
10月11日、CRM協議会は今年の「2022 CRMベストプラクティス賞」を発表した。
CRMベストプラクティス賞とは、「顧客中心主義経営の実現を目指し、戦略、オペレーション、組織の観点から顧客との関係を構築し、その成果をあげている企業・官公庁・団体を表彰するもの」である。
CRM賞は今年で19回目を数え、「大星賞」にはNTTドコモ(情報システム部) 、「継続賞」には大阪ガスマーケティング、セゾン情報システムズ、中日本高速道路、ビジョン、フォーラムエイトといった企業のCRM取り組み部署が受賞した。
今回は、「CRM(顧客管理)」について、その重要性やメリット・デメリット、CRMを導入し成功した事例などを紹介する。
MA(マーケティングオートメーション)と並んで、マーケターが耳にするツールとして「CRMツール」がある。 「CRM」とは、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の略で、一言でいえば顧客管理システムのことを指す。
「CRM」とは、その顧客は以前は何を買ったのか、男性か女性か、年齢、住所など諸々の顧客データを管理・分析して、マーケティングに活かす手法だ。
Eコマースにおいては、CRMツールを導入することで顧客データの分析結果をもとに、顧客一人ひとりに合わせたアプローチが可能となる。
様々な顧客に対して最適なアプローチができ、それにより売上げが向上し、顧客のリピーター化、ファン化へと繋がるのである。
EC市場は2020年からの新型コロナ禍の影響で急成長した。
2020〜2021年、EC市場規模の拡大はもちろんだが、独立系ECサイトの数も劇的に増加した。
下の図は「goo Srearch Solution」からの引用だが、楽天市場での出店数は2022年3月で5万5939店舗、2016年比の1.25倍の増。
BASEにいたってはコロナ以前の2019年から約2.1倍の170万店となっている。 このようにECサイトの増加によって、新規顧客を獲得するために必要となる獲得単価コストが上昇している。
今後は新規顧客を獲得することも重要だが、それ以上にコロナ禍で獲得した既存顧客に再購入を促し、「リピーターとして育成する」「ファンになってもらう」という「ライフタイムバリュー」を強化するCRMを活用した施策が重要となってくる。

ECサイトにおいてのCRMツールとは、顧客情報や商品の購入履歴などを管理、分析し、顧客に最適なアプローチをおこなうことができるシステムを指すものが多い。
CRMツールを活用すれば、既存顧客の「性別・年齢・職業」といった情報を収集、分析することで、自社のサービス改善や顧客一人ひとりに適切なアプローチが可能となる。
CRMツールで既存顧客のサイト購買履歴、行動履歴を分析した結果から、関連商品や類似商品など、レコメンド商品を提案することで、売上がアップし、長期的な利益になるつなげるというものだ。
ここではCRMツールのメリット、デメリットを整理した。
CRMでは各顧客のデータを蓄積して分析することができる。
過去の購買履歴や対応履歴情報、アプローチに対する反応などの情報を収集できることで、お問い合わせ時などの対応では、顧客ニーズに合わせた提案が可能となり、顧客満足度がアップする。
顧客の一元管理ができることは、CRMの大きなメリットである。
社内全員がいつでも顧客情報を参照できることで、伝達ミスや案内漏れなどが減り、トラブルやクレーム防止につながり作業効率がアップする。
CRMを活用すれば、顧客が「いつ」商品を購入するのか予測することも可能である。
各顧客ごとの購入金額や購入頻度、直近の購入日などの情報を基に、キャンペーンなどの実施時には、最適なターゲットに最適なタイミングでメルマガやDMを配信したり、優良顧客にはクーポンや優待券を送ったりすることができる。
各顧客情報は、一人ひとりの対応に利用できるだけはでなく、顧客全体の傾向を分析することで新たなマーケティング施策を打つ際の根拠となる。
CRM導入には、初期費用、維持費用などコストがかかる。 さらに、結果が直ぐには現れない、セキュリテイ対策が必要、などデメリットがある。
CRMツールは導入には、システムの初期費用や月額費用の「お金」のコストだけではなく、従業員への研修やルール作りなど、運用に係る労力コストも必要となる。
CRMツールを安定して運用できるまでには一定の時間がかかり、基本的には短期間で高い効果は期待できない。
CRMは良好な顧客関係を構築するためのツールである。時間とコストが必要である。
CRMは顧客の個人情報を取り扱うため、情報セキュリティ事故のリスクがある。
特に営業部門が社外へ外出する場合や、オフィス以外の場所で勤務するリモートワーク体制では注意が必要となる。
認証管理の徹底や最新のウイルス対策ソフトの導入、緊急時の対応の規定などしっかりしたセキュリテイ対策を講ずる必要がある。
「かわしま屋」は、オーガニック食品や無添加加工食品など約800品目を扱うECサイトである。
「かわしま屋」では、CRMツール「アクションリンク」を導入し、過去1年間で商品を購入した顧客に対し、再購入を促すメールを約2万件配信したところ、5%に当たる約1000件が再購入した。
アクションリンクは手作業で配信していた、売れ筋やオススメ商品の紹介メールを完全に自動化するツールである。
「ファンケル」は、化粧品・健康食品の老舗メーカーである。
化粧品ECサイトでは、初回のお試し購入は多いものの、リピート顧客による定期購入につなげることは難しいとされている。
リピーターを増やすためには、CRMを活用し、それぞれの顧客状況に合わせてアプローチすることが重要である。
ファンケルでは、顧客の年齢や性別、購入頻度、購買に至るまでの行動情報など、各種データをもとに個々の顧客に合わせた情報提供や商品提案を行う独自のシステムを開発し、パーソナルなコミュニケーションを通じて購入率の向上、ファン化につなげている。
飲食品や調味料を取り扱う「カゴメ」のECサイトは、CRMによりLTV(ライフ タイム バリュー)アップを実現した。
その一つが、コールセンターを中心としたCRM施策である。 コールセンターは顧客と直接コミュニケーションする部門ため、CRMにおいて特に重要である。
カゴメではCRMを導入し、各オペレーターに裁量権を与え、顧客それぞれにきめ細やかな提案できる体制に変革した。
それにより、6ヶ月後にはLTV(顧客生涯価値)が前年比の28%増を記録するなど、劇的な成果を挙げた。
CRMはリアルタイムで顧客情報を管理・分析できるシステムとして、「顧客満足度の向上に効果的」、「顧客アプローチの仕方を効率化できる」など、メリットが多い。
アフターコロナでは、新規顧客獲得に投資するより、既存顧客をリピーターに育てるためのCRMがより一層、重要になるだろう。
参考:
CRMベストプラクティス賞、顧客中心主義経営に取り組む12企業・団体が受賞