5月16日、経済産業省は「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」を実施し、日本の電子商取引市場の実態、及び日米中3か国間の越境電子商取引の市場動向について、その内容を公表した。
「平成30年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」の内容は、日本国内のBtoC-EC、BtoB-EC、CtoC-ECの市場規模に加え、越境ECの消費者向け市場動向(日本、アメリカ及び中国相互間)について、調査を実施し、まとめたものだ。
今回は、この内容をベースに2018年の国内のEC市場、世界のEC市場、さらに越境EC市場はどうだったのか、前年からどれくらい成長したのかなどを見てみよう。
2018年のBtoC-EC市場規模の全体は17兆9,845億円という推計結果となった。
前年の16兆5,054億円から金額は1兆4,791億円増加し、伸び率は8.96%となった。
内訳は、物販系分野が9兆2,992億円、サービス系分野が6兆6,471億円、デジタル系分野が2兆382億円となった。各分野の伸び率を見てみると、物販系分野が8.12%、サービス系分野が11.59%、デジタル系は4.64%となっている。
過去9年間のBtoC-ECの市場規模推移は下のグラフの通りである。
物販系分野のEC化率は2017年の5.79%に対し2018年は6.22%に上昇している。
対前年度比で2018年のBtoC-EC市場規模は8.96%増加しており、引き続き市場は拡大傾向である。
2018年の国内BtoC-EC市場における物販系分野は、前年比8.12%の伸長率であった。2017年の伸長率は7.45%であったため、2年連続での一桁台の伸長率である。
個人消費がほぼ横ばいで推移している現状と比較すれば、物販系分野の伸長率は十分高い値であり、未だ国内BtoC-ECが成長市場であることを裏付けるものである。
しかし、調査開始以降毎年10%以上の伸長率を記録してきた経緯から考えれば、市場規模の成長ペースは緩やかになってきているとしている。
BtoC-EC市場のトレンドとして、「スマートフォン」、「SNS」、「ライブコマース」、「DtoC(Direct to Consumer)」、「QRコード決済」、「情報セキュリティ」、「物流」、「AIの活用」、「5G(第5世代移動通信システム)」をキーワードに挙げている。
ここでは、「スマートフォンの購入利用」の拡大について見ていく。
スマートフォンの利用は、2017年に引き続き、2018年もインターネット利用全般にわたりさらに拡大した1年であった。
電子商取引も同様であり、物販、サービス、デジタル各分野にわたり、スマートフォン経由での取引額が増加している。
この調査は、複数の調査リソースに基づいて物販分野におけるスマートフォン経由のBtoC-ECの市場規模を推計しており、推計としては3兆6,552億円という結果となっている。
これは物販のBtoC-EC市場規模9兆2,992億円の39.3%に相当する金額である。
「スマートフォン」の利用率はこれまで世代間に大きな差があったが、現在はその差が縮まってきているとしている。
総務省の統計では、50代のスマホ利用率は14年時点で41.8%%だったが、17年には72.2%に拡大。高齢者のEC利用はPC経由が大半と考えられてきたが、今後は”消費支出額が大きい高齢者層のスマホ経由の購入額が物販系ECの市場拡大のキーになり得る”としている。
調査では、2018年1年間のフリマアプリの市場規模を、統計情報、関連企業等へのヒアリングに基づいた推計も行なっている。
推計結果は6,392億円(2017年からの伸び率は32%)となっている。
2012年にはじめてフリマアプリが登場し、僅か6年足らずで6,392億円の巨大な市場が形成したことになる。
調査では、各種情報リソースを基にネットオークションの2018年の市場規模を推計も行なっている。2018年は1兆133億円となっている。
但し、ネットオークションでの取引は個人間に止まるものではなく、実際には BtoB、BtoC の取引も多く行われているのが実態である。この市場規模はそれら全てを含む数値である。
グラフを見てもわかるようにネットオークション市場は推移が非常に緩やかである。
それでは世界のECに目を転じてみよう。
世界のBtoC-EC市場規模はどのエリアにおいても拡大傾向にある。
拡大の背景には、「スマートフォン等、従来よりも安価に入手できるデバイスの普及」、「インターネット人口の増加」、「マーケットプレイスや物流システムの充実」、「決済機能多様化への対応」、「オンラインショッピングのインフラ整備(インターネットアクセスポイントの増加、ネットワークスピード)」、「越境ECの機会増大」等が起因しているとしている。
今後も世界のBtoC-EC市場規模は拡大が期待される。
下のグラフは、全世界のBtoC電子商取引(旅行、チケットの売上を除く)の売上高推計値および予測推計値である。2018年の世界のBtoC電子商取引市場規模は2.84兆米ドル(約312兆8,260億円)である。
対前年比成長率についても、2018年23.3%の伸びがあり、2021年までは伸び率は減速するが、2020年から2021年でも前年比、18%の高い成長率が見込まれている。
さらに、世界のBtoC越境EC市場について見てみると、こちらも引き続き拡大傾向にあるようだ。
