今回は、前回に引き続き、経済産業省「平成29年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」報告書に基づき、国内のEC市場の状況を中心にまとめてみた。
報告によると、日本国内のBtoC-EC市場規模は、16兆5,054億円。前年より9.1%増加したと発表されている。 各分野では物販系分野で8兆6,008億円、前年比で7.6%の伸び、サービス系分野は5兆9,568億円、伸び率は11.2%、デジタル系分野で1兆9,478億円、伸び率は9.5%であった。
伸び率ではサービス系分野(旅行サービス、飲食サービス、チケット販売、金融サービス、理容美容サービス)が大きく伸びているようだ。この伸長の背景には昨年は旅行や宿泊などネット予約が可能店舗が急増したことが影響している。
今回は2017年の国内EC市場の現況のEC化率、各カテゴリー別の状況などについて見ていこう。
2017年のBtoC-EC市場規模の全体は16兆5,054 億円という推計結果となった。2016年と比較すると、金額は1兆 3,696億円増加し、伸び率は 9.1%と増加率については前年の9.9%に比べると多少鈍化したようである。 伸び率については、鈍化がみられるものの、EC化率は上昇しており、物販系分野のEC化率は2016年の5.43%に対し2017年は 5.79%となっている。
各分野別の市場規模をみると、物販系分野が8兆6,008億円で伸び率は 7.5%、サービス系分野では5兆9,568億円で伸び率は11.3%、次いでデジ タル系分野が1兆9,478億円で伸び率9.5%となっている。
2016年と伸び率を比較すると、物販系は10.5%増から7.5%へ減少し、サービス系分野は9.2%増から11.3%増へ、デジ タル系分野は8.9%増から9.5%増へ推移しており、2017年の各分野での市場で大きな成長が見られたのは、サービス系分野だったようだ。
そして、物販系、デジタル系は市場規模拡大ペースが少しだが、鈍化したようである。
伸び率については各分野で相違があるようだが、各分野のEC事業者にヒヤリングを行った結果を総括すると、市場全体は引き続き活況であり、市場成長の阻害要因となる大きな課題は特段見受けられないと記している。
2017年の特徴としては、インターネット利用全般にわたりスマートフォンの利用が2016年に続き、さらに拡大した1年であったようだ。
物販、サービス、デジタル各分野にわたり、スマートフォン経由での取引額が増加傾向にあり、下図は物販分野におけるスマートフォン経由のBtoC-ECの市場規模の推計だが、3兆90億円で、2016年の2兆5,559億と比較しても伸び率は17%でスマートフォン経由で物品を購入する割合は引き続き増加している。
物販分野におけるスマートフォン経由BtoC-EC市場規模3兆90億円という金額は、EC市場の8兆6,008億円の35.0%に相当する金額である。
スマートフォンでの購入内容においても商品によってばらつきがあり、スマートフォン経由でよく買い物されるカテゴリーは「衣類・服飾雑貨など」であり、50%強と推定されている。
次いで、「書籍、映像・音楽ソフト」「化粧品、医薬品」 「雑貨、家具、インテリア」などのカテゴリーが約35%と続く。 スマートフォン経由で購入率が高い、「衣類・服飾雑貨など」はやはり、女性や 若年層といったファッション・アパレルに高い関心を持つ消費者層が多いことを示している。
若い世代が、スマートフォンを持ち、買い物をすることによって、EC市場を牽引していることは明らかである。
物販系分野の商品毎のEC市場規模および EC 化率は下図の通りである。
市場規模の大きい順に、「衣類・服装雑貨等」は1兆6,454億円(全体の19%)、「食品、飲料、酒類」は1兆5,579億円(全体の18%)、「生活家電・AV 機 器・PC・周辺機器等」は1兆5,332億円(全体の18%)、「雑貨、家具、インテリア」は1兆4,817億円(全体の17%)、「書籍、映像・音楽ソフト」は1兆1,136億円(全体の13%)であった。
これらは全て 1 兆円以上の市場規模である。これらの 5 カテゴリー合計で物販系分野の85%を占めている。
また、EC化率については、最も高いのは「事務用品・文房具」が37.38%、続いて「生活家電、AV機 器、PC・周辺機器等」の30.18%、さらに「書籍、映像・音楽ソフト」26.35%、「雑貨、家具、イ ンテリア」は20.40%と続いている。
サービス系分野のEC市場規模は下図の通りである。
サービス系分野で最もBtoC-ECの市場規模が大きいのは、旅行サービスである。「旅行サ ービス」の市場規模は3兆3,742 億円であり、全体の56.6%を占めており、対前年比で11.0%の伸びとなっている。
次いで「金融サービス」は6,073億円、「チケット販売」は4,595億円、「飲食サービス」は4,502億円、「理美容サービス」は4,188億円といている。
サービス系分野の中で、伸び率が最も高いのは「飲食サービス」(36.8%)である。 飲食サービスのBtoC-ECとは、レストラン等へのネット予約のことであり、近年ネット予約が可能な店舗数が急増したことで市場が拡大している。
次いで、「理美容サービス」が 28.4%と高い伸びを示している。理美容サービスのBtoC-ECとは、ヘアサロン、ネイルサロン、エステサロン等へのネット予約を指す。このカテゴリーも近年市場規模が拡大するだろう。
デジタル系分野で市場規模が大きいのは、「オンラインゲーム」である。市場規模は1 兆4,072億円で全体の72.2%の割合で大きい。次いで「電子出版」の587億円、さらに「有料動画配信」の1,319 億円、「有料音楽配信」の573億円となっている。伸び率では電子出版、有料動画配信が高くなっている点がデジタル系分野の特徴である。
フリマアプリが急激に市場を拡大している状況である。
報告によると、2017年1年間のフリマアプリの市場規模は4,835億円、伸び率は58%と大きな成長である。はじめてフリマアプリが登場したのは6年前の2012年であるが、僅か5年で5,000億円弱の巨大な市場が形成された形になる。
尚、フリマアプリの利用者は引き続き増加傾向にあるため、2018年以降も市場規模はさらに拡大するものと予測される。
現時点でBtoC取引の約94%は非ECで行われているのが実情だが、Eコマース取引が占める全体シェアは毎年上がっており、スマートフォンを中心とした国内BtoC-EC市場は今後も成長してゆくだろう。
加えて、今後は、INSネットデジタル通信網廃止への対応、消費税軽減税率への対応、さらに、2020 年のオリンピック開催に向けて宿泊施設の拡大、建設、また、外国人観光客に向けた様々な対応など、日本社会は大きな変化の渦中にある。
例えば、CAT(信用照会端末)については、外国人対応を見据え、IC チップ対応できるように端 末を入れ替える動きもあり、POS(販売情報管理システム)一体型の CAT の入れ替えも同タイミングで進むと推測される。 これら、社会全体に係わるイベントが、BtoB-EC市場の拡大に大きく影響を及ぼし、さらに拡大することが予想される。今後は、期待感を持って国内EC市場を注視していく必要がある。
記事出典:「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」