2016年上半期、中国EC市場規模は約2兆3142億元(約30兆円)に到達、前年度比43.4%増と発表している。また、越境EC市場に関しては、2016年上半期の市場規模は5125億元、全期予想では1兆1000億元(約15兆円)の見込みと示されている。
中国のEC市場規模はまさに、巨大化しており、米国を抜き世界第1位のEC市場である。
中国の越境ECでは越境ECどうしの競争も激化しており、Amazonさえも苦戦を強いられいた。ところが、2016年、越境ECアマゾンの「Amazon海外購」は大きなユーザーメリットを武器に新規ユーザーを獲得し、拡大が加速した。
今回はこのAmazon中国の越境EC「Amazon海外購」について見ていこう。
Amazonが中国で展開している越境ECサイト「Amazon海外購」はアクティブユーザー数は、ここにきて大幅に増加している。
Amazon中国の「海外購」がスタートした、2014年から2016年12月度のアクティブユーザーを比較すると23倍に増えている。
2016年からは、越境ECにAmazonUKの商品を追加し、Amazonはアメリカからの単一商品の販売から、イギリスを含め、多国商品販売へと転換した。
さらにプライム会員サービスとして、越境ECに特化した、国際配送を無料にするサービスを開始した頃から、「Amazon海外購」を利用するユーザーは急増加している。
越境EC「Amazon海外購」
中国消費者の越境EC利用の動機を調べると、まず、上がっているのが「商品価格が安い」、「商品の品質保証がなされている」というのがある。
中国の場合、海外の商品を小売店で買うより、越境ECで買ったほうが、「商品価格が安い」という実情がある。
これは、中国の場合、流通経路が複雑で、地方の小売店で販売されるまで、中間代理店が多く存在し、その度に手数料が加算され、例えば、日本で1000円の商品が中国の小売店で販売されるまでに、価格は4500円と高騰する。
一方、越境ECの場合は中間代理店は存在しないため、関税と配送料で、日本で1000円の商品は2400円程度で購入することができるという価格差がある。
また、商品によっては課税されずにすむ商品もあるので、さらに安く買える商品もあるだろう。
「良い商品をできるだけ安く買いたい」というユーザーニーズは、どの国でも同じである。商品価格がここまで違ってくると、中国では、海外の良い商品は越境ECで買ったほうが良いというのが、当然の心理である。
2016年12月、「Amazon海外購」のアクティブユーザ数は、2014年のスタート時点と比べ23倍まで増えた。
Amazon中国のアンケートでは2年以内に利用した越境EC利用者は50%を越えており、その中で「Amazon海外購」は、越境ECで多くの新規ユーザーを獲得している。
その大きな要因となっているのが、「Amazon海外購」プライム会員を対象とした、1注文あたり合計200元(約3,000円)以上であれば、配送料が無料となるサービスだ。
また、プライム会員は中国国内の商品に限れば、注文金額に関わらず、どこでも配送料無料なのである。
さらに、このプライム会員サービスには30日間のお試し期間があり、そして、2017年2月28日までにプライム会員に加入すれば、通常年会費が388元(約5,820円)のところを188元(約2,820円)になる、という大きな特典付きなのである。
Amazonプライム会員サービスに、越境EC配送料無料といったアドバンテージをもたせた、このサービスは大きな魅力に映るだろう。実際には昨年の「ブラックフライデー」での取扱高は、2015年実績の2倍となり、「シングルデー」(独身の日)イベントでは前年度の6倍の売り上げだったようだ。
今回、Amazon中国は2016年の越境ECに関するレポートを発表した。レポートによると、Amazon中国で越境ECを利用者する人の特徴は「若者化」「高学歴」「高収入」の3つだとしている。
越境ECユーザーの8割近くが35歳以下。さらに、9割以上のユーザーが大学卒業または、大学以上の学歴を持っている。月収は5000元(約8万3千円)以上で越境ECユーザーはモバイル端末を使うことが多く、子どもがいる世帯の家庭が越境EC利用の中心になっているという特徴もある。
また、利用者が多いのは、北京、上海、広州、深セン、成都などの大都市が中心で、これらは輸入品の実店舗の展開先と重複している。
Amazon中国の越境ECに関するレポートによると、中国国内の製品不信から、越境ECで海外の安心・安全な製品を購入するケースが大幅に増加している。
越境EC「Amazon海外購」で、最も人気があった商品カテゴリーは、ファッション関連が1位となっており、2位が靴。2015年に8位だったマタニティ関連商品は3位に上昇したとしている。さらに、2015年は9位だった化粧品は、2016年には4位に躍進している。
また、人気ブランドを見ると1位のカルバン・クラインを筆頭に4位のノーティカ、5位のティンバーランド、8位のLEEなどのファッションブランドが人気である。2位のComotomoは哺乳瓶などの製品、3位のサーモスは水筒、ボトル、マグカップを扱うメーカーだ。
このほど、富士経済は「中国向け越境EC市場の実態と今後 2016」を発表した。報告書によると、日本から中国に向けた越境EC市場は急拡大を続けており、2016年は613億元(1兆158億円)が見込まれるとし、さらに、2019年には1,270億元(2兆1,044億円)まで日本から中国に向けた越境EC市場は拡大するだろうと予測している。
中国で人気のある日本商品は、化粧品や雑貨、衣類、食料品、家電などである。 商品カテゴリー別では生活雑貨、ビューティ関連などの割合が高い。 生活雑貨ではベビー用品のおむつが人気で、ビューティ関連ではスキンケアを中心とした化粧品やシャンプー、ヘアケア商品などの需要が多い。
また、衣類などファッション系ではベビー・子供服、インナーウェア、マタニティウェアなどの販売が増えている。
家電は炊飯器や空気清浄機などインバウンド消費で人気の商品が売れており、食品では菓子類や飲料(リキッド、茶葉類)が中心で、「フルグラ」「じゃがポックル」(共にカルビー)などの家電同様、インバウンド消費での人気商品が売れ筋としている。
日本から中国に向けた越境EC市場の人気商品は、ベビー用品のおむつとスキンケア化粧品に需要が集中しており、日本の商品を越境ECで購入する利用者は、Amazon中国の利用者と同様、子どもがいる家庭の35歳以下の女性が中心のようだ。
今後、さらに中国で需要を獲得するためには、越境ECサイトの知名度向上とそれに向けた新商品発売イベントの開催や、セールイベントへの投資が必要である。
中国を中心とした、越境EC市場は今後も購買力を増し、伸びてゆくだろう。
Amazon中国は、大きなプライム会員メリットを提案することで、進出は難しいだろうと言われていた、中国EC市場に進出しつつあるようだ。
また、中国の消費者は日本の製品に対して安全・安心・高品質といったブランドイメージをもっており、特に雑貨・日用品、美容品、ファッション等などに購買意欲が高い。
Amazon中国のように、中国の越境EC利用者対し大きな活用メリットを提案することで、中国EC市場の新規開拓、展開に大きな成果をもたらすことが期待できるだろう。
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