日本政府観光局(JNTO)は2018年の訪日外国人客(インバウンド)数は前年比、8.7%増の約3,119万人と発表した。
昨年は大型台風、関空の閉鎖、北海道胆振東部地震などの影響で9月は前年比でマイナスとなったが、全体的にはプラスの伸びとなった。
国別のインバウンドで最も多いのは中国の838万人、次いで韓国の745万人などという内容で、最も伸び率が高い訪日外国人旅行客はベトナム人で、前年比と26.0%の伸び率を示している。
欧州で伸び率が高いのはロシアで前年比23%の伸びで9万人となっている。 世界へ目を向け、外国人観光客が最も訪れたの都市は香港となっている。 そして、世界的に注目されている都市として「大阪」も取り上げられている。
今回は、イギリスの”ユーロモニターインターナショナルのレポート”から「2018年の外国人訪問客ランキングTOPテン」と日本銀行大阪支店の”関西におけるインバウンド消費の経済効果の拡がりと先行きの展望”から、「関西インバウンドの今後の動向」など見ていこう。
国際的な市場調査会社ユーロモニターインターナショナルが発表した、『外国人訪問者数 世界TOP100都市(2018年版)』から、2017年世界で最も外国人訪問者数の多かった都市TOPテンを見ると、1位は香港、2位はバンコク、3位はクアラルンプールなどとなっており、ベスト5までをアジア勢が占めている結果となっている。
日本はTOPテンには入ることはできなかったようだが、14位に東京が、30位に大阪、さらに京都、千葉もトップ100入りを果たしている。 この中で注目すべきは、大阪で、2012年からランクを117も上げている。
このレポートの中で特に注目される都市として、インドの西海岸の都市「ムンバイ」、ポルトガルの「ポルト」、世界3大宗教の聖地、「エルサレム」、そして、近年、外国人観光客が著しく増加している「大阪」が取り上げられている。
大阪は、東の観光の拠点としての東京、西の観光拠点として大阪、つまり関西地方の観光の拠点として位置している。
大阪には中国人旅行者が多く訪れており、訪問客数は今後も増加が見込まれ、2020年の東京オリンピック開催の恩恵を受ける可能性もあり、今、最も注目される都市として説明されている。
次に、その大阪を中心とする関西のインバウンドレポートから「関西のインバウンド」について見ていこう。
今年1月、日本銀行大阪支店より『関西におけるインバウンド消費と拡がりと先行きの展望』として関西のインバウンドの現状と今後の動向などがまとめれれたレポートが公表された。
内容は関西インバウンドの増加は、関西の経済に大きな影響を及ぼしている点や、今後、関西のインバウンド拡大を継続するためには、何を行わなければならないかなどレポートされている。 次に、その主な詳しい内容とグラフなど一部抜粋し見ていこう。
関西地方は大阪、京都、兵庫、和歌山、奈良、滋賀の6府県で構成され、大阪、京都、奈良などのメジャーな観光都市が集中しており、国内外の訪問率が高いが特徴と言える。
海外旅行者の関西の玄関でもある、関西空港旅客数は2016年の統計によると、609万人と成田空港の682万人に迫った勢いで伸びている。
日本銀行大阪支店のレポートでは、「関西を訪れる訪日外国人数は、2018年度の自然災害の影響で一時的な落ち込みがみられたものの、10月以降は関空の入国者数が既往ピークを更新するなど、勢いを取り戻してきている。」とされ、関西の百貨店免税売り上げも全国平均を上回るペースで増加していると報告されている。
インバウンド消費の経済効果の波及経路としては、下記の3つの点が取り上げられいる。
①ホテル客室数は全国を上回るペースで増加し、ホテルの新規着工数が増加している。
②インバウンド消費の取り組みに向けた新規店舗の出店や店舗の改修を行うなどの小売業が増加しており、さらにインバウンドに関連する外資系企業の誘致に繋がっている。
③訪人外国人が帰国後、越境ECを利用し再度、商品を購入するケースが増加し、特に関西では化粧品など輸出が増加している。
レポートにはないが、調べによると、2017年の大阪府の宿泊稼働率は全国ではトップの82.4%で、宿泊タイプでは、リゾートホテル92.4%、ビジネスホテル84.8%、シティホテル88.7%と非常に高い稼働率である。
