先週、7月15日(月)~16日(火)の2日間、Amazonは年に一度のプライム会員大感謝祭「プライムデー」を開催した。
Amazonによると、今回のイベントは「サイバーマンデー」及び過去の「プライムデー」と比較してAmazon史上、最大のセールイベントとなったと公表した。
また、ニールセン デジタル株式会社の調査によると、2019年4月時点の日本のAmazon利用者は、5,004万人(昨年同月比+10%)と堅調な増加を見せている。
2018年のドルベースのAmazon Japanの売上高は、138億2900万ドルで前期比16.1%増となっており、利用者の増加、売上高の増加と堅調な成長を見せている。
この事業の成長、拡大においては、Amazonの推進する様々な成長戦略にあるが、今回はAmazonの戦略で小売業者が参考となる6つの要素とAmazonが日本でも開始された新サービスについてまとめた。
AmazonECサイトでは、ユーザーが欲しい商品を探し、商品をカートに入れ、チェックアウトするまで、簡単に買物を行うことがことができる。
それには、Amazonの絶え間ないユーザーエクスペリエンスの追求があるのだ。ここでは、その中心となる6つの要素についてまとめた。
シンプルであることは、デザインのゴールである。その良い例がAppleブランドだろう。
Amazonも同様である。Amazonのサイトはデザイン賞を獲得するというものではないが、 Amazonのデザインポリシーは見た目の良いデザインではなく、高いコンバージョン率を生み出すページデザインである。
つまり、Amazonのデザインポリシーは見込み客を混乱させないデザイン。シンプルで直帰率が少ないデザイン。顧客が直感的に理解でき、ロイヤリティが高いデザインである。
例えば、メニューにある”Departments”にはたくさんの商品カテゴリーが格納されている。これは、最初からユーザーにたくさんの選択肢を与えないことで、ユーザビリティを高めている。最初から「ユーザーにたくさんの選択肢を与えることは、ユーザーは何も選ばなくなる」というユーザー心理の基づいている。
ユーザーの心理を理解し、選択肢をできる限り少なくすることが、ユーザーが使いやすいページ第一歩である。
トップページのファーストビューはシンプルであり、ユーザーを混乱させてはならない。
Amazonの「Best Sellers Rank(BSR)」は、Amazon.co.jpでの売上に基づいて計算され、ランキングされている。このランキングはすべての商品の最新販売数と累計販売数を反映し、1時間ごとに更新され表示されている。
ECサイトでは蓄積されたデータ集計を活用して、ユーザーにフィードバックすることで、ユーザーから大きな信頼を得ることができる。
ランキング表示は、特にECプラットフォームで信頼と安全を醸し出すには重要なファクターである。
カートページの製品詳細情報は最も重要である。ユーザーはこのページで、商品を買うか否かを決定するだろう。
製品のレビュー情報はAmazonが世界につながっている証拠であり、レビューでは商品に対する多くの意見を確認することができる。
すでにその商品を購入したユーザーが、どうのような意見を持っているか正確に示すことで、消費者の信頼を得ることができ、消費者が購入するか、否かの判断に影響を与える。
さらに、Amazonには商品紹介コンテンツがある。こちらは下部にあり、あまり認知度は高くないが、このコンテンツはAmazonの出品者が独自にデザインし表示できるもので、商品カタログ的な要素が強い。
これなどは、セッション数の向上など見込め、自社オリジナル商品の販促に有用である。
レコメンド機能は、ユーザーが見ている商品について、他のユーザーが購入した購入履歴や、ユーザーが過去に見たり、チェックした商品履歴などをもとに、その商品と関連性が高い商品のユーザーに提案するものである。
レコメンドは、ユーザーが見ている(買おうとしている)商品から関連する商品を提案することで、ユーザーはさらに簡単に関連商品を見つけることもでき、ユーザーあたりの単価の向上も期待できるが、何より、ユーザーにとっては関連商品を一度に購入したい時に便利な機能でもある。
ユーザーに無駄なことをさせない、ユーザーのアクションの障害を取り除くことで、離脱を抑え、コンバージョン率が高まるだろう。
今まさに、商品購入しようとしているユーザーに対して、追加料金、条件によって変わる配送料などは、ユーザー離脱の決定打となる。
税金、配送料、手数料を含んだ購入金額を明確することが重要である。さらに、在庫状況、商品到着予定日もはっきり明示されていることが、ユーザー購入意思ををより強いものにするだろう。
Amazonではリピート顧客をEメール経由で生み出している。Eメールによる、Amazonのオススメ商品の紹介エンジンは、重要な役割を果たしている。
なぜなら、AmazonECサイトのオススメ商品アイテムより、Eメールでの紹介アイテムの方がはるかに高いコンバージョン率を生み出しているからである。
一つには、AmazonのEメールはユーザーの名前を表示しているところだ。名前の表示は、まさにパーソナライズである。
