中国では、先週6月18日まで「618商戦(618 Mid-year Shopping Festival)」というサマーディスカウントセールが開催されており、そのものすごい結果をアリババグループなどが公表した。
今回の「618商戦」では、アリババのECモール(淘宝網、天猫)上で20万店以上のブランドと店舗が「618商戦」に参画し、その中の110店ものブランドが1億元(約15.6億円)の取引高を突破したと伝えている。
また、越境ECモールでもある「天猫国際(Tmall Global)」の売り上げ金額は2018年より、197%増と公表されている。この海外ブランドで売り上げランキングで、日本ブランドが第一位を獲得した。
今回は今年の「618商戦」の特徴、「618商戦」の売り上げ高、アリババのロシア進出などから見えてくる中国市場の現況などについてついてまとめた。
「618商戦」とは6月1日~6月18日に中国全土で開催されるディスカウントイベントで、中国では「ダブル11」に並ぶ大きなセールイベントとなっている。
現在はアリババグループを筆頭に様々なECプラットホームの店舗、ECサイト、実店舗が参加し、開催されている。「618」は元々は、中国第2のECプラットフォーマーである京東(JD.com)の設立日(1998年6月18日)を記念して開催された「セール京東618」が起源とされている。
今年の「618商戦」の売り上げを見ると、京東(JD.com)は、6月1日〜6月18日の18日間の累計注文額が2015億元(約3兆1504億円)を超え、2018年の1,592億元を26.6%上回った。
京東によると世界中で7.5億人の消費者が京東で買い物をしたとしている。
京東の強みは独自の物流システムで、「618商戦関連荷物」では、当日配送と翌日配送の割合が91%を超えたと強調している。
そして、アリババグループだが、全体的な売り上げの発表はない。アリババの場合は細かいデータのみ発表されている。
その内容によると、アリババの小売プラットフォーム上で20万以上のブランドと店舗が「618商戦」に参画し、史上最大規模となった。
さらに「天猫」で出店している100件超のブランドの取引額は、去年の「ダブル11」を超え、110件以上のブランドは売上1億元(約15.6億円)を突破したとしている。
アリババグループの「618商戦」では「Appleは2分45秒で1億元(約15.6億円)相当の売上を記録」など、新記録が生まれている。
アリババグループはEコマース事業の「淘宝網(Taobao)」と「天猫(Tmall)」が参加した「618商戦」では多くの記録を更新したようだ。
公表されたアリババの情報によると、「618商戦」期間中に150万点以上の新商品を発売し、そのうちの48%以上の商品を一線都市、二線都市と呼ばれる大都市以外に居住する消費者が購入したと報じている。
また、「天猫国際」では、三線都市、四線都市に居住する消費者による輸入商品の取引高が前年の同期間に比べ2.5倍となったとも公表している。
アリババはこの「618商戦」を中国全土の新興地域および農村部での顧客の取り込みをを目標として、「淘宝網」と「天猫」を通じ、成長している「中国新興地域」に対してアリババに出店する各ブランドの浸透の推進に成功したと述べている。
「中国新興地域」への様々な施策により、新興地域に住む消費者の購買力は増加し、地方小規模都市や、農村部などの購買者数と購買金額ともに昨年同期比100%増となった。
さらに、越境ECモール「天猫国際(Tmall Global)」では、地方小規模都市の消費者による輸入商品の取引高が昨年同期比153%増となっている。
また、中国国内の都市別の取引高ランキングでは、主要都市である上海、北京、広州、深セン、杭州、成都、重慶、蘇州、武漢、南京が上位10都市だったのが、取引高の増加率ランキングでは、新興地域が上位10都市を占めた結果となっている。
新興地域や農村部の需要の増加は、これからの中国経済を牽引する強力なエンジンとなるだろう。
下記にアリババの主な「618商戦」関連のトピックスを記した。
新興地域の潜在的消費者に対する「淘宝ライブ」による宣伝が効果的であったようだ。
淘宝ライブ配信を活用したブランド数は去年同期と比べ120%を増加し、ファッション、コスメ、ベビー用品、日用電子製品及び食品など多くの業界が「淘宝ライブ」配信を活用した。
日本では資生堂などが実施したようだ。
