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小売の巨人ウォルマート 快進撃の裏にある様々な挑戦

   投稿者 : 2020年1月22日 By Comments (0)

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日本経済新聞によると、アメリカ小売企業ウォルマートの2019年8月〜10月の決算は、純利益92%増の32億8800万ドル(約3600億円)と発表された。成長分野のネット販売の売り上げが、41%増と安定、拡大した結果とされている。
ウォルマートは世界最大の小売り企業である。ネット販売では米Amazonとは大差があるが、実店舗ではAmazonはウォルマートには敵わない。
そして、ウォルマートのネット販売が好調なのは、これまでウォルマートが実施してきた、様々な取り組みの成果と言えるだろう。
今回は、この世界最大の小売企業ウォルマートの実店舗を最大の武器とした、Amazonおも凌駕しそうなその取り組みについて見ていこう。

ウォルマートは実店舗を軸にネット販売を拡大する

ウォルマート(英語: Walmart Inc.)は、アメリカ、アーカンソー州に本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上額では世界最大の企業である。
2017年の売り上げ高は、5,003億ドル(約56兆2,000億円)で5年連続の首位である。(下の画像は2017年の世界の小売企業ランキング)
2019年、11月のウォルマートの公表によると、2019年8~10月期の米国内における既存店売上高(実店舗・インターネット通販含む)は2.5%増の1279億ドル(約1兆4,751億円)と21四半期連続の増収を記録し、さらに、純利益が92%増の32億8800万ドル(約3600億円)と大幅な増益を示した。
アメリカEコマースでは、Amazonがシェア48%とトップを独走しているが、2位、ebay
3位にウォルマート(4%)が追随している。
ウォルマートは世界一の実店舗を武器にEコマースにおいても攻勢をかけている。
事実、ウォルマートCEOマクミロン氏は「オムニチャネルの顧客体験を作り上げる努力を続けている」と言及し、ウォルマートのEC事業の2019年8月〜10月売上高は前年同期比41%増え、会社全体の売り上げを牽引している。
Eコマースの成長は、ウォルマートの株価を上昇させ、ウォルマート上場以来の高値を付けるなど、その好調ぶりを見せつけた。
日本国内では、ウォルマートジャパンとして、2008年に西友を完全子会社化し、2018年には楽天と提携を発表。ネットスーパー「SEIYUドットコム」をリニューアルし、プライベートブランドやネット販売の拡大を加速させている。
それでは、ウォルマートがここまで快進撃を続ける施策にはどのようなものがあるのだろう。次にその主な取り組みを見ていこう。

ウォルマート図表01

日本の小売企業は13位にイオン、18位にセブン&アイホールディング、56位にファーストリスィリングなどがランクインしている。

ウォルマート図表02

図はアメリカの小売eコマース販売シェア トップ5(2017年・2018年)

Sam’s Club Now(サムズクラブ・ナウ)」による店舗体験の向上

ウォルマートは実店舗を軸としたEC事業を展開するというのが、Amazonとの大きな違いだ。(AmazonはEコマースから実店舗への参入する方向と真逆の路線である)
まず、実店舗体験の取り組みとして実施されているのが、「スキャン・アンド・ゴー」を改良した「Sam’s Club Now(サムズクラブ・ナウ)」である。
「スキャン・アンド・ゴー」はモバイルアプリを使って購入商品のバーコードをスキャンすることで、決済を簡略化させたものだった。この取り組みは、万引きなどの被害にあい撤廃されたが、その後、「スキャン・アンド・ゴー」を改良し、誕生したのが「Sam’s Club Now(サムズクラブ・ナウ)」である。
「サムズクラブ・ナウ」は、買いたい商品の特徴や探している商品が置いてある場所を教えてくれるなど、さまざまな機能が盛り込まれている。
顧客は入店時にこの「サムズクラブ・ナウ」のアプリを起動させ、アプリ上で商品のバーコードをスキャンしながら買物をする。
退店時には、スマホに表示されるQRコードをメンバー・ホスト(従業員)が持つ決済端末にかざす。そして、アプリに紐づけした決済方法で精算するというものだ。
レジの行列に並ぶ必要がないので、これだけでも便利と言える。

