重い荷物や海外、離島など離れた遠く地域にも荷物を届けてくれる運送・宅配便などは今や、生活に定着し企業や店舗、そして暮らしにはなくてはならない分野の1つである。
近年は、Amazon、楽天といった、ネットショッピングやネット通販が普及したことで、配送業のニーズは高まり、需要は大幅に伸びている。
しかし、課題が多いのも事実だ。ネットショッピングの需要が増えれば増えるほど、労働時間、人件費の問題などが露出し、10月1日、ヤマトホールディングスは、27年ぶりに配送料金の値上げに踏み切った。
今後は物流業界ではサービスの範囲を見直し、有効な改善策を求められている。越境ECの海外配送においても、今後、大きな需要の高まりが予想されるなか、新たなサービスが始まっている。
今回は日本郵便の「UGX」と日通の新たなサービスについて見ていこう。
https://www.post.japanpost.jp/int/UGX/
2014年10月30日から、日本郵便では、従来からあるEMS(国際郵便サービス)とは別に「UGX(ゆうグローバルエクスプレス)」を開始しているのをご存知だろうか?
このサービスはいろいろと制約があり、あまり周知されてないサービスだが、特徴としては、サイズや重量の上限が高く、様々な商品を発送できること。最大のメリットは届け先である個人宅やオフィスに確実にドア・ツー・ドアで配送するという点だろう。
当初は、フランス郵政公社の物流子会社である“GeoPost(ジオポスト)”及び、香港の物流企業“Lenton Group(レントングループ)”との提携からのスタートであったが、フェデックス”により米国宛の取扱いも実施されている。さらに、新たに中国向け越境EC税にも対応したサービスも開始している。
「UGXサービス」の対象となる地域は、51の国と地域、荷物の最大サイズは長さ+(高さ+幅)x2=3m、重量は30kgまで。輸入関税についても、国際郵便では受取人が関税を支払うのが通常だが、UGXでは発送人側による納税にも対応している。
料金例は概略、下記のようになっている。
「UGX」では今年10月1日より「UGX Amazon FBA 相乗り配送サービス」を開始し、さらに、10月16日より、中国向け越境ECサービスとして、越境EC税を活用したサービスを展開している。 次に、その内容をまとめてみた。
日本郵便は今年10月1日、米国Amazon.comに商品を出品する日本の事業者向けに割安な料金で配送できる「UGX Amazon FBA 相乗り配送サービス」を提供、開始した。
アラウンド・ザ・ワールド(株)(ATW)と連携したこのサービスは、出品者に代わってFBA納品作業や通関に必要な書類作成を行う。
また、複数の出品者が郵便局から、UGXで発送した個々の商品を、アメリカに発送する前に指定倉庫にまとめ、1つの商品グループとして、直接アメリカのAmazon倉庫まで配送することにより、配送料を割安で配送することを実現している。
このサービスは、越境ECの中でも特に市場の大きなアメリカへの、販売ニーズに対応したものだが、海外配送に関わる通関処理での多くの書類作成について、それら業務を日本郵便がATWと連携し行ってくれるという有難いサービスだ。
Amazon出品者は「UGX Amazon FBA 相乗り配送サービス」を利用すれば、納品や書類作成など業務を軽減し、さらに配送コストが抑えることができる。
UGX Amazon FBA相乗り配送サービスURL:http://www.ashmart.com/web/ugx-amazon-fba/
「UGX Amazon FBA相乗り配送サービスの提供開始」:http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2017/00_honsha/0929_02.html
参考:http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2017/00_honsha/0929_02_01.pdf
さらに、日本郵便では10月16日より、国際宅配サービス「ゆうグローバルエクスプレス(UGX)」で中国の越境EC総合税を利用した中国国向け新配送サービスを開始した。 この中国向け新サービスは中国上海市に本社をおく、宅配会社・申通快 の日本法人・申通エクスプレスジャパン(STO)と日本郵便が連携し、STOの中国越境EC通関と中国国内配送ネットワークを活用したものだ。 利用制約としては「Tmallグローバル (天猫国際)」や「JD.com(京東商城)」といった、中国ECモールなどで出店する法人・個人の越境ECでの活用となっている。
中国には海外配送にかかる関税となる、行郵税というものがあり、通常、日本郵便のEMSなどで配送する場合、この行郵税が適用されるが、新サービスでは、越境EC総合税を適用することで、輸出コストを削減している。 中国の越境EC総合税を利用するには、事前に品目などの情報を税関システムへの登録し、さらに受注後の支払いや宅配情報なども登録する必要があり、利用は簡単ではない。だが、中国向け越境EC配送サービスを利用すれば、こうした業務を日本郵便とSTOが請け負ってくれるのだ。
中国配送モデルでは「直送モデル」を採用し、日本から発送された商品は国際航空輸送で、STOの中国・広州にある保税倉庫へ搬入し、STO配送ネットワークにより、購入者へと宅配される。 利用料金は仮に500gの商品を発送する場合、UGX便では4,600円に対して新サービスでは700円程度で発送できる。
UGXで利用可能なった中国越境EC通関とは、STOが提供する越境EC総合税による関税のことである。越境EC総合税は2016年4月8日から適用された越境ECの荷物に係る中国の輸入税である。越境EC総合税は輸入税制国際郵便物に課せられる行郵税よりも税率が低い通関方法で、サービスの対象は、越境ECサイトで販売している事業者としている。
「UGXによる中国越境EC通関を用いた配送サービスの開始」:http://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2017/00_honsha/1012_01.html
参考「UGXによる中国越境EC通関を用いた配送サービスの開始」:https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/detail.page?162&IMNEWS1=738737
日本通運は10月30日、日本企業の製品を海外に輸出する、越境EC需要を想定した新サービス「海外展開ハイウェイ」の運用を開始した。 「海外展開ハイウェイ」とは日通キャピタルが販売事業者の海外配送業務を代行することと、輸出製品、商品を倉庫から「まとめて輸送」することで、面倒な書類作成業務と輸送コストの低コスト化を同時に実現したものだ。
「海外展開ハイウェイ」は海外販売を実現するまでの一連のサービスをパッケージで提供しており、海外販売事業者は申し込み書の送付、利用料金に支払い、日本国内指定倉庫への納品を行うだけ、さらに手続きもすべて日本語で行うことができる。
「まとめ輸送」によってコストを抑えつつ、海外輸出に関わる事務処理を代行する「海外展開ハイウェイ」は、アメリカ販売に挑戦したいという事業者にとっては、安心のパッケージサービスと言える。
「海外展開ハイウェイ」で代行できるのは下記のサービスとなっている、
「海外展開ハイウェイ」販売チャネルは、アメリカに限られているが、今後は国、地域をヨーロッパ、アジアなどへ拡大し、同じ国・地域の中でも複数のECサイト、実店舗で販売できるように拡充を検討している。
海外展開ハイウェイURL:https://www.nittsu.co.jp/highway/
日本の配送物流業界も、これから大きな需要を見込めるだろう越境ECに関わる新たな配送サービスを開拓しようとしているようだ。 オンラインショップ、越境ECにおいては、配送コストの削減はどの事業者にとっても大きな課題である。
輸送コストが値上がりするなか、通常の配送料金よりも少しでも安価で、安心して購入者に商品をお届けできる新サービスも検討し、活用していただきたい。