拡大の背景には、前述の通り、EC市場規模そのものが拡大するにつれて、「品質のよい商品を低価格」で購入することが可能であり、海外からのインターネットショッピングであっても、安心して取引できる「マーケットプレイス」や越境EC支援会社が発達してきた事情を指摘している。
さらに、「PCやスマートフォンの普及」で、いつでもどこでも越境ECが利用できる環境が整いつつあることが考えられる。
下のグラフは、全世界の越境EC(旅行、チケットの売上を除く)の売上高推計値および、2019年以降の数値は予測推計値である。
2018年の世界の越境EC市場規模は6,760億米ドル(約74兆4,732億円)である。
2018年の対前年比成長率は 27.5%の伸び率であり、2020年まで対前年比20%台の成長率が見込まれている。
世界の越境ECは、BtoC-EC市場と同様に2桁成長である。
また国別の越境EC利用者数については下のグラフにある。
第1位が中国の7,000万人、第2位がアメリカ(3,400 万人)、で第3位はイギリス(1,400 万人)、第4位はドイツ・フランス(1200 万人)と続く。
日本が900万人と予想外に多い。
中国のインターネットユーザーは拡大傾向にあることから、今後も越境ECユーザー数は増え、市場は拡大してていくことが予想される。
下の図表は、世界41市場を対象に、過去1年間に越境ECを行ったネットユーザー(N=33,500)に調査したデータを掲載した。
越境ECを行う場合、どの事業者から商品を購入しているかを調査した内容であるが、第1位は Amazon(23%アメリカ)、第2位はAlibaba/AliExpress(16%中国)、第3位がeBay(14%アメリカ)と続いている。
上位サイトはアメリカと中国のサイトで占められている結果となっている。越境ECのプラットフォームは、Amazon、Tmall、eBayが3強と言ったところか。
日本、アメリカ、中国間の越境EC市場規模の2018年の推計結果は、下のグラフの通りである。
日本の越境BtoC-EC(アメリカ・中国)の総市場規模は2,765億円となっている。
このうち、アメリカ経由の市場規模は2,504億円、中国経由の市場規模は261億円となっている。
アメリカの越境BtoC-EC(日本・中国)の総市場規模は1兆3,921億円となっている。
このうち、日本経由の市場規模は8,238億円、中国経由の市場規模は5,683億円となっている。
中国の越境 BtoC-EC(日本・アメリカ)の総市場規模3兆2,623億円となっている。
このうち、日本経由の市場規模は1兆5,345億円、アメリカ経由の市場規模は1兆7,278億円となっている。
2018年の日本の越境ECを2017年と比較すると、日本からアメリカユーザーが購入額では7,128億円から8,238億円に増加し、伸び率は15.6%である。アメリカの増加率は前年とほぼ同様であった。
また、日本から中国ユーザーの購入額は1兆2,978億円から、1兆5,345億円に増加している。伸び率は18.2%である。この数字は2017年の伸び率、25.2%と比較すると低くなっている。
共に2桁成長の伸び率ではあるが、日本の越境ECも成長は成長しているが、鈍化傾向であることがわかる。
ここでは2018年の日本、アメリカ、中国間における越境 EC 市場規模をベースに2022年までの推移を想定した越境EC市場規模のポテンシャルを推計値をグラフ化した。
(ポテンシャル算出のロジックは、2018年の越境EC市場推計と同様に2018年の市場規模に各種調査機関、文献および越境ECを行っているEC事業者のヒアリングを行って得た市場成長率を乗じて算出となっている)
さらに、下のグラフはこのデータを元にこれまでの日本の越境EC市場をアメリカ、中国を対象として、2018年までは、公表されたデータを元に、2021年までは推計値を参考にグラフ化した。
2017年までの伸び率は20%台をキープし、2018年は2兆3,582億円と成長していたが、2018年はその伸び率は17%と20%を切っている。2019年以降も着実に越境EC市場は成長すると予想されるが、伸び率(成長率)は緩やかになるとされている。
経済産業省が16日発表した2018年度の「電子商取引に関する市場調査」によると、2018年のBtoC-EC市場規模は、前年比8.96%増の17兆9,845億円、EC化率は同0.43ポイント増の6.22%となった。
市場規模は前年を超過したものの、伸長率は前年の9.1%から0.14ポイント減少。2010年の調査開始以来継続していた10%以上の伸長に2年連続で届かず、一桁成長となったことで、経産省は市場規模の拡大ペースが緩やかになってきているという見方を初めて示した。
また、日本、アメリカ、中国間の越境EC需要においても、EC大国、中国の越境ECを利用した消費額は減少しつつあることを示している。
各年時の伸び率を見ても、2018年は20%を下回った結果となっている。
2020年には東京オリンピック需要が期待され、ますます、越境EC市場は増長することは間違いないところだが、ここは冷静に着実にことを進める、成熟期に入ったと言えるだろう。
今回のブログは下記アドレスよりデータをダウンロードし、図などを作成した。
https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002.html
タグ: Eコマース, スマートフォン, 経済産業省, 越境EC