 

 

ウォルマートは大型アパレル小売店を買収し、さらに拡大している

ウォルマートは大型アパレルEC企業の買収を進めている。
2017年ミレニアルズ・メンズ向けアパレル企業Bonobos(ボノボス)を買収し、さらにミレニアルズ・レディ向けアパレル企業ModCloth(モドクロス)を買収している。
ボノボスは、EC事業を運営しつつ、実店舗展開も積極的に行っており、来客時には専属のスタイリストが付く。
お客様は予めインターネットで、来店をプロフィール申告すると、来店時にはお客様に合わせた専属スタイリストがつき、洋服などを提案してくれる。
さらに、その洋服は店舗で購入しなくてもよく、ボノボス店舗サイトでサインアップするだけで決済され購入でき、配送される。
「ボノボス」や「モドクロス」の買収は、ウォルマートがミレニアルズ世代をターゲットとしたアパレル事業確立と、オンラインを活用した実店舗体験の向上、オムニチャネル化を目指していることが分かる。
上記以外にも、2016年、Jet(eコマース小売業者)やShoebuy(シューズ)、2017年にはMoosejaw (アウトドア、アパレル)、2018年にはEloquii(プラスサイズのファッション)、Art.com(アクセサリー)など、多くのミレニアルズ世代をターゲットにした有名小売店を買収している。

※ミレニアルズ世代とは1980年~2000年初期に生まれた世代。現在アメリカの全人口の約3割を占める。

ウォルマートが行なっているECサイトと実店舗の連携

ウォルマートは、ECサイトと実店舗の売上を順調に伸ばすことに成功している。
その施策はEコマースと実店舗の融合、ニューリテールを実践している企業だからだろう。
ウォルマートは、これまでEコマースにおいて複数の自社アプリを開発しており、このアプリによって、Eコマースと実店舗の融合を巧みに実行している。
具体的には、EC事業を牽引している「オンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)」がある。
「OGP」とは、店舗ネットショップで食料品などを注文して店舗で商品を受け取る、取り置きサービスである。
お客様は、予め専用アプリ内で牛乳や野菜など商品を選んで会計すませ、取りに行く店舗と時間帯を選択する。
お客様は指定された時間に来店すると、受け取り専用の駐車場で、ウォルマート従業員が注文した青果物など食料品をトランクまで持ってくるというものだ。
Amazonが苦戦している食料品分野において、ウォルマートは一歩リードしている。
この「OGP」はお客様にとって車から降りたり、財布を出したりする手間がない便利さが受け、好調なようだ。
ウォルマートは「OGP」に対応する店舗を2019年末までに3100に拡大し、商品を店内でピックアップする従業員「パーソナルショッパー」は5万人にのぼる。

2020年注目は音声によるショッピング

ウォルマートは自社アプリの開発に、2019年4月にgoogleと提携し、音声ショッピングの開発も行っている。
音声ECによるショッピング体験は、ユーザーエンゲージメントとブランドロイヤルティは高めるだろう。昨年はカスタマーエクスペリエンスが急速に発展し、ウォルマートはgoogleと提携することで、googleのプラットホーム上で商品の注文を可能にした。
2019年9月下旬からウォルマートの商品10万点を「Google Express」のアプリとウェブサイトで販売し、「Google Home」の音声ショッピングに対応した。
「音声ショッピング」は購買体験の新時代とも呼ばれ、モバイル決済と並ぶ重要性を持つものである。Amazonの音声ショッピング、Amazonエコーの競合となるのか、今後の動向が楽しみである。

