10月20日、タイでは新型コロナ感染リスクが低いと判断した一部の国から観光客の受け入れを再開し、第一号には最初は中国・上海の人たちの観光受け入れが始まった。
これはコロナ禍の中、「特別観光ビザ取得」による外国人観光客の入国許可を認めるというもので、日本も現在、海外観光客の入国再開に向けて動き出しており、参考とすべき事項となるだろう。
タイは11月1日現在で、コロナ感染者数は3,784人、死亡者は59人とかなり少ない。
コロナ感染者も一桁状態が続いており、コロナを押さえ込んでいる。
ただ、現在も非常事態宣言が続いており、経済は停滞している。
今回は、このタイのEコマース、越境ECについて見て行こう。
タイといえば海と山の織りなす大自然、さらに、歴史ある寺院や遺跡など点在する観光文化都市といったイメージがある。
GDPの2割は観光収入というから、この新型コロナ禍での損害は大きいものだろう。
タイの国土面積は、51万4,000平方キロメートル(日本の約1.4倍)であり、人口は6,971万人(2020年調べ)となっている。
インターネットユーザーは5,200万人(人口の75%)。2016年に4Gによる高速データ通信サービスの開始と、安価なスマートフォンの市場投入により、一気にモバイルによるネットコミュニケーションが浸透し、2020年には9,339万人(人口の134%)の利用となった。
同じようにタイのEC市場も2009年は約170億バーツ(約567億円)だったが2018年では約751億バーツ(約2500億円)まで拡大した。
インターネット普及率は日本に比べると低いが、スマホ経由でインターネットを閲覧するユーザーの率は85.5%と非常に高く、それに伴い、スマートフォンからのECサイト利用率が高いと考えられる。
日本貿易振興機構JETROの「タイにおけるオンライン日用品市場(EC)に関する調査」によると、消費者側から見た主な購入品目を下図に示した内容である。
タイの人々がオンラインで購入したことがある品目の上位は、①ファッション(44%)、②美容・健康(化粧品、サプリメント、医薬品)(33.7%)、③IT 製品(26.5%)、④家庭用品(家電、台所用品、家具)(19.5%)、⑤フードデリバリー(18.7%)となっている。
ファンション関連商品や化粧品、美容、健康食品など、消費者の中心は若い女性のようだ。
また、購入金額(2018年の調査)は、月額平均で1,480バーツ(約5000円)でオンラインショッピングの利用も月1回が最も多く38%、月2〜5回利用するが、18%である。
今月11月は、中国を中心とした毎年恒例の11.11(シングルデー)が、このタイでも開催される。新型コロナの影響でタイでも「巣ごもり消費」による、大きなEC売り上げが予想される。
タイのインターネットユーザーのネット利用は平均で6時間となっており、日本の平均3時間45分に比べ非常に長い。職場ではPC、家庭ではスマートフォンなどでインターネットを利用している。
特徴はスマートフォン経由での利用が85.5%と非常に高いことつまりECもスマートフォンからの商品購入が一般的であるということである。
さらに、スマートフォンアプリ利用の中で多いのが、SNSアプリの利用率が高い。
SNSの利用は、以前はネット掲示板やネット検索などから情報を得て、商品購入を決めることが多かったようだが、スマートフォンの普及とともに、SNSから情報を得て商品を購入するというパターンだ。
特に利用の多いSNSは、Facebook(Facebookの利用率は94%)やLINE、Instagramで、それらSNSから情報を得て、購入に至るケースが増加している。
タイのEC市場へ進出する際は、SNSを活用したマーケティングが必須である。
現在、タイでは外出自粛で屋外広告など効果がないことから、大手企業ではライブコマースによる商品の宣伝、販売など行う企業が増加している。
タイで多くの人が利用している、EマーケットプレイスShopeeは「Shopee Live」というライブコマース機能を2019年3月から設置した。
また、Lazadaも2019年に「Lazada Livestream Competition x Fashionista」というキャンペーンを行っている。
ライブコマースは、タイの人々のリアルタイムで、ネット上での会話から生まれる楽しさやリアルタイムに情報のやりとりができるなど魅力となって「娯楽としてネットショッピングを楽しむ」タイの人々に受け入れられているようだ。
タイでは、クレジットカード決済が主流となっています。
2018年の大規模EC事業者の決済手段をみると、クレジットカード、デビットカード決済が、42.7%。次に、インターネットバンキングが27.2%。QR Paymentが10.7%なそとなっている。
