越境ECを始めるにあたって、重要なのが対象国の決済方法だ。
日本の場合のEC決済はクレジットカード決済が主流だが、国によってはペイパルなど第三者決済やデビットカード決済が主流の国もある。
新規のお客様を取りこぼさないためにも、できるだけ多くの決済方法があり、それらの中から、お客様が普段から利用していている決済方法で日本の商品を購入ができるのが良いだろう。 今回は、越境ECを行う場合、EC利用で海外(現地)の人が利用している主要な決済方法をアメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、台湾、中国、韓国、シンガポール、マレーシアの9つの国・地域に絞り、整理した。
アメリカで利用率が高いのはクレジットカードである。
下のグラフは2017年次の資料からだが、クレジットカードで55%、デビットカードで25%、第三者決済のペイパルで25%となっている。
最近ではモバイル決済(Apple Pay等)の利用も多いが、クレジットカード、デビットカード、ペイパルの3つの決済サービスはアメリカ消費者を対象とする場合は押さえておきたい。
イギリスもアメリカ同様、ネットショップの決済で最も利用されているのは、クレジットカード(55%)だ。
次にデジタルウォレットの44%、バンクカード決済の27%となっている。
イギリスでは、クレジットカードではビザカード、マスターカードが根強い人気がある。 オンラインショッピングでは、1人あたり平均2〜3枚のクレジットカードとデビットカードを利用している。
フランスで最も利用されているのは、モバイル端末の決済アプリによる、デジタルウォレットでの決済(46%)となっている。
次にクレジットカードの44%、ローカルバンクカードの38%と続いている。
フランスでは、オンラインショッピング利用者の約4分の1が、自分の希望する決済方法を提供している店舗での買い物を希望しているという。
フランス消費者をターゲットとする場合、クレジットカードの他に、デジタルウォレットでの決済方法も導入しておくべきだろう。
参考:Preferred payment methods in Europe 2021
国際貿易局WEBサイトの記事では、オンライン支払いの48.8%はペイパルを使用して行われており、クレジットカードとデビットカードは、オンライン決済の39.9%を占めている。
また、オーストラリア消費者はカード決済や銀行振込などもよく利用しているが、現在、最も急速に拡大しているセグメントは、オンライン取引の6.7%を占める「今すぐ購入、後で支払う(BNPL)」だと説明している。
台湾の場合のEC決済の主流は、クレジットカードが76.9%、コンビニ支払いが63.5%である。
台湾ではコンビニ店舗数は1.1万店もある。これは、人口2000人あたりに1店舗という計算になり日本と同等の比率だ。
台湾ではこのようにコンビニが普及している点と、台湾消費者の商品を受け取り、しっかり内容を確認してから決済するという商習慣から、コンビニ決済、代金引換、ATM振り込みによるEC決済が上位となっている。
中国では不正が多いという理由から、クレジットカードは普及していない。
代わりに普及したのが、キャッシュレス決済のアリペイ(支付宝)である。 下のグラフは、中国のモバイル決済のシェア率を示したものだが、AliPay(47%)、WeChatPay(17%)、UnionPay(14%)となっている。
これらは中国3大決済であり、越境ECで中国をターゲットとする場合は、この3つの決済方法は押さえておきたいところだ。
参考:中国3大決済、なんで3つもあるの?特徴の違い、使い分け方を解説!
韓国では、キャッシュレス決済比率が90%を超えており世界で最も高い比率となっいる。
キャッシュレス化が最も進んだ国として、その決済方法もNaver PayやKakao Payなど多様化している現状がある。
ECサイト決済では、下のグラフにあるようにクレジットカードとデビットカードが52%と最も多い。
次に多いのが口座引き落としで16%。次が銀行振込の10%である。
参考: 「韓国の決済事情を網羅」 キャッシュレス化世界No.1
シンガポールにおいて、EC決済で最も利用が多いのは、クレジットカードで67%となっている。
シンガポールのクレジットカード普及率は非常に高く、1人あたりのクレジットカード保有枚数の平均は3.3枚で、日本人の平均よりよりも高い。
クレジットカード決済以外では、モバイルアプリによる電子決済が10%、インターネットバンキングなどの銀行送金が10%となっている。
参考:各国の決済事情シリーズ 「シンガポールの決済事情を網羅」
マレーシアでは、銀行送金(45%)がEC決済では最も利用されている。
なぜなら、マレーシアでは、Maybank、CIMB Bank、RHB Bankといった主要大手銀行は、銀行残高を確認するだけではなく、送金や支払いなど”手数料なし”で利用できるモバイルアプリの存在が大きい。
それらモバイルアプリは”手数料が必要ない”ため、消費者は年会費が必要なクレジットカードよりインターネットバンキングを活用するのである。
参考: 各国の決済事情シリーズ 「マレーシアの決済事情を網羅」
越境ECでは、最も商品を売りたい国・地域の消費者がよく利用するEC決済方法を導入することが基本である。
ここまで見てきたように、越境ECでを行う場合は、クレジットカード決済、主要銀行と紐付いたデビットカード決済、ペイパル、アリペイ等第三者決済は導入しておきたいものである。