インターネット通販を利用すれば、いつでもどこでも欲しいものが手に入る、Eコマース全盛の時代。ここまでネットで買い物ができる時代になった背景には、小口多頻度配送を支える多くの物流の人的、機械的な下支えがあった。
しかし、ますます増え続ける配送量に物流業界の人的不足は進行し、これから先の時代は、物流のロボット化は急務と言われるようになった。 物流のロボット化とは、荷役作業、仕分け、在庫管理などを機械力を使って自動化することである。
日本の自動車、食品など、生産面の自動化・ロボット化は、世界トップクラスであるが、物流のロボット化においては、現在はまだまだ、普及段階である。
今回は、物流現場における問題点と未来を見据えたニトリ、アマゾン、中国JD.comのロボット化への取り組みなどを見ていこう。
オンライン販売の増大と多様化は、物流現場のロボット化を後押ししているようだ。 さらに、物流企業の人手不足も今深刻な問題となっている。
毎年10%ずつ拡大するEコマース市場と商品の種類、重量の多様化には人海戦術では超えることが難しい局面であり、さらに日本では少子高齢化による人手不足も課題となっている。アメリカではこのまま、経済成長が続けば、30年後には3500万人の労働力がさらに必要になるとの試算もある。
これら人員を全ての業界で取り合うことになるわけなので物流業界も人員の確保は十分にはいかないだろう。
そこで、それら問題を解決するために開始されたのが、物流のロボット化である。
物流のロボット化は、効率・コスト軽減の面からも急務といえる。物流倉庫では、入荷→保管→在庫管理→ピッキング→梱包(パッキング)→出荷という、これらの各部門において、ロボット化・IT化を推進し、省力化・無人化を図って行かねばならない。
後述するニトリの通販サイト向けに導入された、「ロボット倉庫」は積み上げられたコンテナの上をロボットが上からアクセスして商品の出し入れを行うもので、人間が歩くためのスペースの必要がなく、通路を確保する必要がないため、都市部の倉庫の省スペース化にもメリットがある。これらは、これまで人的作業で行っていた、ピッキングという仕事(伝票類に従って商品を選び出す)をロボット化したものだろう。
次に、今注目のピッキングロボットについて見ていこう。
今、物流倉庫の業務の効率化で注目を集めているのが、ピッキングロボットの開発、導入である。まだまだ、人の手作業によるところが多い仕事ではあるが、どのようなものがあるのだろうか? ピッキングロボットは大きく分けると定常型とモバイル型の2種類ある。
定常型とは作業員がピッキングステーションに停留しており、そこにロボットが指定商品の入った棚自体を持ってくるロボットである。作業員自身は定位置で商品棚を待っているだけでいい。作業員は棚から棚へ移動するコスト=時間を削減できるメリットがある。
代表的なのものは、Amazon社「Amazon Robotics(Kiva Systems)」である。
もうひとつは、今もっとも注目されているモバイル型ロボットで、ロボット自身が棚へ出向いてピッキング作業を行うタイプのものだ。Fetch Roboticks社「Fetch & Freight」システムではピッキングを行うFetchロボットと、取り出された商品を受け取り、バスケットに入れて運ぶFreightロボットに業務を分けて行うものだ。
これはピッキングという仕事自体を完全にロボット化したものである。 ピッキングという一連の業務を分解し、ロボット化することで、人的労働の省力化、効率化が可能となっている。
ニトリの通販商品を扱う物流倉庫では2016年2月から、ロボット倉庫「Auto Store」が稼働中だ。これは、隙間なく積み上げられたコンテナの上をロボットが縦横無尽の動きまわり、目的の商品の入っているコンテナを吊り上げ作業員の入っている作業員のところまで運ぶというものだ。
スタッフはピッキング業務を定位置で行うことができるために、作業負担を軽減でき、ミスのない効率的なピッキングを行うことができる。
これは想定ではあるが、スタッフの作業ミスを軽減するなどの生産性は、3.75倍の向上が期待できる。さらに在庫面積を40%削減できるなどメリットは大きい。
それでは、アマゾンの物流倉庫はどうだろうか? アマゾンは川崎FCに国内で初めて導入したロボット倉庫「Amazon Robotics(アマゾン・ロボティクス)」が稼働中だ。
これは、指定商品の商品棚の下に自走式ロボットが入り、商品棚を持ち上げ作業員まで持ってくるもので、作業員がピッキングのために商品棚まで歩いて行く必要がなく、商品の棚入れ時間とお客様の注文商品の棚だし時間の削減にメリットがある。
さらにこのシステムは、倉庫内での配送と、商品の保管を両立できるため、従来の物流センターより、大幅なスペースが節約できるという特徴がある。
ここまで代表的な日本の物流ロボットを見てきたが、中国はどうだろうか? 中国ではインターネット通信販売2位のJD.comが、2018年2月に世界初となる全自動の大型物流施設を上海にオープンし稼働する。
JD.comロボットの自動化技術を説明している動画を見ると、商品のピッキングから梱包、トラックへの積み込みといった物流倉庫内の作業をロボットが全ておこなうもののようだ。
そして、このシステムでもっとも主要な部分で採用されたのが、日本のベンチャー企業MUJIN(東京都墨田区)の多軸ロボットと独自コントローラーなのである。
JD.comは完全無人の物流倉庫を進めていく一方で、トラックによる配送業務の自動化「ラストワンマイル」、ドローンによる配送も研究、試験開発も進んでいるようだ。
物流業界は今や変革期にあるようだ。物流における様々な問題や課題に国や企業がどのように取り組むかが問われている。
これを変革のチャンスと捉え、ロボット化、AI化による効率化したシステム構築を推進できれば、商品やサービスの向上に繋がり、さらにビジネスの可能性は広がりを見せるだろう。
物流ではロボットを使って、少しでも仕事の負担を軽減すること。 そして、AIやビックデータを活用し業務効率化を実現するなど、最新テクノロジーを駆使したソリューションが、今後ますます重要になることは間違いないだろう。