ECサイトもクレジットカード、デビットカードだけではなく、LINE Payなどのウェブマネーも使用できる。
タイは渋滞が多く、物流など心配なところだが、JETROの資料「電子取引開発機構(ETDA)」によると、タイの大規模EC事業者の配送手段をみると、外部配送会社の利用が45%と最も高い。次に自社配送の31%、郵便局の配送は24%となっている。
タイでは売り上げトップのマーケットプレイス「Lazada」では、自社物流だけではなく、複数の国内物流会社や郵便局、日系・韓国系物流会社、グローバル大手などを使い分けて対応している。
特に、2006年設立の、物流企業「KERRY EXPRESS」は、Lazadaなど人気ECサイトの取引を開始することにより、急成長を遂げている。
ここでは、タイの有名プラットフォーム3つを紹介する。
タイでは「Lazada」と「Shopee」がECを占有している。その他では「JD Central」などが続いている。
「Lazada」はタイのAmazonと呼ばれ、会員数は約1,000 万人を保有する、タイでは最も知名度の高いショッピングサイトである。
「Lazada」はタイ以外にも東南アジアの各国に展開しており、越境ECでの東南アジア進出には「Lazada」に出品するのが第一歩である。
販売上位は、IT 機器・アクセサリー(12.2%)、テレビ・家電(2.1%)健康美容
(11.2%)などとなっている。
「Shopee」は、モバイル特化型ECサイトとして、利用者シェアを大きく拡大させている。
ショッピングアプリも提供しており、キャッチコピーは「携帯電話上のオンライン市場」。
購入率の高い商品は、Lazadaとあまり変わらないが、ファッション、美容関連商品がより多く購入されている。
平均購入単価は、Lazadaより低いが、Lazadaよりも価格が安い商品が売れることや、アプリの使いやすさなどで今後ますます拡大が予想される。
「JD Central」は2018年、中国の大手ネット販売のJD.comが、タイの大手セントラルグループと協同出資で運用を開始したECプラットフォームである。
会員数は約300万人、2018年の売り上げは、約4億5,800万バーツ(約15億3,800万円)。
よく購入される商品は、モバイル機器、パソコン&事務機器、電子機器、食品、ベビー、
美容健康、ファッションなどとなっている。
2019年のタイからの訪日客数は131万人を超え、国別の訪日旅行者ランキングでは6位となっている。
タイの人々の日本への人気の高ささから、タイには大きなインバウンドマーケットがあることが分かるだろう。
タイは、現在新型コロナで感染者は減少しているが、外出自粛でこれまで、ネットショッピングなど行ったことがない人でもネットでの買い物の利便性を知り、Eコマースでは「巣ごもり消費」の拡大している。
そして、タイで最も利用されている、Lazadaでは7,500万点の購入商品のうち、80%が中国からの商品だったと言われている。
タイの人々はすでに、中国からの商品をLazadaから越境ECを利用して商品を抵抗なく購入しているのだ。
越境ECを抵抗なく利用しているタイの人々にとって、日本の商品も購入もLazadaやShoppeeなどから購入されている。
JETOROの調べによると、日本の人気商品は、トップは飲料・食品(市場規模約1,655億バーツ(約46億ドル))となっている。
タイの人々は日本の食品、特に「甘いお菓子(和・洋)」を好むようだ。次に多いのが美容健康商品の化粧品・サプリメント(約40億ドル)となっている。
女性の「美しくなりたい」という欲求に訴求した、例えばDHC商品や白肌風呂、角質ケア商品などがよく購入されている。次に家電などの電気電子製品(約15億ドル)となっている。
タイの越境ECなどの輸入関税は、大部分の品目には従価税(価格が上昇するほど税収がふえ、価格が下落するほど税収が減ることになるので)が課せられる。そして、輸入規制品目ではEC特有の輸入規制は今のところ無しとなっている。
タイのEC市場は、2018年の751億バーツへと大きく拡大しており、2023年には2倍の1,512億バーツ(約5,050億円)にまで拡大すると予想されている。
インターネットインフラは整備されており、決済や物流の問題も改善され、今が越境ECでの販売のチャンスと言える。
タイに進出する際は、SNSを活用した企業マーケティング施策を行い、まずはLazadaへの出品から行って見てはいかがだろう。
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