中国は2月4日より、春節(旧正月)に入った。今年は来週2月10日までの大型連休である。この時期中国は、正月ムードでいっぱいになるが、今年は環境対策のための花火や爆竹など規制され、北京中心部は、わりあいひっそりとした新年を迎えているようだ。
春節のこの期間、中国ではのべ30億人が帰省などで移動するという。 海外旅行も過去最高の700万人が渡航し、日本はタイに次ぐ、海外旅行先となっている。 日本の観光でやってみたいことランキングでは、買い物がトップで、人気エリアは東京、大阪、名古屋となっている。
今回はインバウンドと密に関係する”中国の越境ECの現況”として、日本貿易振興機構(ジェトロ)とBaiduのレポートから中国の越境ECについて調べてみた。
中国の越境ECは高い増加率で推移しており、最近では訪日観光をきっかけに日本製品の購入の動きが広まっているいるようだ。
観光庁の2018年6月のレポートによると、取引総額は約3500億円と推計され、経済産業省に昨年の統計でも、日本事業者からの越境EC購入額は前年比25.2%増加し、1兆2978億円と推移している。
ここ3年の中国と日本とアメリカの越境ECの状況を見ても、中国の越境EC市場は突出した拡大の状況を見せている。
2018年12月に日本貿易振興機構(ジェトロ)発表した「中国の消費者の日本製品等意識調査」によると、越境ECで日本製品を購入したことのある人は65.3%と他国と比べても非常に高い利用率となっている。
中国人の越境ECを利用する理由は「中国内の店頭で販売されていない製品だから」が69.1%と最多で、前回より24.7ポイントも上昇している。
また、越境ECで多く購入されている商品をみると、基礎化粧品が46.9%、メイクアップ化粧品が46.1%、食品の43.5%と化粧品や食べ物など、自国の商品より日本製品に対する安心、安全のイメージが強いことを示している。
次にバイドゥ株式会社が中国人2,000人を対象 とした「越境ECサイトの利用実態調査(2019年1月)」レポートを見ると、中国人の越境EC購入商品は日本の商品が過去最多となっている。
越境ECサイトで「どこの国の商品を購入することがありますか?」という質問に関しては、日本がトップで58.0%、2位に韓国の52.5%、3位にアメリカ48.4%と続き、越境ECを利用して日本の商品を多く購入しており、レポートでは購入金額が高くなればなるほど、日本商品の購入率が高くなるとも指摘されている。
また、越境ECサイトの利用のきっかけは、「周囲の人のすすめ」がトップで、女性では半数以上と多い。
そして、「海外ブランドの商品を使ってみたかったから」、「興味がある商品があったから」が2位・3位と続いている。 さらに、「海外旅行がきっかけで越境ECサイト利用」も18.5%と海外旅行で買い物した商品を再び越境ECサイトでも購入する傾向も高い。
バイドゥ「越境ECサイトの利用実態調査」の興味深いレポートとして、越境ECサイトの言語表示についてのアンケート結果がある。
アンケートは「全て日本語のサイト」、「自動翻訳されているサイト」、「必要な情報が翻訳されてサイト」、「英語のみのサイト」、「繁体字のみのサイト」で中国人ユーザーのどのような越境ECサイトを利用しているか調べたものだ。
越境ECサイトで「買い物する」・「閲覧はする」の割合が最も高かったのは「日本語のサイトが、自動翻訳されているサイト」であり、9割の越境ECユーザーが「自動翻訳されているサイト」から商品を購入しているとしている。
これは、しっかりした中国語訳になっていなくても、自動翻訳レベルで十分購入できている現実を示している。
中国政府は越境ECに対して積極的な方針を示している。
一つは越境EC輸入販売政策(跨境电商进口政策)の拡大であり、もう一つは、越境ECの国際ルール作りに中国が参加を表明したことだろう。
越境EC輸入販売政策(跨境电商进口政策)については、以前のブログ、『中国「越境EC輸入販売政策」。4つの朗報!!』でも触れたが、 越境EC輸入販売政策では越境ECに関する3つの緩和計画が示されている。
一つは、越境EC購入限度額の引き上げで、年間上限額では一人当たり、20,000元(約321,000円)が26,000元(約416,000円)に拡大されたこと。
二つめは、越境ECエリアの22都市が追加拡大され、37都市が「越境EC総合試験区都市」と指定されたこと。
三つ目は、輸入関税優遇商品の追加である。スパークリングワイン、麦芽原料のビール、トレーニング機材などの63品目の近年、ニーズが高い商品が新たに追加され、輸入関税が優遇されたこと。
さらに、中国政府は、今年1月25日、日米欧など76カ国・地域が参加する「越境ECの国際ルール」作りに参加することを表明した。
「越境ECの国際ルール」とは、買い物履歴など個人データの国境を越えたデータの扱い方などをルール化しようとするものである。
越境ECは今後、世界規模で市場拡大し、2020年には約110兆円市場に達すると見込まれ、世界共通のルール作りは急務とされていた。 この国際ルール作りに中国も参加を表明した。
中国代表は1月25日の会合では、データの自由な流通には反対の立場だが、「通関業務の簡素化については前向き」な発言を行っている。
以下が、「越境EC国際ルール」、4つの論点である。
化粧品などの扱う日本メーカーの中国販売が好調と聞く。資生堂では国内では36年ぶりに栃木県に新工場を建設予定だ。
中国人訪日観光客は一時の爆買いは影を潜めたが、日本の商品を訪日時に知り、帰国後に越境ECで購入し続ける例が増加している。 海外の小売店やネット販売には未だ、偽物が多く、日本の越境ECサイトならば安心という心理がはたらいているようだ。
電子商ビジネス研究センターの統計によると、2018年上半期、中国の越境ECの規模は前年同期比19.4%増の1兆300億元(約16兆7441億9500万円)に達し、越境ECを通して海外の商品購入者数は7500万人を越えたという。
今年の春節、中国インバウンド需要を契機に、中国語の販促物を用意し、帰国後も自社商品を越境ECサイトで購入できるよう対応していただきたい。