グーグルが爆発的成長を予測するインドネシアのEC市場

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インドネシアのEC市場は2018年の270億ドルから、2025年までに3倍の1000億ドルに達し、東南アジア最大の市場なると予測されている。
この予測は、米グーグルによる調査が発表したものだが、内容によると次のインドネシアの4分野について大きく成長すると予測している。
ひとつ目は、Eコマース通販(53%)、2つ目はオンライン旅行(25%)、3つ目は配車サービス(14%)、4つ目はオンラインメディア(8%)である。
インドネシアの人口2.7億人で世界第4位である。GDPの成長率も高く、さらに驚くのは東南アジアのユニコーン企業6社のうち4社がインドネシアの企業であることである。
インターネットインフラが今後、整備されれば、インドネシアのEC市場は予測以上の成長を遂げることは間違いないだろう。
今回はこのインドネシアのEC市場のポテンシャルついて調べてみた。

※ユニコーン企業とは、企業としての評価額が10億ドル(約1250億円)以上で、非上場で創業10年以内のベンチャー企業を指す。
現在上場しているフェイスブック社やツイッター社も、かつてはユニコーン企業であった。

インドネシアの基本情報

インドネシアは約17,000以上の島々から成り立つ世界最大の島しょ国家である。
観光地として有名なバリ島などがあり、石油、石炭など天然資源も豊富である。
人口も約2億7,000万人と世界第4位である。
また、現在インターネット利用者が急速に増加しており、ブロバイダー調査によると、2017年末で1億4,326万人で前年度比で7.9%の増加率である。
都市部ではインターネット環境は整いつつあるが、島々の地方部のインフラ整備が課題である。
下記にインドネシアの基本情報を整理した。

  • 国・地域名:インドネシア共和国(Republic of Indonesia)
  • 面積:191万3,580平方キロメートル(2018年、日本の約5倍))
  • 人口:2億6,189万人(2017年、出所:中央統計局、推計値)
  • 首都 :ジャカルタ 人口1,037万人(2017年、出所:中央統計局)
  • 言語:インドネシア語(インドネシアの公用語はインドネシア語だが、国内では300以上の言語が話されている)
  • 宗教:イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教ほか
  • 実質GDP成長率:5.2%(日本は0.5%)
  • 名目GDP総額:10億ドル(日本は549億ドル)
  • 一人当たりの名目GDP:3,871ドル(世界118位)(日本は39,305ドル(世界25位))
  • 対米ドル為替レート:1ドル≒14,267(ルピア) 1円≒131(ルピア)
  • インターネット利用率:56%(世界平均57% Digital 2019より)
  • ネット人口:1億2,300万人
  • SNS利用率:56%
  • モバイル端末の保有比率:133%

インドネシアのインターネットの特徴

海外の統計サイト「Digital 2019」によると、インドネシア人の56%がインターネットを利用し、SNSも56%と同等のパーセントである。そして、モバイル端末の保有率が133%と高い数値となっている。
このことから、インターネットはパソコンではなく、モバイル端末の利用が主流で、インフラの整備とともにスマートフォンを基盤としたインターネット産業が拡大すると予想される。
そして、現在、インドネシアでは、デジタル領域でのユニコーン企業が4社も存在している。その4社は配車サービスの「GO-JEK」、Eコマースの「Tokapedia」、同じくEコマースの「Bukalapak」、トラベルテックの「Traveloka」である。
インドネシア市場ではそれらユニコーン企業が、各種サービスやシステムを提供し、消費者を取り込むプラットフォーマーとしての存在感を発揮している。
また、インターネット規制は、ポルノ関連の規制がされており、海外のポルノサイトにはアクセスできないように検閲を行っている。
また、インターネットを通じてポルノ素材の配布または販売、ダウンロードなど行なった場合、処罰の対象となっている。違反者は最高で禁固15年または75億ルピアと刑罰も極めて重い。

インドネシアのEコマースの市場規模

2018年のインドネシアのEコマース市場規模は、前年比78%増の72億米ドル(約7,752億7,726万円)となっている。
ここからは、JETROの資料の要約になるが、Eコマースを利用するのは、20代から30代のミレニアム世代が最も多く、その中でも女性が多い。
ECサイトで購入頻度は、一月に一回と3ヶ月に一回が半数以上となっている。
ECサイトで購入する商品は、衣料品、化粧品、家電製品が主なものである。
3ヶ月間での消費金額は、1〜50万ルピア(約3,850円)が全体の50%を占めている。
地域で見ると、ジャカルタとスラバヤなどの都市部での購入率が高い。
利用するECサイトを見ると、最も多いのが、LAZADA、、次にTokopedia、Bukalapakと続く。20〜25歳で利用頻度が高いのは、Shopeeとなっている。

インドネシアで有名ECサイト

インドネシアの人々は平均で月に1回の割合でECサイトを利用している。
ジャカルタでは、いつも交通渋滞が起こっており、そのような街に住んでいる人にとっては、オンラインでショッピングできることは非常に便利だと感じており、利用頻度も高い。
ここではそのようなユーザーがよく利用する代表的なECサイトを整理した。
インドネシアではLAZADA、Shopee、Tokopediaが3大ECサイトと呼ばれている。
他に、Bukalapak、Blibliも有名である。それぞれその特徴を見ていこう。

