情報化社会、IT化の現代では、興味のあることや欲しいものは、インターネットで何でも調べることができ、自分の欲しいものは自分で調べたり、探す人たちが増えてきた。そのような中では従来型のユーザーを追いかけるマーケティング手法だけでは、ユーザーを掴むことが難しい時代となってきている。
2015年調査会社ニールセンが国内の消費者に対して「新商品に関する情報源」によると、インターネット検索(68%)、店頭で見て(67%)、テレビ広告(50%)という報告もある。
これは明らかにユーザーは自ら主体的に情報収集し購買しており、それに見合ったマーケティング、つまり、インバウンドマーケティングの手法によるユーザーの開拓が必要となった。
そこで今回はこのインバウンドマーケティングについて見ていこう。
まだまだ、馴染みのない言葉であるが、インバウンドマーケティングとは、広告出稿、テレビCM、飛び込み営業などの「攻めの営業」ではなく、商品に興味のあるユーザーは自ら検索したり、SNSなどを通して調べたりされることを信じてユーザー自身に「見つけてもらう」ことを目的としたマーケティング手法である。
具体的な方法としては、ユーザーに対して有益なコンテンツをネット上で提供し、検索結果やSNSで見つけられやすくし、自社サイトに来てもらいもらい、商品やサービスの購入に繋げていく、ユーザー主導型マーケティング手法をいう。
最近では自社サイトに訪れたユーザーを顧客化するまでの育成プロセスも含め「見つけられる」「育成する」「顧客化する」「顧客を満足させる」までの一連の活動全体を「インバウンドマーケティング」と呼ばれているようだ。
インバウンドマーケティングで重要なのはユーザーに情報を見つけてもらうことである。つまり、自社展開するWeb上のコンテンツに、ユーザーに訪問してもらえる、ユーザーを惹きつけるコンテンツを用意することである。ブログなどWeb上に、ユーザーにとって興味を引く有益なコンテンツを用意することで、その情報を必要としているユーザーに「見つけてもらう」ことが第一段階である。
ユーザーを惹きつけることができれば、次のステップはユーザー情報取得すること、多くの場合はEメールアドレスの取得である。メールアドレスを取得できれば、継続して情報提供が可能となる。ユーザーは自社の情報、サービスに興味をもっているので、メールマガジンやEブック、動画の配信やセミナーへの紹介など行い、リード(見込み客)として導くステップである。
ユーザーを惹きつけ、リードへと育成した後は、顧客へと転換するステップである。リードを育成しながら、購入へと繋げ、ユーザーに商品、サービスの購入者になってもらうステップがこの段階となる。 このステップでは、どの段階で購入のアクションを促すタイミングが重要である。
ユーザーの育成状況を把握して、育成プロセスを可視化し、スコア化することで最適なタイミングで販売活動を行うことができる。スコア化とは、育成段階ごとにポイントを決め、何ポイントまで進んだら購入を促す、という目安を決めることである。
例えば、Webページに訪れたら何点、メールマガジンを受け取ったら何点、資料請求をしたら何点、セミナーに参加したら何点などと定め、既定の得点に達したところで購入を促すことである。
ユーザーが商品やサービスを購入した後も、継続して続くのがインバウンドマーケティングのポイントである。最終段階のステップ4ではユーザー満足度を高めることがポイントとなる。 具体的には購入者だけが特別に参加、取得できるコンテンツを提供したり、セミナーの開催やメールマガジンの配信、アップセルやクロスセルの配信などにより、ユーザーとの持続的なコミュニケーション、繋がりの継続を行うことである。
満足度を高めたユーザーに商品やサービスをSNSやクチコミで広げるインフルエンサーになっていただくことが目標である。ユーザーのSNSやクチコミが大きな影響がある今の時代では、ユーザーのフォローアップこそが重要である。
望んでいない情報を押し付けられる、特に押し売りに近いサービスには良いイメージはない。ポストのチラシやDM、サイトバナー広告、セールスの電話などのいわゆるアウトバウンドマーケティングは、送り主に対してあまり良いイメージを持たれることは難しい時代である。アウトバウンドマーケティングは、ユーザーに必要な情報であれば受け入れられるが、不要な情報は嫌われる結果となる。
それに対してユーザーが必要とする情報をWebサイトに準備するインバウンドマーケティングは、求められない情報を押し売りすることのなく、ブランドや商品やサービスへの悪い印象を持たれることは少ないと言える。
インバウンドマーケティングでは、高い広告宣伝費を支払い宣伝してもらう代わりに、自社展開サイトで情報発信することになるので、大幅なコスト削減が見込まれる。実際にはインバウンドマーケティングを実行しながらインターネット広告を併用するケースが多いようだ。
これまでの広告はマスが対象であり、多くの人々に向けたものである。多くの人に語りかけ、反応してくれた人だけがサービスを利用する。まさに広くゆきわたる告知である。
それに対するインバウンドマーケティングは検索エンジンからの導線から流入が主体となっている。
顧客が解決したい内容をキーワードとしてコンテンツに設定することで、興味や関心の高い人たちだけを自社サイトへ誘導することが可能である。つまり、不特定多数ではなく、特定少数の商品やサービスに関心の高い人ユーザーに情報を届けることができる。
インバウンドマーケティングと切り離せないのがSNSの浸透である。SNSなどによる情報の拡散は広告では成し得ないメリットと言える。情報拡散だけではなく、SNSによるクチコミは知人からの情報提供となるので、情報に信頼の付加価値がつき、意思決定の際にはポジティブな影響を与え、購買意欲にも大きく影響する。
成長曲線に到達するまでに時間を要するのがインバウンドマーケティングである。 検索によってコンテンツにたどりついてもらうにはSEO対策を行う必要があり、それでも成果が出ないようなら、インターネット広告も検討する必要がある。 コンテンツ作成ではペルソナを分析、定義し、ペルソナにとって有益な情報を提供しつつ、同時に見つけてもらう工夫と時間が必要である。
インバウンドマーケティングの根幹はコンテンツ作成である。優れたコンテンツを用意することが成功への鍵となる。定期的に継続してコンテンツを作成し、発信するためには専任者を置き、コンテンツ更新体制を構築することが必要不可欠である。
インバウンドマーケッテングで特に重要なのはペルソナに対し、魅力あるコンテンツを作れるかどうかと言える。初期段階ではなかなか成果は見えてこないかもしれないし、導入時にはコストと手間がかかり地道な作業となる。しかし、その労苦を乗り越え成長曲線に転ずれば、その費用対効果は非常に高いマーケティング施策であると言える。
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