文章構成にする」などが考えられる。
2020年までには検索の50%は、音声検索になると言われており、音声SEO対策は今後、取り組むべき内容である。
スマートフォンの普及と同じように伸びているのが、動画広告市場である。 2020年には現在の1.5倍の2,000億円を超えると言われている。
2018年はマーケッティング手法として、この動画をを利用した広告が飛躍的に伸びた。 特に、「ライブ動画」による、商品をPRする「ライブコマース」である。
ライブ動画は製品、サービスとユーザーを直接結びつける効果があり、ユーザーの関心を引きたいブランドがSNS上で、ライブ動画を配信することが多くなった。
今年もこの傾向は続くと見られ、「Facebook Live」、「Instagram Stories」、「SHOWROOM」や「LINE LIVE」、「Tiktok」など動画媒体も増え、SNSに配信された、ライブ動画広告は2019年も注目を集めるだろう。
画像やテキストより注目を集める、動画は説得力あるメディアである。 「Hubspot」のデータによると、メルマガに動画を追加するだけでクリック率が200~300%向上し、ランディングページに動画設定するとコンバージョン率が80%向上すると報告している。
動画をマーケティング戦略の一つとして取り入れる必要はあるだろう。
デジタルマーケティングの本質は、One to Oneマーケティングによる顧客の体験価値を高め、長期的な繋がり継続し、信頼関係を築くことである。
ECサイトの購入履歴、メルマガ注目率、スマホアプリ、SNSでの接点、実店舗での購入履歴などの多くの顧客データをAIを活用して蓄積、分析し、ユーザー個客の次の行動を予測し、個客の購買確率の高い商品を提案するなど、より高度なマーケティング手法がデジタルマーケティングなのである。
参考:「企業の成長シナリオを描くために市場戦略の変革をーデジタルマーケティングによる価値創造ー」
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