そして、狙いを絞ったAmazonのEメールの配信はユーザーの関心に焦点を合わせ、配信のタイミングをコントロールしている。
つまり、Eメールの配信はユーザーがAmazonサイトに訪れたタイミングに限られ、ただ闇雲に理由もなくEメールを送っているわけではない。そして、Eメールデザインは、トーン&マナーをAmazonサイトに合わせている。
Eメールといえども、見た目、雰囲気、構成は Amazonサイトとデザイン統一させ、一見しただけでAmazonと理解できる。
これほど、Amazonが世界的企業(2019年6月時点では世界第2位)として成長した、成功要因として、『Be Like Amazon』という書籍が参考となる。
『Be Like Amazon』は、あらゆるビジネスが成功するために活用できる基本的な概念を明らかにしたビジネス書であり、多くの概念はAmazonの成功から得ることができると説明している。
『Be Like Amazon』では以下の四つが成功の要素として重要だとしている。
である。この4つの概念は、今も変わらずAmazonで実践されているとしている。
Amazonの最高責任者ジェフ・ベゾス氏は社名をAmazonと決めるまで、それ以前は「Relentless(レレントレス)」(絶え間なく続く)という名称だったようだ。
ベゾス氏はいまだに、Rerentless.comというURLを所有しているいう。
この「絶え間なく続く」というコンセプトマインドは現在も受け継がれている。つまり、新しいコンセプトに絶え間なく挑戦し、絶え間ない弱点の改善である。
この、Rerentlessの思想こそAmazonの成功を牽引してきたと言っても過言ではない。
次に、最近Amazon Japanで新しく開始されたサービスを紹介する。
5月21日、Amazon Japanはユーザーが選択した商品画像のデザインや柄・形などをもとに、好みにあった商品を提案する新機能「Discover(ディスカバー)」のサービスを開始した。
「Discover(ディスカバー)」は商品名は分からないが、商品のイメージを頼りに商品を購入したいといったユーザーにはありがたい機能である。
現在は利用カテゴリーは、家具ではダイニングテーブル/リビングテーブル/チェア/ソファ・カウチ/ダイニングチェア/カウンターチェア/ローボード」。
キッチンではカップ&ソーサー/カップ・マグカップ/湯呑み/急須・土瓶などと限られている。「Discover」のやり方は、
というものだ。「Discover」では直感的に商品を選別でき、商品を色や柄などデザイン面から選ぶことができる、商品選びの楽しさを演出するECサイトの新しいUX感を感じた。
今年5月Amazon Japanは株式会社ライフコーポレーションと協業し、生鮮食品の販売サービスを開始すると発表した。現在、Amazonには Amazon freshがあるが、大手食品小売店がAmazonと協業する初の試みである。
「ライフ」の取り扱う商品は、惣菜、冷凍・冷蔵食品、飲料、お酒、日用品、コスメ・美容用品、ベビー用品、ペット用品などで、利用は東京都の対象地域でAmazonプレミアアム会員に限定されるようだ。
「ライフ」の出店により、対象地域のプライム会員は、「ライフ」で取り扱っている生鮮食品を注文から最短2時間で受け取ることが可能となるとしている。
現在、「ライフ」は大都市圏を中心に計273店舗(2019年5月30日現在)を運営している。
Amazonが本格的に生鮮食料品でもEC成長を目指す「ライフ」販売は、年内にも開始される予定だ。
今年4月には日本でも「Amazon flex」が開始された。これは東京近郊の一部地域に限定されているが、荷物の配送を、Amazonが委託した一般の個人配送者がAmazonから配送委託され、指定のお客様に商品を配送する「ウーバー宅配」事業と言えるものだ。
この一般の人による、宅配が普及すれば、ネット通販を行なっている配送業界に劇的な変化が起こるだろう。
つまり、Amazon利用者がAmazon配送事業者にもなり得るということであり、この仕組みが普及すれば、多くの宅配業者の労力は軽減されるだろう。
アメリカでは2015年から「Amazon flex」は運用されていたが、日本でも一部地域で実証実験をで行なわれており、2019年5月より本格的に首都圏でローンチされ話題となった。
「Amazon flex」は、宅配業者以外で配送量をさら拡大することと、一般の個人を活用することで配送時間を短縮する課題を同時に解決するもである。
Amazonの経営理念の中心は「顧客中心主義(Customer Centricity)」である。
Amazonはお客様に対し「いかに安く、便利で安心・快適に買物ができ、購入いただいたものは、即日、お客様にお届けする」それが全てである。それを実現できれば、それがどん仕組みであろうと関係ない。
Amazonが世界に送り出す新しいサービス、 Amazon fresh、ドローン配送や Amazon Dashや Amazon Goなどはそのことを如実に示している。
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