「オンラインからオフラインへ」を意味する「O2O」というワードをよく耳にする。
そして今、小売業界では「O2O」から、新たに「OMO」というワードが注目されてはじめている。
「O2O」はもはや当たり前のマーケティング手法であり、これからは、「OMO」の時代というわけだ。
「O2O」と「OMO」の違いはどこにあるのか?中国では、すでに加速度的に浸透している「OMO」は日本にも浸透するのだろうか?
今回は、この「OMO」とは何か、「OMO」はマーケティングや実店舗販売にどのような価値を生み出すのかなどまとめてみた。
「O2O(Online to Offline)」とはオンラインでのユーザー行動を、オフラインの実店舗に誘導し、購買を促すマーケティング手法である。
例えば、飲食店や販売店のアプリをダウンロードしてもらい、定期的にオンライン上でクーポンを発行し、ユーザーはクーポン出力し、実店舗でクーポンを利用し商品を購入するというものである。
そして、この「O2O」という概念は「OMO」へとシフトしようとしている。
「OMO」はOnline Merges with Offlineの略で「オフラインとオンラインの融合」を意味する。
「O2O」がオンラインからオフラインの片道通行であるのに対し、「OMO」はオンラインとオフラインの双方向で行き来する。中国ではアリババが推進する「ニューリテール」と呼ばれる概念を指す。
「OMO」はオンラインとオフラインを統合させ小売りを行うという概念で、例えば、自転車レンタルの場合、オンラインで自転車レンタルアプリをダウンロードし、登録すること貸し出しされる。ユーザーは貸し出し手続きが完了したら、実際に自転車に乗る。利用が終了したら、自転車を返却し、アプリで精算するという、まさに、ユーザーはオンラインとオフラインで双方向で活用することで快適なサービスを供給できる。
この「OMO」を簡単に言うと、デジタルオーバーラッピング、オフラインがオンラインを覆い、オフラインの生活がデジタルデータ化され、個人のIDと結びつくことを意味する。
「OMO」はこのデータの活用により提供される、新しい体験型ショッピングと言えるだろう。
次に世界で一番この「OMO」が進んでいると言われる中国の事例を見てみよう。
実店舗における中国、アリババの先進性は、Amazon以上かもしない。アリババのジャック・マーは2016年から実施、推進している「ニューリテール(新小売)」と言う概念はまさしく、「OMO」である。
そのシンボル的存在が、「フーマー(盒馬鮮生)」スーパーマーケットである。
「フーマー(盒馬鮮生)」は生鮮食品を扱うスーパーマーケットであるが、実態は生鮮食品のECであり、店舗は物流拠点となっている。
実店舗では、買い物をして購入した食材をそのまま、料理人に調理してもらえるといったサービスのほか、スマートフォンを通じて食品をオーダーし、その場で決済も完了させ、店舗から3㎞以内なら30分で受け取ることもできる。
また、アリババのOMOスポーツ用品店「INTERSPORT」では、興味のあるシューズを持ち上げると、モニター画面にシューズの商品説明が表示される。
さらに、シューズのタグをスマホでスキャンすると「Tmall」の商品ページへリンクされ、商品ページで商品も購入できるというものだ。
この「INTERSPORT」にはアパレルシミュレーション機能の大型モニターもある。
モニターの前に立ちで顔面をスキャンされると、顔面以外の体型部に衣服が合成され、いろいろな衣服を変えることができる、セルフ型着せ替え体験である。
気に入った洋服などあれば、その場で「Tmall」の商品ページで購入もできるし、直感的にいいと思ったものがあれば、店舗で実際の服を試着してみるものいいだろう。
このようにリアル店舗の中にどんどんデジタルが浸透、一体化することで、より消費者のショッピング体験を高めるといのが「OMO」の本質である。
ECサイトで自分のデザイン嗜好や、商品購入履歴などのデータを蓄積されることで、実店舗に入った瞬間、レコメンド商品がスマホに表示され、実店舗で商品を手に取り、確かめて購入し、キャッシュレス決済、当日配送されるという時代なのである。
中国では、「スマホ1つあれば生きていける」と言われるほど、ITテクノロジーが発達している。同時に「OMO」も隆盛を極めている。
何故か?
「OMO」を実施するには、以下の4項目が不可欠と言われている。
の4項目が揃って、「OMO」は実施可能となる。
中国ではこの4項目について、すべて普及しているのである。下記は2018年10月博報堂生活綜研と中国伝媒大学広告学院と共同でが行なった「中日米3カ国テクノロジー生活調査」内容の一部である。
それによると、テクノロジーを活用した製品・サービス、特に「OMO」領域におけるそれの利用率では、中国がアメリカと日本に圧倒的な差をつけていることが分かる。
例えば、キャッシュレス決済は米国32%、日本35%に対して中国83%と倍以上の浸透率である。
また、スマートフォンアプリと連動した外食デリバリーサービスは米国20%、日本4%に対して中国66%も利用されている。タクシー配車アプリ利用は米国18%、日本2%に対して中国53%といったところである。
そのITテクノロジーの普及と積極的な利用は「OMO」の浸透を大きく推進していると言える。
また、中国のテクノロジー生活利用者は、20代から50代まで、年代別に見てもほぼ差がなく利用している。
このデータを見る限り、日本にこの「OMO」が根付くまでには、時間がかかりそうである。
出典:中日米3カ国生活者調査で分かったテクノロジー利用率の圧倒的な差――博報堂生活綜研(上海)
これまで、「OMO」を見てきたが、「OMO」の重要なキーワードは、カスタマー体験である。
「データ化されたあらゆる消費者行動、情報」を質の高い顧客体験の創出まで高めることである。
つまり、「OMO」とはデジタルデータ・ITテクノロジーを基に、いかに良い購買体験をお客様に対して提供するかということである。
良い顧客体験とは、「実店舗では買物でレジに並ばなくていい」、「アプリのダウンロードや登録など面倒な手続きがいらない」、「欲しいと思ったときに欲しいものがその場で手に入る」、「良いタイミングで最適な商品を提案してくれる」、「買物すること自体がエンターテインメント化され、ワクワクする」など、オフラインとオンラインを融合することで生まれる新しいサービスを提供することが「OMO」なのである。
顧客にマッチした「体験」から、そのまま「購入」に結びつける手法「x Commerce(クロスコマース)」が「OMO」である。
そのタッチポイントはECやリアル店舗だけではない。イベントやSNSも含まれる。
2018年から始まったInstagramのショッピング機能は「SNSとCommerceの融合」であり、ファッションショーのイベントでモデルが着ている服をその場で購入することができるのは、「ライブとCommerceの融合」である。
ECサイトだけでは生み出せなかった、買い物というワクワク感をすべての購買チャネルに変えることが、広い意味での「OMO(Online Merges with Offline)」と言えるのではないだろうか。
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