進化する巨人Amazon 2019年の施策の全容

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Amazonジャパンは1月16日、2020年初売りセール「Amazonの初売り」では総注文数が前年の約2倍となったこと、さらに日本でのサイバーマンデーは過去最多の注文を記録したことを明らかにした。
また、2月6日の通販新聞でもAmazonジャパンの2019年の売り上げは1兆7442億1900万円、前期比13.6%増と好調をキープしているとしている。
世界に拡大するAmazonの好調と成長、その背景には何があるのか、それは常にトップをゆく地位に甘じることのない規模・サービスの拡大にあるようだ。
そして、Amazonは今まさに、Eコマースという市場、業態に収まりきらない進化を遂げようとしている。今回は2019年Amazonが行った主な施策・開発の概要などを見ていこう。

アメリカAmazon.comの販売状況

Amazonジャパンの2019年(2019年1~12月)の売上高はドルベースで、160億200万ドル(約1兆7588万円)、前期比15.7%増と公表されている。
Amazonジャパンの売上高は直販ビジネスのほか、第三者による販売(マーチャント売り上げ)の手数料収入、定期購入サービスなどが含まれている。
そして、米Amazonの2019年度の売上高は前期比20.5%増の2,805億2200万ドル(約30兆5768億9800万円)純利益は約1兆2630億円と公表された。プライム会員も1億5,000万人を突破したとしている。
2019年の売上高の伸び率は2018年が30.9%増に比べると、前年比20.5%増と鈍化しているが、それでも20.5%の伸び率は好調、高成長と言えるだろう。

売り上げ構成費を下記に示した。

  • 直販にあたるオンラインストア売上:1412億4700万ドル(前期比14.8%増)
  • 第三者販売サービス売上(マーチャント売り上げ)の手数料収入など:537億6200万ドル(前期比25.8%増)
  • 定期購入売上(サブスクリプションサービス売上)など:192億1000万ドル(前期比35.6%増
  • AWS(アマゾン ウェブ サービス):350億2600万ドル(前期比36.5%増)
  • 実店舗売上(主に買収したホールフーズの売り上げ):171億9200万ドル(前期比0.2%減)
  • その他(広告サービスやクレジットカード契約などの売上高):140億8500万ドル(前期比39.3%増)

アマゾンの売り上げ構成費

世界に進出しているAmazonであるが、地域別売上シェアを見ると、本国アメリカが69%、次いでドイツの7.9%、イギリスの6.2%、4番目が日本の5.7%となっている。どの国のAmazonを見ても、売り上げは増収増益である。

  • アメリカ:1936億3600万ドル(前期比20.9%増)
  • ドイツ:222億3200万ドル(前期比11.8%増)
  • イギリス:175億2700万ドル(前期比20.7%増)
  • 日本:160億200万ドル(前期比5.7%%増)
  • その他:311億2500万ドル(前期比27.0%増)

アマゾンの国別シェア

Amazon.comの開発トピックス 2019

2019年のアメリカEC事業トップ1000社で第1位のAmazonは、世界で最も価値のある企業の1つである。アメリカ以外でも、イギリス、ドイツ、フランス、そして日本でもAmazonはEC事業ではトップである。
Amazonは常に成長を続けるために、実証実験を行なっている。実証実験が失敗に終わることもあるが、それは成功のための失敗である。
ベゾスは年次報告でこう述べている。
”我々が時々、数10億ドル規模の失敗を経験しているのであれば、それはAmazonが現在の企業規模にふさわしい実証実験をしていることになります。”
実証実験とは大きなリスクをとることであり、リスクをとることは、お客さまや社会に提供できるサービスの一環だとも述べている。
2019年のAmazonの実証実験は、「プライム会員への配送時間を半分に短縮」や「新ブランドの食料品店を数十店舗開店」、「広告ビジネスの急成長」、「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)の拡大」、「新たな自動車分野への進出」などで、その開発内容と規模拡大の内容を細かくを書いていたらキリがない。ここでは、2019年の主要な内容を見ていこう。

スピード配送は長期的な投資

Amazon.comは2019年4月に、プライム会員向けに1日配送を無料提供するため、8億ドルを投じる計画を発表した。1日配送は、顧客の最大のニーズであることをAmazonは察知していた。1日配送・無料提供サービスには、Amazonの「顧客満足のためには投資を惜しまない」という姿勢が示されている。
そして、Amazonの1日配送サービスの影響は大きく、予想どおり多くの消費者はAmazonで買い物をするようになった。そして売り上げは上昇したが、配送コストが増大したことは明らかである。
売上は24%の増加したが、配送コストは第3四半期に約46%上昇し、減益に直結している。つまり、Amazonの1日無料配送は投資なのである。
Amazon担当アナリストによると、この投資は「長期的な利益のための短期的な痛み」であり、実店舗を持つ小売事業者との競争力を高めるために必要だったと述べている。
事実、5月には実店舗を持つ小売事業者Walmartが1日配送の無料サービスを開始した。
大手スーパーチェーンTargetも複数の同日配送オプションを提供する取り組みを拡大している。
Amazonがフルフィルメントセンターに対しても多額の投資を行うと同時に、配送スピードを上げるための投資は、アメリカの物流に対してのダイナミックな革新でもある。