インドネシアの主流なECサイト

Lazada

ラザダトップページ画像

Lazada」は、東南アジア最大級のECサイトに成長しており、アジアのAmazonとも言われている。
インドネシアにおいても、Lazadaは、今最も急成長しているEコマースと言える。成長の要因は、親会社のRocket Internetが集めた多額の投資資金から、その資金を使った積極的なセール、バーゲンなどの割引企画や、即日配送サービスの展開にある。

Shopee

ショッピーのトップ画面

Shopee」は2009年に設立されたシンガポールのECサイトであるが、インドネシアでも人気のECサイトである。
「Shopee」のユーザーは女性が多く、頻繁にコスメやファッション関連にセールを行っている。

Tokopedia

トコペディアのトップ画面

Tokopedia」はインドネシアでは、LAZADAに次ぐ人気ECサイトである。品揃えが豊富で、日用品や家具、家電から医薬品まで幅広く購入することができる。
Tokopediaは大手財閥のLippo Groupが提供する電子決済システム”OVO”を取り入れることとなり、今後の拡大が期待される。
「Tokopedia」はインドネシアに4つあるユニコーン企業のうちの一つである。

Bukalapak

ブカラパクのトップ画面

Bukalapak」もインドネシアに4つあるユニコーン企業の一つである。2010年に設立され、B2C、B2B、C2C、O2Oなど幅広い領域にサービスを展開している。
2014年にはモバイルアプリによるサービスも開始され、より手軽に商品の出品や購入ができるようになった。
Bukalapakは現在、インドネシア地方部の伝統的市場などと提携し、利用者の増加と活動地域拡大を行うなど、今後の展開が期待されている。

Blibli

ビリビリのトップ画面

Blibli」は2011年インドネシアの大財閥Djarum groupの子会社であるGlobal Digital Niagaによってされた。
Blibliサイトからは日用品からファッションや電子機器などの販売のほか、携帯電話の通信利用料や水道料金の支払いも可能である。
日本のアトラス(https://www.atlas-ltd.co.jp/)は、「Blibli.com」より商品販売を行っている。

インドネシア市場で売れる日本の商品とは?

インドネシアは現在、急速な発展を遂げようとしている。2020年には「富裕層の⼈⼝が1億4,000万⼈に達する」と言われ、この数字は日本人全てが富裕層になるほどすごい数字である。
また、日本のブランドに対しても認知度は高く、JETROの調査によると、42.6%のインドネシアユーザーが3ヶ月以内に何らかの日本の商品を購入したとしている。
越境ECで高い購入率を示している商品は、スマホ、テレビなどの電化製品である。
そして、化粧品やファッションアイテムが人気がある。
化粧品では、南国特有の美白化粧品関連やニキビ関連のスキンケア、フェースクリームなど購入率が高い。

インドネシアで買われる日本の商品

インドネシアのEC決済は代引き決済が主流

インドネシア人は2017年で48.9%と銀行口座の保有率が高くない。そのため、銀行口座を持たないので、クレジット決済ができないという現況がある。
クレジットカード保有率は2%と非常に低く、いまだ現金中心の社会だ。
JETROの調査によると、EC決済では代金引換(現金)が40%、銀行振込が30%、クレジット決済が30%の比率となっている。
今後、期待される決済方法は、モバイル(電子マネー)決済である。
なぜなら、ITを活用した金融サービス・フィンテックが台頭してきており、モバイルを活用したキャッシュレス化が注目されているからだ。
2019年1月現在で電子マネーが発行可能な企業として、配車サービス大手Go-Jekの「ゴーペイ(Go Pay)」、財閥リッポー・グループ傘下の「オボ(OVO)」、国営通信傘下の「Tキャッシュ(TCash)」のほか、36社もの企業が認可されている。
さらに、インドネシア政府においても、チップベースの電子マネーカードと、携帯電話番号の登録によるサーバーベースの電子マネーを導入した、QRコード決済を本格的導入を推進している。電子マネー決済が主流になるのは間違いないだろう。

インドネシアの決済の割合

インドネシアの配送事情

インドネシアの配送は、国営の「PT. Pos Indonesia」が主流である。
PT. Pos Indonesia郵便では郵送対象は重量上限が2kgの手紙(Surat)と小包(Paket)の2種に分かれている。
郵送サービスには普通郵便(Biasa)、特別速達郵便(Kilat Khusus)、エクスプレス郵便(Express)がある。
普通郵便については配達の未着や遅延の問題が多く、特別速達とエクスプレスサービスは、地方の村まで配達が可能で、配送状況の追跡も可能である。
エクスプレス郵便は即日および翌日配達サービスである。
日本から商品を発送した場合、ジャカルタやバタム等の主要都市であれば、通常は2~4 日ほどで配達されるようだ。

まとめ

インターネットインフラの遅れから、足踏み状態が続いていたインドネシアであるが、スマートフォンの普及から、一気に経済成長が加速している。
設備投資は拡大し、新興企業が開花し、投資資本がインドネシアに急増している。ユニコーン企業であったインドネシアの配車サービスGo-Jekは、評価額が100億ドルを超えるデカコーン企業にまで成長している。
また、インドネシアにとって日本は、最大の輸出入国でもあり、歴史的、経済的、政治的に密接な関係が続き、親日家国家である。
日本にとっても、インドネシアは天然ガス、石炭など天然資源の重要な供給国である。
そして、お互いG20(ジートゥエンティ)、APECの加盟国であり、今後も親密な関係を崩すことなく、発展してゆくことを願う。
発展するインドネシアの変化にアンテナを張りつつ、越境ECで東南アジア販売の施策を講じていただきたい。

参考:

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