今年も始まる「春節」、越境ECへの影響は?

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ここ最近、インバウント(訪日外国人旅行)といった話題を聞かない日はない。
ここ数年、訪日外国人の数は右肩上がりで増加しており、特に中国人観光客の訪日が大きい。爆買いブームは終わり、買い物から観光する・日本を体験することに目的がシフトしてきたと言われるが、中国では今月、1月27日(金)から2月2日(木)までの7日間が「春節」となり、大型連休となる。
今回は、先日発表された、観光白書の訪日外国人消費動向に関する発表内容と今月、27日(金)より始まる「春節」の概要、越境ECビジネスの影響などについて見てみよう。

 

●2016年のインバウンドはどうだった?

観光庁は昨年、2016年の訪日外国人消費動向調査を発表した。
発表された内容によると2016年は2,400万人の外国旅行者が訪日しており、これは前年度比の21.8%の増となっている。
消費総額は3兆7,46億円とこちらも前年度比7.8%増となり、過去最高を更新したようだ。
国籍別の旅行消費額を見ると、第1位は中国で1兆4,754億円(構成比39.4%)と最も大きく、次に台湾の5,245億円(同14.0%)、さらに韓国3,578億円(同9.5%)、香港2,947億円(同7.9%)、米国2,130億円(同5.7%)となっている。 2016年の10月〜12月の3ヶ月の集計を図にしてみたが、消費額は別として内容はほぼ同じで、中国、韓国、台湾の順となっている。
また、一人当たりの旅行支出費を見ると15万5,896円と推計され(速報値)と前年比、11.5%減とあり、特に中国では1人当たり旅行支出が前年比18.4%減少しており、爆買いが終了したことが、数値として示された形となった。
訪日外国人が増加した背景は、東南アジア諸国を中心にしたビザ緩和、円安による日本旅行の割安感や東京オリンピック効果、インターネット、SNSによる情報の拡散などが要因と言える。
今年は、今月27日より、中国を中心にした東南アジア地域では「春節」を迎える。この時期の訪日外国人、特に中国観光客の動向が気になるところだが、次に春節の概要や春節に対応するための越境ECについて整理してみた。

図表

訪日外国人消費動向調査平成28年10-12月期結果: http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000302.html

 

●「春節」とは

春節とは中国を中心とした、アジア地域の旧正月を祝う行事である。
今年、2017年の場合は1月27日(金)から2月2日(木)までの7日間が、国民の祝日として扱われる。 日本の正月休みのお祝いと同様で、この春節の時期は、中国では都市で働く人が地方へ帰省したり、新年のイベントが行われたりする。
中華圏の影響を受ける台湾・韓国・北朝鮮・ベトナムなどのアジア諸国でも同様に祝日として、制定され日本への観光旅行などの動きも大きい。
この「春節」による休暇は、日本以外の東南アジアでは主流となっている長期休暇であり、多くの企業も休暇をとる。国営機関も休みとなるので、税関業務などもストップし輸出が滞ることとなるので海外販売には注意が必要だ。

 

●訪日外国人旅行者の堅調な伸び

東日本大震災以降は確実に訪日外国人旅行者は増加している。
以前は韓国、台湾旅行者がトップだったが、2015年から中国旅行者数が4,993,689人とトップとなっている。 春節のこの時期は中国などでは大型連休となり、休みを利用し旅行に出かける人も少なくない。 中国交通運輸省によると、中国での春運(正月を中心とした特別運輸体制)」の旅客取扱量は29億7800万人を見込んでおり、前年比2.2%の伸び率と予想している。
また、中国の訪日旅行者は訪日外国人全体の約32%を占め、日本の観光ビジネスに大きな影響を与える存在となている。
特に、この春節の時期は中国など東南アジア各国からの観光客が訪れ、その経済効果は大きなものとなるだろう。

図表

訪日外国人総数: http://www.tourism.jp/tourism-database/stats/inbound/

17年春運の旅客量、29億7800万人予測: http://www.sankeibiz.jp/macro/news/161213/mcb1612130500007-n1.htm

 

●「春節」に中国人観光客はを何を目的に日本に来るのか?

中国人の爆買いは収まったとはいえ、やはり日本にくる目的のトップは「買い物」である。
ホットリンクグループであるトレンドExpressの「春節における訪日中国人消費動向の予測」によると、「買い物をしたい」がトップで、2位は「雪をみたい」、3位は「日本料理を食べたい」、4位は「温泉に入りたい」となっている。
「買い物をする」と「日本ならでは体験」を両立させた楽しみ方が主流になると予想されている。

ホットリンク、中国のSNS上のクチコミを分析 最大級商戦「春節」における訪日中国人消費動向を予測:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000148.000002235.html

 

●日本旅行の買い物では何を購入するのか?

昨年、2016年の春節では何が買われたのだろう?
こちらも、トレンドExpressの訪日中国人のクチコミから「春節」での、訪日中国人の消費動向を分析した結果によると、2016年春節期間に中国人が日本で購入したものは、1位「医薬品」、2位「化粧品」、3位「生活用品」、4位「健康食品」となっている。
2015年は「温水洗浄便座」が3位となっていたが、こちらは大きく順位を落としている。
2016年は「服飾」や「靴下・下着」などの衣料品の購入が大きくランクアップしている。これはトレンドExpressによると「団体旅行から個人旅行へのシフトが影響」としている。
団体旅行では、時間制約があり、なかなか購入できない、自分の好みの衣服や健康食品などが買える個人旅行に旅行スタイルに変わってきたと言える。

ホットリンク、最大商戦「春節」での訪日中国人の消費動向を発表: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000119.000002235.html

 

●「春節」に越境ECサイトでは何を行うべきか?

春節前後では中国をはじめ、台湾、香港、韓国、シンガポール、ベトナムなど多くのアジア諸国がこれを祝う、正月より正月らしくなり、一気に消費意欲が高まる期間だ。
この時期に備え、実店舗では取扱商品の確保はもちろんだが、越境ECではこの期間、キャンペーンを開催し、プロモーションを実施する必要がある。
春節前ではECサイトやSNSで春節セール情報や期間限定商品情報など、お得な情報を流すようにする。
春節中は訪日外国人が商品の写真を撮ってSNSで拡散しやすいように、商品セッティングを行う。
また、春節旅行者が本国に帰った後でも引き続き、ECサイトで商品を購入できるように、商品カタログやチラシに越境ECアドレスを大きく明記し、越境ECサイトで新製品やセール情報などサイトを通じで入手できるように整え準備しておきたい。

 

●まとめ

中国人の「爆買いニーズは衰えた」と言われる中、その訪日旅行スタイルは、「観光を楽しみながら、買い物も楽しむ」というスタイルに変わってきたようだ。
長期間の連休となる「春節」という行事は、中国を中心としたアジア諸国と取引を行っている越境EC運営者は、この一大イベントを押さえておく必要がある。

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