Amazonの新しい食料品チェーンの投資

Amazonは11月は近々、新しい食料品店チェーンを立ち上げることを投稿した。
書籍の販売から始まったAmazonは、これまで手付かずだった食料品事業に本格的に参入とも取れる内容である。
発端は、Amazonがロサンゼルス近郊のウッドランドヒルズで、新しい食料品店の従業員の募集広告を開始したことにあるようだ。
新しい店舗の名前は未定だが、Amazonでは「最初の食料品店」としている。この店舗は、2020年オープン予定で、2年前買収した、ホールフーズ・マーケットとは全く別の新しいマーケットブランドを計画している。また、従来の無人レジの「アマゾン・ゴー」とも違うとも説明している。
ホールフーズ・マーケットは高級食品のイメージがあるが、今回の「最初の食料品店」では、これより低価格路線で販売することで食料品市場への足場を固める意向が見てとれる。
Amazonによる「最初の食料品店」はどのような店舗となり、どう拡大するのか、今後が楽しみである。

拡大するAmazon広告ビジネス

Amazon広告が収益を上げている。デジタル広告といえば、googleとFacebookが2大勢力だが、Amazonの広告事業は彼らの強力なライバルとして急速に台頭しつつある。
以前のブログ「今、成長著しいAmazon広告とは」でも記したが、Amazonは自社広告に力を入れている。
アメリカ、eMarketerによると、Amazon広告は2018年、アメリカのデジタル広告市場の約7.6%を占める98億5000万ドルの広告収入を生み出したとしている。2020年にはさらにデジタル広告市場の10%まで伸びると予想されている。
2019年の成長の鍵は、Amazonが広告枠を劇的に増やしたことと、それにより、第三者ブランドを自社のマーケットプレイスで販売させることに力を入れたことである。
これまでのAmazon広告枠は、クリック単価型検索広告で、検索結果のトップにしか表示されなかったが、2018年8月にAmazonは、スポンサーブランドをWebサイトの左側と検索結果の下部など、様々なフォーマットを用意した。
この広告枠の増加は、インプレッション数の増加につながり、より多くのコンバージョン(CVR)増加に貢献した。
調査によると、Amazon広告が目立つようになったことで、消費者はこれらの広告をより頻繁にクリックし、より多くの買い物をするようになった。スポンサーブランド広告により、売り上げは2019年第3四半期で57%増加したと述べている。

Amazonは、Amazonサイトでの商品購入の70%は「検索窓の入力」によるものであり、Amazon内でスポンサー商品の売り上げを伸ばすには、この検索結果による広告表示の拡大が重要であることを踏まえたうえでの広告枠の拡大なのだろう。
2019年、Amazon内の小売業者はAmazonのプライムデー向けの広告支出を大幅に増やし、使った広告費はきっちり回収できたと言う。
広告投資に見合った売上額の上昇が、数字として現れれば、当然、Amazon広告費はさらに増加するだろう。
2019年のプライムデーに広告を出したKenshoo社のクライアントは、前年の約2倍の広告を出稿し、玩具やゲームのブランドでは前年比で6.3倍、健康や美容のブランドでは3.1倍、コンピューターや電子機器のブランドでは2.0倍の広告費を使ったとしている。

Amazonのサブスクリプションの驚異的サービス

AmazonにとってのEコマース事業は、1事業に過ぎず、その他の事業に関しても同様に力を入れいる。その一つが「サブスクリプション事業」である。
このAmazonのサブスクリプションサービスの2019年の売上げは、192億1000万ドル(約2兆1,136億円)、前年比35.6%増である。
Amazonのサブスクリプションサービスとは、基本的にはAmazon Primeサービスによるものだ。「サブスクリプションビジネス」はビジネスの安定化を示しているため、この部門の増収増益は、投資家にとってもポジティブな材料になる。
さらに、アメリカではAmazon Prime会員が1億5,000万人に達したことは、そのサービスが驚異的なものだからだろう。
月額数百円程度の会費で、商品の配送が無料だったり、映画やドラマが見放題だったり、一定範囲の音楽やラジオが聴き放題だったり、Kindle Unlimitedでの本が読み放題など、さまざまな特典が付いている。
そのPrimeサービスの一つ、Amazon musicは利用者が世界で5500万人突破した。
2019年は50%増だったという。Prime会員は追加料金なしで200万曲以上の楽曲を広告なしで楽しむことができる。
先にも書いたたが、Amazon.com Prime会員は商品、地域にもよるが1日・無料配送という特典の衝撃は大きかったようだ。
Amazonはこの1日・無料配送サービスを提供することにより、Prime会員を劇的に増加させた。つまり、「プライム会員のサービスの質を上げる」と「会員数の増加」、「増収」というポジティブサイクルを作り出した。

独走するAmazonのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)