「天天特売」とは淘宝網スマホアプリで新興地域で人気のチャネルである。「天天特売」はメーカーが消費者に提供している「オンライン催事場」であり、メーカーは消費者の好みや消費トレンドを分析し、リアルタイムで消費者ニーズに合わせた商品や生産プロセスを可能としている。
今年の「618商戦」では「天天特売」出店企業へ4.2億件のオーダーを獲得させたというから驚きだ。
コスメ・美容の総合サイト@cosmeを運営するアイスタイルグループが行なったPOP UP Storeとの連動イベントには多くの消費者が来場したようだ。
「618商戦」では、消費者はPOP UP Storeで実際に商品を試した後、気に入った商品のQRコードを読み込み、「天猫国際(Tmall Global)」の「@cosme海外旗艦店」で購入できるという、ECサイトとリアル店舗の連動型プロモーションである。
アリババの「天猫国際(Tmall Global)」は、中国消費者が海外商品を購入する唯一のショッピングモールである。アメリカ、日本、韓国、オーストラリア、ドイツなど多くの海外ブランドが「天猫国際(Tmall Global)」に出店してる。
今回の「618商戦」では、「天猫国際」売り上げランキングでは日本がトップとなったとしている。
「天猫国際」での「618商戦」売り上げは凄まじく、「ダブルイレブン」同様、昨年の14時間で達成した売り上げを開始からわずか1時間で達成し、売上金額は昨年同期比で197%増となった。
日本のブランドで売り上げ前年比増加率が高かったのは、「花王のキュレル」が245%増、「小林製薬」が192%増、「任天堂」が182%増といずれも増加率が高い。
人気商品だったのは、任天堂のゲーム機Nintendo Switch、ドクターシーラボの美容液、資生堂のSK-IIの化粧水、ヤーマンの美顔器などだったようだ。
「618商戦」の日本ブランド好調が伝えられるなか、6月24日、「日本郵便」では「STOジャパン」と連携し、中国行郵税通関を用いたUGXによる配送サービス「UGX行郵税通関配送サービス」の提供を開始した。
このサービスは、今年1月から実施された中国EC法の対応したもので、難しい中国の税率情報を販売商品ごとに事前に知らせるというものである。
今年、4月17日、Amazonは中国市場におけるマーケットプレイス事業からの撤退を発表したのは記憶に新しい。
Amazonは2004年に中国に進出したが、2018年での中国シェアは0.9%と最後まで、中国消費者の支持を回復できずの撤退である。これは、中国で外国企業が戦うことが困難を物語っている。
一方、アリババが、BtoC向けのマーケットプレイス事業(タオバオ)を開始したのは2003年である。今やアリババは中国ECシェアの55%を占めている。
広告代理店世界最大手WPPの調査部門カンターは「2019年、中国で最も価値のあるブランドトップ100」を発表した。
中国ブランドトップ100にランクインしたブランド価値の合計は、2018年比で3割増の8897億ドル(約96兆円)へと拡大し、ランキングの発表が始まった2011年以降で最大額となった。
以下が中国トップ10企業である。見てわかるようにアリババが第一位である。
また、6月12日のJETROによると、中国、アリババ、ロシアのメガフォン、メール・ルー・グループなど4社による、ロシアCIS地域における合弁ECプラットフォーム「JVアリーエクスプレス・ロシア」事業が開始された。
ロシア「コメルサント」紙によると、「JVアリーエクスプレス・ロシア」は想定されるJVの企業価値は22億ドルに達し、欧州最大規模のEC事業者となるだろうとしている。
アリババは、ロシアのEC市場に進出することにより、さらなる事業の拡大を推進している。
ロシア版Tmallは家電製品から衣類や子供用品まで、ロシアの中国ブランドだけでなく、ロシアと海外ブランドを14000の小売業者から豊富な品揃えを提供するとしている。
中国経済については、米中貿易戦争、アメリカの関税の引き上げによる経済減速の懸念など、日中貿易に対しても不安視する声が高まっている。
だが、今回のアリババや京東の「618商戦」における中国新興地域への取り組みからくる市場の拡大、さらに、アリババブランドほか中国ブランド価値の上昇、アリババのロシア進出への推進力など中国トップ企業の現況を見ると、中国はアメリカなど諸外国に対し、強気の姿勢を崩すことはないだろう。