このような事情からホテルの建設ラッシュが起こっており、このホテル需要が刺激剤となり、不動産業に波及し活況を呈しているという。
関西インバウンドは今後も伸長すると予想されている。 理由としては、以下の4つの内容が述べられている。
①訪日外国人客の多くはアジア諸国の一人当たりGDPの高い国からの訪日が多く、今後も経済成長に伴い、アジア諸国からの海外旅行ニーズの高まりが予想される。
②関西には、全国の国宝・重要文化財建造物(2,497件)のうち42%(国宝〈226件〉に限れば71%)が存在するなど、豊富な観光資源を抱えており、さらに今後は国際的イベントの開催が続くことによる、需要創出効果が期待できる。
③大阪は、世界の住みやすい都市ランキングで第3位に入り、都市の魅力が世界的にも高く、今後、再開発事業・交通インフラ整備が実施されることで、ますます、都市としての魅力が増進される。
④インバウンド消費の増加額は、人口減による消費支出を上回って推移しており、インバウンド消費の増加は、関西経済を今後も牽引することが予想される。
関西のインバウンド消費額は、東京や横浜などの主要な観光地の消費額より大きな伸びを示している。 その理由としては、関西には京都や奈良といった、文化遺産が数多くあり、日本の歴史文化を堪能できる点であること。
さらに、京都では日本の伝統的な茶の湯や和食を楽しめたり、大阪では食倒れの街のとして食文化を味わえるところなどが関西旅行による消費額を増大させていると思われる。
そして、今後は、国際イベントの開催が訪日外国人客数を増大させるだろう。
今年は、ラクビーWカップの開催され、2020年は東京オリンピックが開催される。 更に、2021年はワールドマスターズゲームズが関西で開催され、そして2025年には大阪・関西万博が開催される。
このように、ラクビーWカップ、東京オリンピック、ワールドマスターズゲームズ、大阪万博とイベントが継続的に行われることは、インバウンドに取り組む大きなモチベーションとなるはずである。
最後に『関西におけるインバウンド消費と拡がりと先行きの展望』では、インバウンドの拡大とインバウンド消費の増加を持続的にしてゆくために、4つのポイントをまとめている。
①外国語対応や無線LAN、キャッシュレス環境等の整備
②「コト消費」の取り込み強化
③関西広域での連携などの受け入れ体制の強化
④台風等の自然災害の影響で、インバウンド消費が落ち込んだ教訓を活かして、 不測の事態に備えた行動計画や、有事の際の外国人向けの情報発信力を高めていく
兵庫県豊岡市に位置する城崎温泉では、旅館の予約サイトを多言語対応したことが要因で訪日外国人観光客が5年で36倍に増大した地方観光地である。
さらに、成功要因として、城崎温泉周辺の観光地をより楽しんでもらうための「手ぶらで観光サービス」も行っている。
インバウンドでは大きな荷物がネックとなり、身動きが取れなくなり満足いくまで観光を楽しむことができないケースが多い。
「手ぶらで観光サービス」は、次の宿泊先まで大きな荷物が配送するサービスであり、観光客にとってはありがたいサービスである。
城崎温泉のように、インバウンドに対応した様々なサービスを打ち立て、継続して実施してゆくことが、インバウンドの拡大のポイントではないだろうか。
大阪はかつては「商人の都・大阪」として東京と競り合う存在であったが、大阪で創業した企業の相次いで本社機能を東京に移すなど、経済面での沈下が目立っていた。
しかし、ここ数年のインバウンド需要の拡大により、大阪のみならず、関西全体の経済が刺激されている。このレポートでは、大阪を中心としてた関西のインバウンド消費は、今後も増大が期待され、関西経済の押し上げに寄与していくことが報告されている。
関西の企業、施設、地方自治体は、ここを好機ととらえ、インバウンドの傾向をしっかりつかみ、分析し、継続的な訪日促進対策を実施することが重要である。
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