7月30日、経済産業省は「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」を公表した。
これは2020年の国内BtoC-EC市場、BtoB-EC市場、CtoC-EC市場、越境EC市場の市場規模、さらに2020年のEC市場の特徴などをまとめたものである。
その内容によると、2020年はコロナ禍の影響で国内のBtoC‐EC市場規模は、19兆2,779億円と前年比で830億円の減少となった。
特徴的と言えるのは、物販系分野のEC市場規模の大幅拡大であり、EC化率も2019年から1.32ポイントアップし、8.08%と大きく増加した点である。
今回は、2019年のBtoC-EC市場と比べ、2020年コロナ禍ではどのようなカテゴリーが増加し、また、コロナ禍で大きく減少したカテゴリーは何なのか、各分野別にまとめた。
下のグラフは、2010年から2020年までの国内BtoC-EC市場規模の推移と物販系分野のEC化率である。
2020年は国内BtoC-EC市場規模は19兆2,779億円と前年比で830億円の減少となった。
BtoC-EC市場規模が減少となったのは、今回で23回目となるEC市場計測開始以来、初めてのことである。
2020年は、今も続く新型コロナの影響で、外出自粛による「旅行サービス」などのサービス系分野の落ち込みが大きかった。
逆に大きく拡大したのが、新型コロナ感染症拡大によるステイホーム、巣ごもり消費が追い風となった、物販系分野のECである。
物販系ECの伸びは、当然EC化率にも現れ、8.08%と大きく上昇した。
結果として、物販系分野の大幅な拡大とデジタル分野の増加も、サービス系分野の減少をカバーすることは出来なかった。
それでは、各分野別に2019年と比較しながら、コロナ禍で最も拡大したカテゴリー、減少したしたカテゴリーなどを見ていこう。
2020年は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う巣ごもり消費の影響で物販系分野は大きく拡大成長した。
物販系分野のBtoC-EC市場規模は、2019年の10兆515億円から2兆1,818億円増加し、12兆2,333億円となった。伸長率は21.71%であった。
EC化率は8.08%と前年より1.32ポイント上昇した。
市場の大きい順から、「生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等」では、2兆3,489億円で前年比28.79%の増であった。
次いで「衣類、服装雑貨等」の2兆2,203億円で前年比16.25%の増。
「食品、飲料、酒類」の2兆2,086億円で前年比21.13%の増。
「生活雑貨、家具、インテリア」の2兆1,322億円で前年比22.35%の増。
などとなっている。
この上位4カテゴリーは、すべて2兆円を突破し前年増加率も高く、この4カテゴリーだけで73%を占めている。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、サービス系分野では「旅行サービス」、「飲食サービス」、「チケット販売」が大きな影響を受けた。
サービス系分野のBtoC-EC市場規模は、2019年の7兆1,672億円から2兆5,840億円も減少し、4兆5,832億円となった。
伸長率はマイナス36.05%と大幅なマイナスとなっている。
最も新型コロナの影響を受けたのが「旅行サービス」で、2019年の3兆8,971億円から、2兆3,477億円減少し、1兆5,494億円(前年比マイナス60.24%)となった。
ただ、「旅行サービス」カテゴリーは大きく下落したが、サービス系分野においては、市場規模が最も大きいことに変わりはない。
次いで「飲食サービス」は、5,975億円で前年比はマイナス18.03%。
さらに、イベントなどの「チケット販売」は、1,922億円で前年比はマイナス65.58%。
前年比の減少率で見ると、このチケット販売のマイナス幅が最も大きく、特にコンサートなどライブエンターテイメントは新型コロナで危機的状況となった。
また、今回2020年の調査より、フードデリバリーの市場規模推計を新設している。
2020年、フードデリバリーは新型コロナウイルス感染症拡大下で、市場規模3,487億円と大きな存在感を発揮している。
新型コロナウイルスの感染症拡大による巣ごもり消費は、デジタル分野も大きく拡大させた。
デジタル系分野のBtoC-EC市場規模は、2019年の2兆1,422億円から3,192億円増加し、2兆4,614億円となった。伸長率は14.90%となっている。
デジタル系分野で最もBtoC-ECの市場規模が大きいのは、「オンラインゲーム」の1兆4,957億円で前年比7.5%の増。
次いで「電子出版」の4,569億円で前年比36.18%の増加。
さらに「有料動画配信」の3,200億円で前年比33.1%の増加と続いている。
対前年比で36.18%と大きく増加した「電子出版」は、紙媒体のデジタル化の拡大やデジタルコンテンツのみの電子出版の増加、さらにスマートフォンやタブレットの普及を背景に、近年、この市場は拡大傾向にあった。
この近年の拡大傾向と新型コロナの巣ごもり需要が重なり、大きく市場が拡大したと見るべきだろう。
増加率36.18%は、BtoC-EC市場の中では、最も大きい拡大数値である。
紙媒体は出版不況が続いているが、出版のデジタルシフトを加速させ、広告との連携など施策し、新しい電子出版サービスを提供することでその危機を乗り越えていただきたい。
2020年、国内BtoC-EC市場は初めてマイナス成長となった。
これは、新型コロナ感染症拡大による外出自粛から、旅行サービス部門の6割マイナスが市場全体に大きく響いた結果である。
また、新型コロナで伸長率21.71%と最も拡大幅が大きかった物販系分野においては、これからの「ウィズコロナの時代」に見合った実店舗とECの販売チャネルの新たな位置づけ、役割の見直しを図らなければならない。
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