10代~20代前半の女性向けファッションECを手掛ける夢展望が2013年6月7日に、東証マザーズ市場に新規上場すると発表しました。(上場予定日は同年7月10日)
ファッションEC企業では、スタイライフ、マガシーク、スタートトゥデイ(ZOZOTOWN)、エニグモ(BUYMA)に次ぐ5社目の上場です。なかでも、販売商品を自社で企画開発するSPA型ファッションEC企業の上場は、初めてとなります。
夢展望の事業モデルでもある、顧客の声や流行などを反映した商品を企画し、自社のリスクで生産販売するSPA(Speciality store Retailer of Privale Label Apparel)型ファッションECのビジネスモデルについて見てみましょう。
企画・デザイン、生産、販売までを自社内で一貫して行うことで、短期間で商品を市場に届けることができます。夢展望のECサイトをみると毎日、新商品情報が更新されており商品サイクルの早さがうかがえます。
生産を自社で行うことにより、サイズやカラーなども販売戦略にそって生産量をコントロールできます。また小ロットで生産も可能になり、在庫切れや在庫余剰を産むことがありません。ECサイトでは数量限定とうたうことにより、今買わないと売り切れてしまうといった気持ちを煽る演出をすることもできるため、小ロットがデメリットにはなりません。
仕入商品ではないため、販売価格に規制がありません。セールをする際に、競合他社と足並みをそろえる等の必要もないため、思い切った価格訴求もすばやく行えます。付加価値をつけて商品を高く売ることができるのも、自社開発商品ならではです。
企画・デザイン、生産、販売までを自社内で一貫して行うため、これらの工程を実施できるスタッフや技術の確保にコストがかかりノウハウも必要です。 EC専業の場合、少人数で運営を行っていることが多いため、夢展望のように協力会社をアライアンスすることで体制を整える必要があります。 (夢展望の場合は、生産や検品は中国の協力会社に委託しています。)
また、生産ラインまでを実現できたとしても商品を売り切るための販売戦略や、生産や在庫を管理するバックヤードを整えることも重要です。ECサイトでは、在庫連動はもちろんのことタイムセールへの対応なども必須となるでしょう。
生産数をコントロールできることをメリットとして紹介しましたが、販売戦略次第によってはリスクがないわけではありません。自社製品の販売を他社に委ねることがないのが前提ですから、自社で売り切るためには、強いブランド戦略をもったプロモーションが必要になります。
夢展望でも、ソーシャルメディア(主にTwitter)で、顧客の目線に基づいたスタイリング提案やTwitter限定企画の告知、ECサイトへ訪問を促しています。またソーシャルメディアは、顧客と販売スタッフと双方向でコミュニケーションがとれるため、顧客の声の収集にも活用できます。
SPA型ファッションECを理解するには、サンフランシスコのEverlaneの事例も参考になります。生産工程において、高級ブランドと同じ工場を活用することで、品質のよい商品を小ロットで安価に提供することに成功しています。またソーシャルメディアをプロモーションに利用することで販促費用を抑え、これを原資に低コストで商品を販売するという好循環を生み出しています。
日本では、夢展望に次ぐ有力なSPA型ファッションECはまだ現れていませんが、このビジネスモデル「早い、安い、かわいい」が消費者に歓迎されていることは言うまでもありません。競合他社との差別化や収益の確保など、得られるメリットが大きいSPA型ECのニューフェースが登場することを期待しましょう。
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