Amazonはサブスクリプション以外に大きく需要を伸ばしている部門がある。それは「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」である。
2019年の売り上げは350億2600万ドル(約3兆8,550億円)前年比36.5%増である。「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」はアマゾンのなかで最も収益を上げている部門である。
2006年に始まったAWSの年間売り上げは2018年で256億6000万ドル(約2兆8,750億円)。クラウドコンピューティング企業としては世界最大規模で拡大しており、GoogleのGCPも手が届かない。
Amazon AWSとは、もともと、自社向けインターネットオペレーションシステムだった。Amazonは、ここで開発したテクノロジー基盤を利益を生む、個々の目的にあったクラウドコンピューティングサービスに転用したのだ。
このAmazon AWSとはAmazonが保有している膨大なコンピュータリソースを、使用量に応じて従量課金され、利用することができるというものだ。
このAmazon AWSサービスはAmazonの中で大きな利益を生んでいる。
AWSサービスの強みは、ISO 27001やSOC、PCIなどの世界各国の様々なセキュリティ標準の要件を満たしており、政府や金融機関などが利用できるレベルの堅牢なセキュリティを備えていることである。
そして、これまでに3,000以上の新サービスの提供と機能改善を行っており、そのサービス内容、開発量が膨大なことである。さらに、費用も従量課金制で利用した分だけ支払うのみである。
2019年の10〜12月期中に開発したAWSを見てもいかにAmazonが開発をクラウドコンピューティングサービスを重要視しているかがわかる。
以下にその開発事例を記した。

  • オンプレミス施設を拡張する機能AWS Outposts
  • 特定のエリアに展開しているインフラを使用するAWS Local Zones
  • 5G デバイス向けの超低遅延アプリケーションAWS Wavelength
  • オムニチャネルのクラウドコンタクトセンター Amazon Connect
  • 潜在的なセキュリティ問題、不審なアクティビティを簡単に分析、調査するAmazon Detective
  • 開発者やデータサイエンティストが機械学習モデルを迅速に構築するためのAmazon SageMaker

さらに、2019年12月10日、AWSでは量子コンピューティングテクノロジーの進歩を支援するひとつとして、AWS量子コンピューティングセンターを設立し、カリフォルニア工科大学などトップレベルの学術研究機関や、Amazonから量子コンピューティング分野の専門家が結集し、量子コンピューティングの新技術に関する研究開発を共同で行うと発表している。
Amazon AWSは現在、世界190カ国以上でサービスを展開し、数百万の顧客がいる。
日本企業ではキヤノン、キリン、ソニー銀行、電通、資生堂、マツダ、毎日新聞、日本テレビ、メルカリ、ネットフリックス、スマートニュース、ビズリーチなど10万以上の顧客を有している。
AWSのコンピュータテクノロジーは、今後、機械学習、AI、IOT、サーバーレスコンピューティングなどの分野でさらに革新の速度をあげて行くことだろう。

Amazonの新しい電気自動車は物流を変える

アマゾンの電気自動車

AmazonがEコマースの会社だと思っていたなら、認識を改めた方がいいかもしれない。Amazon AWS事業もそうだが、Amazonは本格的にGoogle同様、自動車産業へも参入した。
2019年2月9日、Amazonは、アメリカの自動運転技術を開発するオーロラ・イノヴェイションへの出資を発表した。Amazonが目を付けたオーロラは17年創業ながら、自動運転の世界ではすでに隠れた「台風の目」として知られている。
オーロラ・イノヴェイションには、グーグル自動運転部門の元最高技術責任者(CTO)やUberの自動運転部門出身の機械学習のエキスパート、テスラの「オートパイロット」開発チームらが立ち上げた企業である。この業界の大物で構成されるオーロラ社、スタートアップへの出資である。
すでにAmazonはトヨタの次世代電気自動車「e-Palette Concept」プロジェクトに共同出資しており、自律走行車の開発者向けにアマゾン ウェブ サービス(AWS)を売り込んでいる。
そして、いよいよ、2020年1月7日~10日(金)に、米国・ラスベガスで開催された、世界最大級のデジタル技術の見本市「CES 2020」に、Amazonは音声AI「アレクサ」を搭載した、EV自動車メーカーである「リヴィアン」の開発中のピックアップトラックを、Amazonのブースの中で発表した。
Amazonの新しい自動運転やEV車開発は、アメリカ、ロジスティクス業態へ独自の戦略で挑戦しようとしているのだ。
AmazonはEV車である「リヴィアン」10万台の大量投入を決め、環境問題への対応を積極的に行っていくことへの意思表示している。2021年にはAmazonPrimeで注文した商品がAmazonのEV車で配達されるかもしれない。

まとめ

『アマゾンに学ぶ14ヵ条の成長原則』という書籍には、「実験(ダイナミックな発明や革新を実践するなど)」、「構築(顧客にこだわる、長期的な考えを採用する)」、「加速(決定は迅速に行う、テクノロジーで効率化)」、「規模の拡大(高水準をも重視するなど)」の循環サイクルが正常に周っているという。
Amazonは競合他社に焦点を当てるのではなく、常にユーザー(顧客)に執着し、発明への情熱を傾け、優れた運用へのコミットメントし、長期的に考えるを実践することで、新しいビジネスモデルやマネタイズ法を発案し、実施することで、他の追随を許さない巨額の売上を叩き出しているのである。

参考

 

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