日本では国内向けEC市場は成長を続けるものの、少子高齢化問題など、一部市場では伸び率に翳りが見られる分野もある。そのような中、早い時期に国内から海外に視点を変えることで、成功している企業も多い。12月20日のジェトロの報告書にもあるように海外販売で日本の商材を販売するという市場は魅力的な分野であることは確かなようだ。
今回は、昨年「越境ECで売り上げ好調なサイト」でも取り上げた「Tokyo Otaku Mode」「ケンコーコム」「キリン堂」成功事例の他に、どのような越境ECサイトが売り上げを伸ばしているのかを調べてみた。
多慶屋は東京、御徒町の紫のビルで有名なディスカウントショップである。 多慶屋は19万ものアイテムを取り扱い、年間43万人の観光客が海外から来店しており、インバウンドを取り入れ、大きな成果をあげた成功モデルである。
国で見ると圧倒的に中国人が多く、タイや台湾などアジア圏が中止である、こうした訪日外国人に向けて帰国後にサイトからリピート購入に繋げる取り組みを行っている、 例えば、店舗で外国人が免税手続きをする際にチラシを渡し、チラシには帰国後もサイトから注文できるように、ecサイトのURLとQRコードが記載されてる。このような取り組みが功を奏した、越境EC成功事例と言える。
ビィ・フォアードは東アフリカを中心に中古車、中古の自動車パーツ家電などをECサイトで販売する日本の企業である。売上400億円、月間中古車販売台数は15,000台、取引実績127カ国と、日本での売上No1、越境ECである。
成功要因はトレードカービューを使ったローコスト薄利多売戦略、トレードカービューの手数料変更と自社サイトへの転換、口コミを広める仕組みと現地ユーザー視点などである。
詳しい内容は以前のブログ「日本で売上No1の越境ECは?」を参照いただきたい。
FROM JAPANは海外の消費者を対象に、日本国内のオークションサイトやECサイトに出店。販売している商品の落札・購入代行と配送代行を行う、越境ECサービスを管理、運営している会社である。
商品は、アニメやコミック、キャラクターなどのグッズをはじめ、ブランドバッグ、腕時計、ファッション、雑貨、家電製品、タレントグッズなど、外国人に人気のある“クールジャパン”商品を数多く扱っている。 ポイントは海外消費者を対象としたオークションサイトであるという点である。
日本のオークションサイトで外国人が買おうとしても、日本語がよくわからない、そもそも海外への配送を行っていない、など問題が多い。そのようなニーズを読み取り、海外消費者と国内のECサイトを仲介する形で、スムーズに購入・販売できる環境を提供しているのが、FROM JAPANなのだ。
A-JANAIKA JAPANは ”ええじゃないかジャパン”と言い、熊野筆をはじめ、甲冑、日本刀などの伝統工芸品を中心に、質の高いジャパンプロダクトを海外販売している越境ECサイトである。
越境ECサイトでは英語、フランス語、中国語やアラビア語などの多言語対応しており、日本文化の結晶である、伝統工芸品を「海外向け価格」として高く得るのではなく、日本国内と同じ価格で気軽に買える越境ECサイトとして評価されている。
東山堂は京都西陣にある武道具メーカーで、世界70ヶ国以上の武道家に対して、剣道、合気道、居合道等の武具や衣類を輸出する老舗越境ECサイトである。越境ECサイト構築は1989年と古く、自社ブランドで高品質な武道具を国内・海外自社工場で開発・製造し販売している。
SAMURAI STOREは2002年から越境ECを始め、甲冑をはじめ刀剣類(居合刀・装飾刀)を販売し、世界中の侍コレクターを魅了している。70カ国以上の販売実績を持つまでに成長したSAMURAIは、2017年にはルイーズスクエアと事業合併し、越境ECはサムライストア事業部として再スタートしている。
東京は北青山にある実店舗ではプロの着付師による甲冑着用体験サービスも行っている。 ショッピングサイトを見ると、「真田赤備 羅紗(らさ)陣羽織付」48万円など高額商品など、30~300万円がSAMURAI商品が売れ筋商品のようだ。
CD JAPANは日本のアニメや漫画、CDなどのポップカルチャー商品、伝統工芸品を販売する越境ECサイトである。 1998年より、越境ECをオープンしており、月間550万ページピュー、50万人の登録会員を有しており、日本の最先端をリードする商品コンテンツは、海外で高く評価され、アメリカ、ヨーロッパ、アジアで確実に広がりを見せている。
Sazen Teaは京都を拠点とした、お茶や茶道具を中心に販売を行っている会社である。 抹茶をはじめとした、茶葉や日本人工芸作家の茶器を世界に販売する越境ECサイトである。
12月20日、ジェトロが海外事務所などのネットワークを活用し、23カ国。地域を対象とした調査を基に、日本企業の海外販路拡大に関する越境ECの現況などをまとめ、公表している。 報告よると、アメリカでは越境ECを利用して商品を購入した利用率は47%と昨年より上昇していること。
また、小売額に占めるEC割合では、中国で13.8%。香港3.1%、シンガポール2.1%などとまだまだ低く、今後のEC市場の発展に向けた潜在性の高さを示していること。 越境ECで売れる商品は、日本の良質かつブランド力のある商品に対する関心が高いなどが述べられている。
さらに越境ECのメリットとしては、
さらに、越境EC拡大に向け必要事項をについては、
などとまとめている。
最後に、中国、アメリカ、台湾、シンガポール、タイ、インドなど14の国・地域別に越境ECに取り組む際の課題や留意点などについてもまとめられている。
記事出典:主要国・地域の越境EC(電子商取引)― 日本企業の海外販路拡大に向けて ―
これまで、日本国内だけで十分な利益を享受できていたため、海外へ目を向けるのが遅れてしまった企業も、これからは、インバウンド需要の増加と相まって、越境ECにも目を向ける時代である。 今後は大企業だけではなく、中小企業や個人であっても世界に向けて、商品を販売するのがスタンダードになってくるだろう。
今回、取り上げた越境ECサイトの多くは日本ブランド、つまり伝統工芸品、伝統文化、日本のポップカルチャーなどを、独自の戦略で海外販売を行って成功している事例である。このような 越境ECサイトの成功事例を分析し、自社越境ECの戦略として応用してゆくことが重要である。