4月28日、日本、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が署名した、地域的な包括的経済連携=RCEP協定が内閣で承認された。
RCEP協定は世界のGDP、貿易総額、人口の約3割を占め、日本の貿易総額のうち約5割を占める大きなものだ。
この影響力はTPPなどより大きく、アナリストらによるとRCEPは、北米自由貿易区やEU関税同盟と同レベルに達するという。
今年の年末には「RCEP」は発効される見通しで、このコロナ禍、アフターコロナに向け東アジアに目を転ずる時期かもしれない。
今回は、このRCEPの内容とポイント、RCEPが越境ECに与える大きなメリットについて解説する。
(1)そもそもRCEP協定とは
(2)RCEP加盟国の貿易の自由化、関税撤廃品目
(3)RCEPのポイントは中国
(4)RCEPはAsian越境ECに大きなメリット
(5)まとめ
RCEP協定とは、アジア太平洋地域の経済連携の新たな枠組み「地域的な包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership)協定」のこと。
この協定はコロナ禍の2020年11月15日に署名された。
加盟国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心にした国家群(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミヤンマー、ラオス、カンボジア)に日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドが加わった15カ国である。
この15カ国の協定加盟は世界経済に与える影響は大きいと予測する。
RCEPは加盟国の人口だけでも約23億人(世界人口の3割)に達し、また、参加国の国内総生産(GDP)は合計約25兆ドルで、世界経済の約25%を占めている。
つまり、世界最大規模で、最も影響力のある自由貿易協定となるのである。
概要は、参加国全体で9割以上の品目について関税を段階的に撤廃するというのが主旨で、段階的な関税撤廃に加えて、サービス貿易・投資の自由化、知的財産や投資の保護、電子商取引の促進をはじめとする経済ルールなども盛り込まれている。
RCEP協定の対象分野は、物品の貿易、原産地規則、税関手続及び貿易円滑化、衛生植物検疫措置、任意規格、貿易上の救済、サービスの貿易、自然人の一時的な移動、投資、知的財産、電子商取引など多義にわたっている。
ここでは主要項目である物品の貿易である「関税の撤廃品目」について見ていく。
日本製品で加盟国向け輸出関税が撤廃されるものは、工業製品が多く、14カ国全体で約92%の関税が撤廃される。
電気自動車用のモーター、蓄電池やガソリン車用のエンジン部品などである。
その他、鉄鋼製品、家電製品、化学繊維、繊維製品などの関税も撤廃される。
さらに、食品系として、中国向けのパックご飯等、米菓、ほたて貝、さけ、ぶり、清酒など。
韓国向け菓子(キャンディー、板チョコレート)、清酒。
インドネシア向けの牛肉、醤油などの関税が、RCEP発効後、即時関税撤廃・削減、または、段階的な撤廃となる。
輸出ばかりではなく、日本の輸入関税が撤廃となるものがある。
食品では、鶏肉超製品、冷凍の野菜、冷凍の枝豆、タコ、中国の紹興酒、韓国のマッコリなどが関税が撤廃される。
また、化学工業製品や繊維製品なども関税を即時撤廃又は段階的に撤廃される。
輸入品目として、日本の重要5品目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)については、関税削減・撤廃から除外となっている。
今の世界経済を牽引しているのはアメリカと中国である。下の図は2019年の日本の輸出、輸入に関する割合である。
日本の輸出に占める割合はアメリカは19.8%、中国が19.1%である。
輸入においても、中国は23.5%、アメリカは11%である。
RCEP協定において、この中国が加盟している意義は大きい。
RCEPが発効されれば、日本製品に対する中国側の関税が段階的に、現行の8%から約86%も無税になる。
中国向け自動車部品や家電、繊維製品、お菓子、清酒といった商品取引が加速し、日本にとっては大きなメリットとなるだろう。
ここまで内容から、RCEP協定の関税の削減・撤廃が段階的に実施されれば、日本は東アジア諸国から安価な商品を購入したり、さらに、東アジアユーザーは日本の高品質な商品を安価に手に入れることが可能となる。
特に市場の大きい中国へは、今より活発な需要と供給が期待できるだろう。
また、物品の貿易に伴う税関の手続きの簡素化、ルール化も協定には含まれており、商品の発送や受け取りにかかる時間が短縮され、さらに対14カ国との商品取引を活発化させることだろう。
そして、電子商取引、越境ECについては、電子署名や消費者保護の規定、電子的送信に対する関税不賦課、コンピュータ関連設備の設置要求の禁止などが盛り込まれており、アジア向け越境ECの障壁が一段と低くなり、安心して越境ECを利用しやすい環境となるだろう。
また、日本政府もこのRCEPにおける越境EC事業による販路拡大を後押しする動きもある。
読売新聞によると、2020年、日本政府は農林水産物・食品の輸出拡大に向けて方針の取りまとめを行った。
それは、海外での需要の高い品目を「有望品目」として、農林水産省、経済産業省、JETROが集中的に支援するというもので、輸出品目として牛肉、豚肉やリンゴ、ブリ、ホタテ貝、菓子、お茶、清酒などが想定されている。
このような方針が具体的に実施されれば、コロナ禍で大きなダメージを受けている生産者やメーカーは東アジアに向けた販路拡大にシフトする流れができるだろう。
また、国としても、それに伴う補助金や金融公庫による支援など大きく打ち出してくるだろう。
RCEP協定は東アジアにおける大規模な自由貿易圏の形成であり、越境EC事業者にとっても、前向きな効果が期待でき、越境ECは東アジア圏においてアメリカ市場以上に大きく進展、拡大するだろう。
4月28日の日経新聞のニュースにもあるが、早ければ、2021年末にも発効されるRCEP協定。
経済規模、人口、貿易額のいずれにおいても世界の約3割を占める世界最大の自由貿易区が動き出す。
今、コロナショックで、事業者の目は海外への販路拡大に向けられている。
既に海外進出については、中国や台湾などに取り組んでいる事業者もあると思われるが、アフターコロナに向け、ASEANへの進出のための越境EC構築、モールへの出店など取り組まれることをお勧めする。
参考: