アメリカは世界のEC市場で中国に次ぐ2番めに大きな市場を持つ国である。
2019年のEC市場規模を示した資料によると、中国は19,348億ドル(約209兆円)、次いでアメリカの5,869億ドル(約63兆4,000億円)、3位にイギリス1,419億ドル(約15兆3,000億円)となっている。
2020年アメリカEC市場は、新型コロナの影響で、EC売上は全体で約25%増加し、大手EC企業は新規雇用を拡大させた。
そして、2020年のEコマースの特徴として、新型コロナの影響で実店舗など対面販売は減少したが、ネットで注文して店舗の駐車場で受け取るカーサイドピックアップが浸透した。
今回は、そのようなアメリカEC市場で、越境ECを活用してアメリカ消費者に向けて販路を拡大する際の関税、決済、配送、輸入規制品、EC法など、注意しなければならないポイントについて解説する。
越境ECは世界的に発達しているが、特に中国、アメリカは市場規模が大きく、年々成長している。
経済産業省、公表の「データ駆動型社会に係る基盤整備(平成30年版)」によると、日本・中国・アメリカ3か国の取引ベースで見た越境EC市場規模は、中国が3兆6,652億円、アメリカは1兆5,569億円、日本が3,175億円となっている。
2019年アメリ消費者が日本から越境ECを通じて商品を購入した金額は、9,034億円と前年比9.7%の増となっている。
経済産業省によると2018年から2022年の越境ECのポテンシャル推計値は、アメリカでは約1.69倍、中国は約1.64倍の市場規模に成長すると予想している。
越境ECは日本ではあまり馴染みのないワードだが、アメリカでは、日本以上に越境ECビジネスを取り入れることが浸透している。
新型コロナ禍でインバウンドが壊滅的打撃を受ける中、海外旅行から越境ECに流れる動きが増加し、越境EC市場規模は今後ますます大きくなっていくことが想定されている。
ここではアメリカ向け越境ECを行う際、押さえるべき、アメリカの関税、決済サービス、配送、輸入規制品、さらにEC法について解説する。
越境ECにおいては、国をまたぐ商品には、必ず関税は発生する。
関税は商品を受け取る側に支払いの義務があり、商品の内容によって金額が異なるので注意が必要である。
アメリカの場合、商品は品目HSコードで細かく分類されており、これらのコードにより税率が決まっている。
コードは品目ごとに4桁の基本品目分類番号があり、さらにその後尾に2桁、4桁の品目の種類を指し示す番号が振られている。
具体的にはアメリカ関税率表(https://hts.usitc.gov/current)をダウンロードして確認するか、品目HSコードが分かる場合は、関税料金データベース(https://dataweb.usitc.gov/tariff/database)で具体的に調べておくとよいだろう。
JETROの「アメリカの関税制度」ページ:https://www.jetro.go.jp/world/n_america/us/trade_03.html
決済においても、関税と同様でその方法が異なり、その国に合わせ、よく利用される決済方法を用意しなければならない。
アメリカはキャッシュレス決済、つまり、クレジットカード、デビットカードなどが以前から浸透している。
2018年のECにおける決済統計であるが、クレジットカードが34%、Paypalなどの電子決済20%、デビットカードが19%の割合である。
また、近年、日本で導入が盛んなQRコード決済は、あまり普及していない。
アメリカ向け越境ECではクレジットカード決済、Paypalなどの第3者決済は最低網羅しなければならない。
国内の越境EC事業者に広く利用されいるのは、国際郵便EMS(国際スピード郵便)である。
EMSは、世界120カ国以上、海外EMS提供エリアに2~9日で届き、配達状況の追跡や損害補償サービスも提供されている。最大重量は30kgである。
現在、新型コロナの影響でEMSはアメリカへの配送を中止している。
アメリカ配送で利用できるのは、クーリエ便(国際宅配便)のDHLまたはFedExである。
クーリエ便は配送方法の種類が多く、集荷や配送時間帯指定や関税対応などの細かなサービスが充実している。
また、様々な商品の形状や重さに対応するだけではなく、商品によっては日本からアメリカまで1日で届けることが可能である。デメリットは、EMSに比べ料金が割高な点である。
現在のEMSで配送可能な地域はこちら「国際郵便物の差出可否早見表」で確認できる
また、DHLとFedExの概要については、こちらのブログ「【越境EC】EMSが休止の今 FEDEXとDHLを比べてみた」で解説している
アメリカの輸入禁制品には肉・肉類を含むあらゆる加工食品、特に食肉エキスを含んだ食品や果物、野菜がある。
食品、飲料、アルコール飲料全般は輸入規制されている。
越境ECでそれらを販売する場合は、発送前にFDA(米国食品医薬品局)へ事前通知(Prior Notice)を行うことが求められている。
また、医薬品はFDAの販売許可のない医薬品・処方薬、さらに化粧品の原料は安全性の面から成分規制を受けている。
携帯電話を含む各種通信機器など電波・周波数に関する製品についても電波規則の関連により、連邦通信委員会(FCC)の規格認証が必要である。
木製品(木を加工した商品)はレイシー法に基づき、申告が義務化されている。
また、土、樹木、木の片辺、種子に関しては、絶滅危機種保護の為、輸入が規制されている。
詳しくは、こちら「アメリカへ輸出する際の注意事項」を確認いただきたい。
アメリカ向けECビジネスを行う場合、経済協力開発機構OECD(The Organisation for Economic Co-operation and Development)のガイドラインを遵守する必要がある。
ガイドラインは下記8項目について規制、及び保護がなされている。
上記項目のガイドラインから逸脱した商行為は不公正とみなされるので、利用規約などでは十分注意し、明記する必要がある。
参考:「プライバシー保護と個人データの国際流通に関するOECDガイドラインの概要(日本語)」
さらに、2020年7月にはカリフォルニア州では、カリフォルニア州消費者プライバシー法「CCPA」が施行された。
これは、カリフォルニア州独自の個人情報保護に関する新規制法であり、ヨーロッパの「GDPR」同様のEC事業主が守るべき、消費者情報の取り扱いに関してのものである。
「CCPA」は今後、アメリカ全土に波及する可能性があり、さらにアップデートされたプライバシー法案、CPRA(California Privacy Rights Act)なども検討されている。
CCPAについて、詳しくはこちらの「知ってて損はない 中国とアメリカのプライバシー保護法」ブログを確認いただきたい。
それでは、アメリカのEC市場ではどのようなECサイトのシェアが大きのだろう。
2020年eMarker.comの調べによると、トップはAmazonの38.7%、次いで、Walmartの5.3%、3位にeBayの4.7%などとなっている。
これを見るとAmazonが圧倒的シェアを締めていることがわかる。
Amazon.comはグローバルサイトしても機能しており、日本からも出品が可能である。
自社サイトを運営する場合、まず、自社製品がどの程度売れるのか、売れ筋商品は何なのかなど判断材料として、Amazon.comなどECモールを利用すると失敗を最小限に食い止めることができる。
ここでは、Amazon、Walmart、eBayのそれぞれのメリットなど解説する。
アメリでは圧倒的なシェアを持つAmazonは、世界最大規模のオンラインショッピングサイトで、アメリカの他にも日本など世界16カ国に展開している。
圧倒的な商品数、配達速度の速さ、レビューシステムをいち早く導入し、このコロナ禍でも大きく成長している。
Amazon.comに出品するメリットは、日本でAmazon出品を利用していればそのままスムーズに手続きができる点や、「FBA(物流に関する代行サービス)」を活用すれば、アメリカのAmazonへ商品発送などを委託できる。
デメリットは、Amazonは出品ハードルは低いが、競合が多く商品ブランド構築までに時間がかかり、価格競争に陥りやすい点などがある。
アメリカ最大のスーパーマーケットチェーンであるWalmartは、今最も成長しており、2020年にはECシェアにおいても、eBayを抜き2位となった。
WalmartもAmazon同様、自社ECサイトを運営しており、このコロナ禍において、実店舗というメリットを武器にEC事業拡大に力を入れており、今後、成長が見込めるECモールである。
メリットは、Walmartは現在、第三者による出品者の増加に力を入れており、Amazonに比べ、比較的競合も少なく、今のうちにWalmartに参入することで、ビジネスチャンスを掴む可能性がある点である。
eBayは世界約30カ国に拠点を持つ世界最大のマーケットプレイスである。越境ECのアメリカ販売で、まず、実施したいのはeBayへの出品である。
eBayは基本的にはオークションサイトだが、固定価格での販売も可能で、Amazonと違い、販売者と消費者感の取引である点である。
メリットとしては、越境EC出店検討者向けにさまざまなサポートを提供している点である。デメリットとしては、最初は大口出品ができない点で実績を積み重ねて成果を出す必要がある。
eBayジャパンでは4半期ごとに、アメリカ、eBayでの売れ筋商品を公開しており、今年1月末にも、2020年年第4四半期の越境ECトレンドを公開した。
通常、日本の売れ筋商品と言えば、衣類、アパレルなどファッション系商品が人気が高いが、2020年は新型コロナの影響で、消費行動が変化しており、巣ごもり消費を反映した結果となっている。
日本の商品で売れている商品、1位、2位はポケットカード。
3位はDIYの充電式ドライバ、4位はナガオカステレオカートリッジ、5位は自動車補修用スプレイガンなどとなっている。
アメリカでは2020年11月後半から12月に渡ってサイバーウィーク&年末商戦が繰り広げられ、ご褒美需要として高価格帯商品が売上を伸ばすなど、趣味にお金を使う人も多く、ポケモンカードやビデオゲーム、ギターなどが好調で、eBayの売上も堅調に推移しているようだ。
参考:「イーベイ・ジャパン、2020年第4四半期の越境ECトレンドを公開」
今回はアメリカの越境ECを中心にその市場規模、アメリカ向け越境ECを行うときの注意点、さらにアメリカ3大ECモールなど解説した。
アメリカECは、中国市場より市場規模は小さいが越境EC参入のハードルは低いと言え、まだまだ、成長が見込める市場である。
今、新型コロナでインバウンドが壊滅的打撃を受ける中、アメリカでは日本の商品を購入できる越境EC市場は盛り上がっている。
アメリカ関税や決済、輸入規制、EC法などに注意し、アメリカ向け販路開拓、越境ECを検討してみてはいかがだろう。
タグ: amazon.com, eBay, アメリカ, 海外販売, 越境EC