様々な自動運転サービスの実証試験を開始

ECアプリだけではなく、配送に関わる自動運転車の開発にもウォルマートは実証試験を行い、実用化に向けている。
2018年7月、ウォルマートは米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)と提携した。
これは、オンラインショップで注文した商品を実店舗で受け取る利用者に対し、自動運転車で送迎するパイロットプログラム(テストや試行として企画された活動)を実施するという取り組みだ。
さらに、2019年1月には、自動運転開発スタートアップの米Udelvとも提携し、アリゾナ州フェニックスで自動運転車による商品宅配サービスの実証実験も行われている。
自動運転を開発するスタートアップ企業にとっては、ウォルマートの持つネットワークは絶好の提携企業と言えるだろう。なぜなら、広範囲に膨大な顧客数を保有するウォルマートとの実証試験に成功すれば、サービス実用後は有力なクライアントとなりうるからだ。

ドローンを活用し、配達網の強化を目指す

配送の自動化は車に限ったことではない。
2017年にウォルマートは、ブロックチェーンベースの「ドローン」を用いた荷物配達システムに対する特許を申請し、さらに、昨年2019年1月、「ブロックチェーンを利用したドローンのクローニング(Cloning Drones Using Blockchain)」と題された特許申請を行っている。
特許によるとブロックチェーン技術は、ドローンの識別番号、飛行高度、飛行速度、飛行ルート、バッテリー情報、積載容量などの情報を別のドローンに発信するために利用される。
情報は、ドローン同士の中間地点に基づいて、共有することができる。などとなっている。
ドローン開発ではAmazonが有名なところであるが、ウォルマートのブロックチェーン技術を利用したドローン開発は、様々な事業との管理連携を図ろうとしているのが見えてくる。
ウォルマートにしろ、Amazonにしろ、ドローン開発は自動運転と共に、次世代配送の鍵である。
そして、配送時間を少しでも短くし、お客様のもとに早く商品を届けることは、マーケットプレイスの成功のポイントと言っても過言ではないだろう。
Amazonがあれほどまで、成功、成長した最大の要因はプライム会員サービスの翌日無料配送にある。この消費者の潜在的ニーズにAmazonが取り組んだことである。

Amazon VS Walmart 鍵を握るのは無料翌日配送

マーケットプレイスで成功する上で重要な点とされるのが、Amazonが「業界標準」と提唱しているし、「無料の翌日配送」だ。
2019年4月にAmazonは、プライム加入者に翌日無料発送のサービスを始めており、この「One-Day Shipping」を標準にすると発表した。さらに、Amazon翌日配達の対象商品を約1000万点を超えているという。
一方、Amazonが「プライム会員向け翌日配達」を明らかにした次の日、ウォルマートは、ツイッターの投稿で、Amazonへの対抗姿勢を示した。
そして、5月14日、ウォルマートは、「翌日配達サービス」を開始した。
このサービスは1回の購入金額が35ドル(約3800円)以上であれば無料となるもので、Amazonのように会員になる必要もない。
対象地域は限定的で、アリゾナ州フェニックス、ネバダ州ラスベガス、南カリフォルニアなどで、今後は段階的に広げるとしている。
ウォルマートの翌日配達対象商品は、今のところ約22万点にとどまるが、今後はAmazon同様に商品点数を増やしてい予定である。
Amazonプライムは年間119ドル(約13,000円)の定額サービス、ウォルマートの場合は購入金額が35ドルの購入に対するサービスである。
アメリカ消費者は両者を比較し、Amazonとウォルマートのどちらの翌日配送サービスが好まれるか動向が注視されるところだ。

まとめ

上記以外にも、ウォルマートは倉庫管理にロボットを導入し、在庫・物流オペレーションの自動化、ヒューマンエラーに対応している。
これまで見てきたように、ウォルマートは実店舗の強みを生かした、Eコマースとの融合施策がここにきて、実を結びつつある。
ウォルマートの様々な取り組み、チャレンジは、Amazonに通ずるものがあるし、Amazonとの違い点は3つである。一つはミレニアル世代のアパレルの再発明、二つ目はEコマースによる食料品販売の拡大、三つ目はITテクノロジーを活用した実店舗での買い物体験の向上である。
日本の実店舗とECを運営する事業者にとって、このウォルマートの様々な取り組み姿勢が、次の施策のヒントとなればありがたい。

参考:

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